ニューヨークの象徴的なアールデコ建築のひとつである クライスラービルディング (Chrysler Building) は、マンハッタンの摩天楼ビューにはなくてはならない存在です。背の高い、77階建てのとても美しいフォームのビルで、いつも誰かしら街角で写真を撮っている姿を見かけます。このクライスラービルは一時は世界で一番高いビルでしたが、その後エンパイアステートビルに追い抜かれ、現在ではニューヨークで5番目に高いビルとなっています。2007年のAmerica’s Favorite Architectureでクライスラービルは9位に選ばれていましたが、1位はエンパイアステートビル、何かとエンパイアステートビルと比べられることが多いのですが、アールデコ建築の美しさでは決して負けていません。ニューヨークを舞台にする映画をよく見てみると、上空からの撮影やニューヨークらしい背景の映像としてクライスラービルが登場することも多く、ニューヨーク、マンハッタンを代表するビルであることは間違いありません。ところで、エンパイアステートビルは観光スポットのひとつとなっていて有名ですが、クライスラービルはどうなのでしょうか？
クライスラービルは1928年から1930年の間に建てられた、ブルックリン出身のWilliam Van Alenがデザインしたアールデコ建築のビルです。当時、世界一のビルは、ニューヨークのダウンタウンに今もたっている Woolworth Building でしたが、それを追い抜こうと競争が起こったそうです。クライスラーは最初から世界一のビルを建てるつもりでしたが、ウォールストリートに同時期に建設が始まった Bank of Manhattan Trust building (現在のThe Trump Building) と熾烈な競争を繰り広げたそうで、先に完成した Bank of Manhattan Trust building が一か月程早く世界一の座を手にしました。ところが最終的にはクラスラ―ビルがビルの先端の部分を工夫することにより世界一となったようです。クライスラービルが世界一になってから一年も経たないうちに、今度はエンパイアステートビルに抜かされてしまいました。
1930年から1950年半ばまでは、クライスラーの本社ビルでした。ビルは、本社ビルとして利用されていましたが、建設時の費用などは全て Walter P. Chrysler 個人が出費したので所有権は完全に個人にありました。将来子供がそのビルを相続できるようにと考えていたようなのですが、残念なことに人手に渡り、現在はAbu Dhabi Investment Councilの所有となっているようです。
ところで、クライスラービルディングは観光できるのでしょうか？
答えは、No なのですが、ちょっとだけ Yes です。
ミッドタウンという素晴らしいロケーションに建つ、あんなに美しいビルなのだから、展望台のひとつでもあるはず、と思う人も多いと思うのですが、残念ながらエンパイアステートビルのように展望できるように開放していません。完全にオフィスビルなので、オフィスに通う人だけしかこのビルの上階へのアクセスは許されていないのです。
そう、上階はオフィスなのですが、入り口入ってすぐのロビーはパブリックスペースです。ロビーだけは誰でも入ることができます。基本的にはオフィスが開いている時間帯のみなので、平日の朝8時から夜6時までだけで、週末や祝日は入れません。
このクライスラービルディングは自動車会社のために建てられたこともあり、自動車のモチーフのデザインが使われていたりします。
クライスラービルの建設の時の映像が残っているんですね。当時のビル建設の様子は、今の人たちが見たらびっくりしてしまいます。命綱もつけないで高層で自由奔放にお仕事をしている様子が本当にひやひやします。
グランドセントラルステーションのすぐ横にあるニューヨークのランドマークのひとつである、クライスラービルディング、通りかかったら、是非見上げてみて下さい。
Chrysler Building
405 Lexington Avenue (42nd-43rd Street) MAP
