NYアマゾンの本屋1号店の魅力と新しい本屋のかたち

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ニューヨーク初のアマゾン (Amazon) の実店舗の本屋さんが先月、5月下旬にコロンバスサークルのタイムワーナービル The Shops at Columbus Circle の3階にオープンしました。
すっかりオンライン、e-コマースのトップ企業としての地位を確立したアマゾンですが、オンラインでリーチできる人々への限界を認識したのか、独立系本屋さんの成功にチャレンジしたくなったのか、最近のアマゾンのストラテジーの一つとなっているのがリテール店です。パッと見、普通の本屋さんとほとんど変わらない感じですが、アマゾンはどんな仕掛けをしてきたのでしょうか。

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コロンバスサークルのビルの3階へ。アマゾンの台頭でつぶれてしまった(?)ボーダーズ (Borders) という本屋さんが以前あったところに、アマゾンが入り込んできたのかと思ったのですが、実はその一等地ではなく、意外と盲点の目立たないところに小さく店舗を構えていました。
オープン当初は、ニューヨーク初のアマゾンの実店舗の本屋さんということで、どんなものかと見に来る人も多かったようで、かなり混んでいたようですが、平日の夕方にやって来てみた所、もうかなり空いていてゆったりと見ることができる感じでした。

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まずは、店内の第一印象ですが、ディスプレイが綺麗です。照明が明るく全体的に明るい好感度の高いイメージ。他の本屋さんと決定的に変えたことは、本の並べ方です。
本棚に本の背表紙が見えるように置かず、全て、本の正面、表紙が見えるように並べています。
単純なことですが、これだけでも、店内の印象が大きく変わります。
本の表紙はその本の顔です。魅力的にデザインされているのでそれを見せてあげることが、商品の価値を伝える一番の方法です。
黒の本棚に本がすっきりとシンプルに並んでいる様子がいい感じです。

本の種類は、かなり厳選されていて、専門性の高い本とかは少なく、表紙に誘われて手に取ってみたら、なんとく買ってみようかな、という気になってしまう、衝動買いを誘うような一般向きの本が多いです。
なので、最も力が入れられているのがキッズ向けの本セクションだったりします。
対象年齢別に人気の本が並べられていて、見やすい、わかりやすいアマゾンらしい合理的な店舗づくりです。

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キッズ本セクションで特にすごいと思ったのは、レビュー数がかなりある中ほぼ5点満点の高評価の本が大集合していることです。レビュー数や評価とともに、アマゾンオンラインからのレビューコメントもつけられています。

お友達がなんだかすごく懐かしがっていたこの本。夢のある大冒険の話だそうで、日本では「エルマーのぼうけん」といいます。不朽の名作も多く、子供だけでなく大人が見ても思わず懐かしくて手に取ってしまうような本との出会いもあるかも。

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人生で一度は読んでおきたい世界子供向け名作100選『星の王子様』などもあります。

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さりげなく子供目線にピカチュウとかもいて、見つけたら、思わず買って行ってしまいそう。本だけではなく、キッズ用のおもちゃや、父の日におすすめのギフトなどもさりげなく並んでいたりします。オンラインストア、アマゾンのデータに基づく人気商品なのかもしれません。
このアマゾンの本屋さんを見ていても思いますが、最近のリテールの様子を見ていると、みんなのお金の使いどころは、キッズやペットなのかもしれません。キッズやペットをテーマにしたお店やサービスがかなり増えている気がします。そんな自分のため以外の消費が増えている様子がアマゾンでも感じられます。

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旅行者や短期滞在者の多いニューヨークのお店ならではの、ニューヨークの旅行本コーナーも充実しています。

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ニューヨークの主要の観光スポットなどがストーリー付きでひとつひとつかわいいイラストで描かれていて、ちょっとした思い出にもなりそうなキッズ向けガイドなど、ちょっと変わり種も。

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このアマゾンの実店舗本屋さんの特徴のもうひとつは、全ての本にアマゾンのオンラインショップでのレビュースコアとカスタマーのレビューコメントをポップとしてつけていることです。おもしろいのは、肝心の本の値段が書いていないこと。

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実際のお値段はなんとプライスチェッカーでチェックするシステムなのです。
アマゾンの実店舗本屋さんだから、アマゾンのディスカウント価格で買えるのかと思ったら、なんとアマゾン価格で買えるのは、アマゾンのプライム会員限定なんです。
それ以外の人は定価です。とりあえず1ヵ月無料の会員の権利を使えば旅行者でも買えるのかな?

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アマゾン価格では支払いはアマゾンアカウントを通してのみ。定価の人はクレジットカード払いのみという、という思い切った方法を取り入れたアマゾン店。

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Amazon Echo などのアマゾンのガジェットコーナーもあります。

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かなり独特なアマゾンルールのもとのアマゾンワールドが築かれている感じですが、まぁ、簡単にいうと、アマゾンのアマゾンプライム会員獲得戦略の一旦だと思います。

こちらのアマゾンプライムの会員の推移をみるとわかりますが、今アマゾンが最も注力している指標がこのアマゾンプライムです。現在の所、順調に伸びています。本屋さんやフードデリバリーなどアマゾン会員優遇のサービスが増えていけば、ニューヨークのアマゾンプライム会員数も増え、アマゾン圏内での人々の消費も増えていく、そんな期待が感じられます。ITバブルがはじけるのを恐れて、実店舗への進出を急いでいる感じも見受けられます。

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(Infographic: Amazon Doubles U.S. Prime Memberships in Two Years | Statista)

ニューヨークなどの大都市では、オンラインのアマゾン利用者が多そうですが、意外と伸び悩んでいたりするのかもしれません。忙しいニューヨーカーたちは、オンラインでサクサク注文しているイメージがあるかもしれませんが、意外とオンラインで注文すると余計に手間がかかるからと面倒がる人も多いのも事実です。
というのも、ドアマンやコンシェルジュ付きのアパートに住んでいる人はいいのですが、そうでない場合には、宅配を受け取るというのが面倒な家も多かったりします。再配達は時間指定ができないので結局不可能。家の前に放置されるのも安全上心配だし、郵便局や宅配会社の窓口まで取りに行くのも時間がかかりすぎる。そうなると、意外とアマゾンをオンラインで利用しないという人もいたりするので、実店舗の本屋さんはそんな人々にリーチする一つの手段という感じがします。

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本屋さんとしてどうか?というと、ディスプレイは確かに綺麗です。最小限のサイズの店舗に評価の高い本(回転率のいい本)を集めて、現金を一切使用しないキャッシュレスのお店運営という、本屋さんの運営の在り方として斬新ではあります。
アマゾンならではのデータが生かされた本屋さんということで、ポップなどもマニュアル通りに作られていて効率的だとは思いますが、機械的な雰囲気で、なかなか人々の心をつかむところまではいかないと思います。わざわざ店舗を訪れる必要はないんじゃない?オンラインで十分?!って思った人も多いんじゃないかな?

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高評価の本ばかりが並ぶキッズ本コーナーも WOW 感はありますが、大人がギフトで選ぶ、大人目線な感じもします。ニューヨークにたくさんある個性豊かな独立系本屋さんのお店の人が選んで、暖かいコメント付きで紹介されている本の方が何倍も信頼性があり、そういうお店には、子供たちが子供目線で本を楽しめる環境が整っていたりするので、ローカルのニューヨーカーたちはそちらを支持する人の方が多い気がします。

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アマゾンは、ニューヨークの2号店として、34ストリートにさらに敷地面積の大きい本屋さんをオープンする予定です。1号店と比べて本や品物のセレクションが変わったりするのか、そしてニューヨークでどこまで成功できるか興味深い所です。

Amazon Book Store
The Shops at Columbus Circle
10 Columbus Cir, New York, NY 10023 MAP

NYアマゾンの本屋1号店の魅力と新しい本屋のかたち was last modified: 6月 18th, 2017 by mikissh