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2016年ニューヨークで印象的だったニュース

2016年は、アメリカ、世界的にも一年前には想像できなかった予期せぬことが数多く起こった年となりました。今年もあと数日ということで、今年特に印象に残ったニュースをニューヨークからの視点で選んでみました。

想像を絶するアメリカ大統領選 ドナルド・トランプが大統領に

今年一番のニュースと言うとやはり混迷を極めたアメリカ大統領選です。全体的には、全州の得票数を合計したPopular Voteではヒラリーさんが票数で上回っていたように、どちらに転んでもおかしくない状況だったと思います。結果的には、Electoral College という独特のルールに合わせ、際どい州 (Swing states) に焦点を当て、そこでの勝利にこだわった選挙戦を行ったトランプさんの戦略勝ちとなりました。
トランプさんが大統領として、どんな哲学で、何を成し遂げたくて、何がレトリックなのか非常に分かりにくいところですが、(本人曰く、戦略を読まれるようではダメだ、ということですが)、1月20日に大統領に就任となりますので、アメリカではもちろん、世界中がドキドキしながらその挙動をうかがっていることでしょう。

アメリカ大統領選2016 ようやく終了! そして驚きの結末

知っているようで意外と知らないトランプさんの一面ということで、こちらのビデオでは主にトランプさんのビジネスにおける軌跡について紹介しています。数あるビジネスのうちで大成功をおさめたのは、主に、70年代に安く仕入れたマンハッタンの不動産、そして人気テレビ番組のプロデューサーやスターとして活躍したメディアビジネスです。

自由と移民の国というアメリカが大切にする理想の精神に真っ向から反するような言動を続けるトランプさんが勝利したという、ニューヨーカーにとっては特にショッキングな選挙結果となり、ニューヨークのユニオンスクエアの駅には “Subway Therapy” ということで、様々なメッセージが書き残されました。

みんなが書き残したメッセージは、New-York Historical Societyで保存されると共に、本としても出版されるそうです。

Brexitと混迷のヨーロッパ

ヨーロッパではシリアの内戦の影響もあり、移民が急増、犯罪やテロ事件が目につきました。
そんな中、イギリスが国民投票によりユーロから離脱する決定を下しました。背景にあるのは、何かがおかしいと感じているけど、何がおかしいのか分からない人々が増えていることが挙げられると思います。ユーロを離脱することが本当に正しいことなのか確信を持っては言えないけれど、とにかく今の現状を変えたいからユーロ離脱に票を投じた、そんな人が多かったのかもしれません。それが吉と出るかは分かりませんが、少なくとも今の所は選挙前に言われていた程、状況が悪化しているようには見えません。ユーロ圏でこのような流れがさらに加速していきそうな感じを受けます。

世界を揺るがす イギリスがEU離脱!!

Hate Crime の増加

ヨーロッパで頻繁に起こっているテロ事件の影響と思われますが、昨年、2015年はアメリカでイスラム教徒へのヘイトクライムが激増しているという統計が出ています。また大統領選後、ニューヨークでも人種や宗教が理由の犯罪、ヘイトクライムが増加しています。
この数か月の間、昨年と比べて35%増しという、かなりの勢いでヘイトクライムが増えていて心配な所です。

マスメディアへの信頼失墜とFake news

例えば、こちらの記事で論じられていますが、大統領選などのイベント通じ、多くの人々の目に写ったのが、あまりにも偏った報道をしてしまうマスメディアの姿です。またアメリカ大統領選の選挙結果への反省から”Fake news”をどのようにコントロールするかに注目が集まっていますが、とても難しいことだと思います。明白に間違っているニュースは別として、例えば、マスメディア上で専門家ということで好き勝手な意見や論説で、明らかに的外れだと思えることもありますが、それが現実におかしいものであったとしても、悪意があるものなのか、そうでないものかについての判別をすることは出来ません。
このようなことは今にはじまったことではなく、歴史的にはメディアは常に権力者に利用され、一般大衆をコントロールするような特定の印象を与えるのに威力を発揮してきました。大切なことは、各自が流れてくる情報をそのまま受け止めるのではなく、誰が言っているのか、コンテクスト、信憑性など総合的に考え、判断を下せるような力を身につけられるような教育を行っていくしかないと思います。

ハッキングと情報流出、サイバーセキュリティー

現在でもロシアによるハッキングによりアメリカ大統領選に影響を与えられた、と騒がれていますが、今後益々大切になっていくのがコンピューターセキュリティーです。ハッキングの入口の多くはフィッシングなどの手口で、コンピューターというよりは人間を狙った単純なソーシャルエンジニアリングが多いため、人々の意識を高める必要があります。

アメリカのYahooメールをはじめ多くの企業が、ハッカーに情報システムに侵入され、情報漏えいしてしまったことが明らかになっていますが、より影響が大きかった情報漏えい事件は、パナマ国籍の法律事務所から流出したパナマ文書、民主党全国委員会(DNC)内のメールのやり取りが流出してしまった事件です。どちらも、最終的には、Wikileaksに登場し、グレイエリアまたは悪質な活動の実体が明らかとなりました。ハッキング自体は決して推奨されるものではありませんが、結果的には真の活動の姿が明らかになり、透明性を高めたともいえるかもしれません。

パナマペーパーって何?ビリオンダラーの隠し方?!

大人気のフードトラックとポップアップストア

ニューヨークでは、レント高騰など経営環境の悪化により、今年も多くのお店がやむなくお店を閉じることとなってしまいましたが、そんな中、大増殖を続けているのがフレキシブルな形態のお店、フードトラックと期間限定のポップアップストアです。
ニューヨークでは、現在、フードトラックの営業権を倍増させる計画があるようで、さらにバラエティに富んだフードトラックが増えそうです。現在、営業権は、希少価値からブラックマーケットで高値で取引されているようなのですが、そういう転売目的の人ではなく、実際に運営する人が直接手に入れやすくなればと思います。先が読めない環境下でも、フードトラックやポップアップストアなどであれば、機動的、実験的にお店をはじめ、柔軟に変化させていくことができるので、これからも益々増えていくと思われます。

ちなみにこちらはソーホーで出会ったポップアップストアです。

ソーホーのポップアップストアがおもしろい!Aerie エアリー

ニューヨークで様々な規制強化

タイムズスクエアを賑わせたパフォーマー達の活動エリアが厳しく設定されたり、ビニール袋にフィーがかかるようになったり、Airbnb など短期宿泊に関する違反を取り締まることができるようになったり、また最低賃金の上昇などの様々な細かなルールが制定されたりと、ニューヨーク市や州による規制が増えています。自治体がどこまで細々としたルールを作り、ビジネスに関与すべきかはなかなか難しい問題です。
そんな中、面白いのはこちらのニュースです。ミシガン州では、なんとスーパーのビニール袋を禁止したり、袋を有料化したりする法案を作ることを禁止する法案が成立したそうです。

最近のタイムズスクエア事情 檻の中のエンターテイナー?!

とうとうニューヨークでも買い物袋が有料化されます

ニューヨークでAirbnbって違法なの?最近のNYCエアービーアンドビー事情

AIへの期待と不安

今年、AIの躍進を印象づけたのが、ボードゲームの中でかなり複雑とされる囲碁の世界です。AIが世界有数のプロ棋士に勝ってしまいました。特定の領域に関しては、AIが人間を超える日もそう遠くないかもしれません。

グーグルの人工知能「AlphaGo」が勝利!世界最高峰のプロ イ・セドル さん敗れる

どんなに複雑であっても、明確なルールで動いている仕事に関しては、わりと早くAIが人を追い抜いてしまうことが予想されます。
その反面、人間のように必要に応じて、どの分野にも応用していけるような一般的な知能を持ったAIを創り出すことの難しさが明らかになってきています。MicrosoftのAIチャットボットTayの件もありましたが、誰の真似をさせるか、誰が教育するかなどで、優秀なAIを育てられるかが大きく左右されると思います。また、長期に渡るものであり、予測が難しく、かつその成果の判断も、人それぞれの価値観により異なるものとなると思います。そんなAIの予測不可能な側面には不安を覚える人も多く、OpenAIなどのNPOも登場しています。また、AIという言葉が流行り言葉になってしまっていて、本当にAIなのかそうでないのかを見分けるのは難しく、言葉の流行りだけを利用するような企業や商品、サービスが増えているのでしっかりと本質を見極める必要があります。

VR(バーチャルリアリティー)プラットフォームが勢揃い

今年は、Oculus Rift、HTC Vive、PlayStation VR、Samsung Gear VR、Google Daydream VR など、主な VRヘッドセットが各社からリリースされ、だいぶ出揃いました。これからアップル、マイクロソフトなどの製品も登場してきますが、今後大切なのは多くの人が欲しがるゲーム、アプリ、コンテンツがどこで開発されるか注目されます。

グーグル初のお店がソーホーに!VR体験をしてみました

再利用可能なロケットで火星を目指す

昨年末、宇宙に飛び立ったロケットを、再び地球に着陸させることに成功したSpaceXですが、今年は海上での着陸を成功させました。そんな再利用可能なロケットにより、宇宙旅行や惑星間交通への可能性も開けていくかもしれません。
SpaceXのイーロン・マスクやNASAなど、人類を火星に送ることを目指すプロジェクトも始動しており、その進展が楽しみです。

10年以内に火星へGo! ? 2000万円で火星へ旅する未来もすぐそこに イーロン・マスク未来を描く

予期せぬことが数多く起こった2016年でしたが、そんなこの一年を振り返って作られたこんな怖いトレイラーも登場しています。

2017年は、明るいニュースが多い良い年になりますように♡

2016年ニューヨークで印象的だったニュース was last modified: 12月 30th, 2016 by mikissh