街中に駐車をしていて、用事が終わり車に戻ってみると、窓のところに何か置かれている。駐車違反チケットだと気づきショックを受けた、一度はそんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
車で都市部を訪れると悩みの種となるのが駐車です。駐車違反をするつもりなど全然なかったのに、不条理に駐車違反にされてしまった、というケースも多いです。
都市ごとに独自のルールがあり、不条理な違反適用のケースもあるのですが、例え本人が正当に駐車している意識があっても、罰金の額、申し立ての煩雑さを考慮すると、わざわざ異議申し立てするのも面倒になり、泣き寝入りすることが多いのが実情だと思います。そんな中、登場したのが、不条理な駐車違反罰金から救ってくれる DoNotPay です!DoNotPay は、実はAIチャットロボットで、現在ロンドンとニューヨークで、無料で駐車違反の異議申し立ての手助けをしてくれています。なんと2年間弱で、すでに16万件もの不条理な駐車違反に対する異議申し立てに成功しているそうです。
それぞれの都市により複雑な独自のルールがあったり、メーターが壊れていたり、駐車料金の支払いに見知らぬスマホアプリの使用が必須だったり、駐車事情もところ変われば全然変わってきます。
その都市のルールをコントロールするのはその都市の行政です。ルールも、異議申し立ての方法も自身の設定したルールのため当たり前のことかもしれませんが、はじめてその都市に訪問した旅行者はもちろん、その地域の住人すら知らないことはたくさんあります。違反チケットは直接行政側の収入となるだけに、都市によっては外注し、インセンティブを与えているのではないかと思われるほど、アグレッシブな取り締まりを行っている都市もあります。
私も旅行先で、車にまつわる悔しい体験を何度かしています。ほんの少しパーキングメーターの時間を過ぎてしまい駐車違反になってしまったり、ある街では、特定の時間のみ一般車進入禁止区域があったようで、ルールも大きく表示されているわけでもないのに、そこに自動カメラが設置され写真に写っていると、自分では身に覚えがない上に、証拠写真もなく違反切符の請求書が後日(半年後に)送られてきたこともあります。
ところで、DoNotPay が大活躍している都市の一つニューヨークで、それだけ多くの人々が救われたということは、毎日たくさんの人々が不条理な目にあっているということですが、実態はどうなのでしょうか。
ニューヨークの駐車違反のデータを分析したこちらのブログ記事によると、取り締まりを行う警察自身がルールの変更についていけていないという現実が指摘されています。ニューヨークでは、2008 年にルールが改正され、横断歩道付近でなければ歩行者用道路の脇に駐車してもいいことになりましたが、その新ルールによれば駐車違反とはならない場所にも関わらず、駐車違反チケットが多くきられてしまっているそうで、正当な駐車に対する駐車違反の罰金でニューヨークは 170 万ドルもの収益を得ているという分析がされています。
ちなみにニューヨークシティは、2015年は、$1.9 billion もの収益を様々なフィーや罰金から得ており、罰金の中の約6割を占めているのが駐車違反によるもので、その額 $565 million にものぼります。
不条理な駐車違反を解決すべく登場してきたのが AI チャットボットのDoNotPayです。こちらのニュースによると、21か月前に登場して以来、ロンドンとニューヨークで25万件のケースを扱い、そのうち16万件のケースで異議申し立てに成功!400万ドル相当の罰金が払われずに済んだそうです。60% 以上の成功率というのはすごいですね。
DoNotPay を開発したのはロンドン出身で、現在、スタンフォード大学の学生である 19歳の Joshua Browder さんです。自身のロンドンでの駐車違反チケットとそれに対する異議申し立てでの成功の経験からより多くの人の助けになればと開発したそうです。親しみやすいようにチャット形式で、質問形式のやり取りを行った後、異議申し立ての成功確率が高いケースのみ実際に異議申込みを行うようです。AI と言ってはいますが、基本的にはその都市毎に異なるルールを熟知し、それをアルゴリズムに落とし込み、人間らしい会話形式のインターフェースを通して提供するというもので、意図的ではないかとすら思えるほど複雑で曖昧な駐車ルール、異議申し立てを自動化し、救世主となってくれているようです。
DoNotPay は、今後、駐車違反に対する異議申し立てをシアトルでもサポートする予定だそうで、対応都市の範囲を拡大していくようです。またそれととともに、フライトの遅延に関するコンペンセーションの申請、新しい国の法律システムに不慣れな難民のためのガイドなどのチャットボットの開発も進めているそうです。
最終的には、このような法律知識を、簡単にチャットボットに落とし込め、利用できるようなプラットフォームの開発を考えているようで、法律的に弱き者の味方になってくれる、すごい救世主となっていく可能性を秘めていると思います。
一方、取り締まる側も、システムでリアルタイムで駐車スペースの管理をはじめたり、自動写真を撮るなど取り締まりを人を介さずに行うようにしたり、コストの安い自動化の方法をさらに進めていくと思います。でも何よりも大切なことは、みんながルールを守れるよう、ルールを明確に示し伝えること、そしてデータをオープンにすることです。このような自動化競争を通じて、明確でシンプルかつフェアなルールに収束していくと多くの人にとってメリットになるのではないかと思います。