ブルックリン美術館 アンディウォーホル特別展 開催中!Andy Warhol: Revelation

ブルックリン美術館では、現在、ポップアートでお馴染みの著名アメリカ人アーティスト、アンディ・ウォーホル (Andy Warhol) の特別展、Andy Warhol: Revelation が開催されています。アンディ・ウォーホルと言えば、キャンベルスープ缶など商業的テーマや、マリリン・モンローをはじめ、セレブを描いた作品がよく知られていますが、今回の特別展では、ウォーホルとカトリックの関係というパーソナルな一面に焦点が当てられています。最後の晩餐、聖母子、十字架などをモチーフとした作品などが登場し、アンディ・ウォーホルをよく知っているファンにも興味深い展示になっています。

ブルックリン美術館では、現在、以前紹介した クリスチャン・ディオールの特別展 に加え、アンディ・ウォーホルの特別展、Andy Warhol: Revelation が開催されています。
会場となっているのは、アメリカンアートが展示されている5階で、時間指定チケットの購入が必須となっています。

アンディ・ウォーホルは、1960年代から80年代にかけて、ニューヨークで活躍していた、20世紀後半に隆盛になった、ポップアートを代表する、著名アメリカ人アーティストです。ウォーホルは、アートと広告の境界を曖昧にした作品や、セレブ文化をもてはやす、20世紀後半の時代らしい商業主義的な作品を多数生み出しました。アンディ・ウォーホルは、同じモチーフの繰り返しを多用し描いた、写真をもとにしたシルクスクリーンの作品でよく知られています。

今回の特別展では、アンディ・ウォーホルが、カトリック教徒だった東欧出身の移民の家庭に生まれ、ウォーホル自身もカトリックが日常の中で育ちましたが、そんなウォーホルとカトリックの複雑な関係が大きなテーマとして展示されています。最後の晩餐など、キリスト教をモチーフとした作品や、ウォーホルがバチカンを訪れた際の写真など珍しいセレクションの作品が色々と展示されています。
アンディ・ウォーホルの特別展、Andy Warhol: Revelation は、ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館との共同企画の特別展です。アンディ・ウォーホル美術館での展示を皮切りにスタートした特別展で、2021年11月19日からブルックリン美術館で展示がはじまりました。今後、2022年6月19日まで開催されています。

会場の入口を入ってすぐのところにある壁紙は、ちょっと面白いものが使用されています。遠くから見ると、白黒ドットの柄の壁にしか見えないのですが、よく目を凝らしてみると何かが浮かび上がってきます。
こちらは、1963年の Crowd と題された作品です。新聞記事に掲載されていたバチカンのサンピエトロ広場にたくさんの人が集まった写真をもとに制作された、アンディ・ウォーホルの得意なシルクスクリーンの印刷作品です。

近くで見てみると、人がいっぱいいます。ユニットを繰り返し使用することで、全体で、とてもたくさんの人が集まっているように見えます。
フォトグラフィック・シルクスクリーン (Photographic silkscreen) は、ウォーホルが、1962年に確立し、彼のシグネチャースタイルとなった印刷手法です。
ファクトリーと呼ばれるスタジオで作品の大量生産が可能となり、商業的にも成功をおさめることができました。

ギャラリーで、まず迎えてくれるのは、ラファエロの聖母子像に$6.99 と値段が付けられたこちらの作品、Raphael Madonna-$6.99 です。ウォーホルは、1987年に58歳で亡くなりましたが、その数年前1985年に描かれた作品です。

そんな作品と一緒に、ウォーホルが、ニューヨークでイラストレーターとして活動していた1950年代に描いた、聖母子像のイラストも飾られています。生涯に渡り、カトリックが大きな影響を与えていたことが伺えます。

ウォーホルは、1928年に、ピッツバーグ近郊に住む、東欧からの移民のカトリック家庭に生まれ、小さい頃からカトリックの文化に囲まれて育ちました。ウォーホルに大きな影響を与えたのは、長年に渡り一緒に暮らしていた、熱心なカトリック教徒の母親、Julia Warhola です。ギャラリーでは、ウォーホルと母親のシルクスクリーン作品が展示されています。

ウォーホルにまつわるキリスト教のオブジェの数々も展示されています。

ウォーホルの代表的作品は、肖像画です。特に女性を多く描き、ケネディ大統領夫人(”Jackie” Kennedy ジャクリーン・ケネディ・オナシス)や、マリリン・モンローら誰もが知っている有名人から、ウォーホル・スーパースター (Warhol Superstar) と呼ばれる、身の回りのお気に入りスターまで多数のシルクスクリーン作品を残しています。

肖像画と並び、ウォーホルの作品によく登場するのが、レオナルド・ダ・ヴィンチらルネサンスに影響を受けた作品です。こちらは、ウフィツィ美術館 所蔵のダヴィンチの受胎告知の構図を模して描かれた作品です。

1963年、ルーブル美術館 から有名なモナリザが、メトロポリタン美術館にやって来るということで、当時、大きな注目を集めた「モナリザ」も、タイムリーに、独特のスピンを加えて描いています。

ウォーホルは、1960年代に、抽象表現主義からポップアートへ移行する時代と共に、一躍トップアーティストに上り詰めました。そんなウォーホルを襲ったのが、1968年の銃撃事件です。生死を彷徨う重傷を負い、その後の作風や行動にも大きな影響を与えました。毎週日曜日には、教会に通っていたそうです。
そんな痛々しい傷跡が残る、ウォーホルの腹部の写真も展示されています。

ウォーホルは、1980年にバチカンを訪れ、当時教皇だった、ヨハネパウロ2世に会いました。その時の写真も特別展に展示されています。実はこの時、アンディウォーホルは、本当は、個人的に面会し、教皇のシルクスクリーン作品を制作したかったようです。でも実際には、招待されたのは、一般のミサだけで、しっかりと記念写真は撮ることができましたが、制作に至ることはありませんでした。

こちらは、ウォーホルが亡くなる直前、1986年に制作された、巨大なピンクと黄色の最後の晩餐です。独特の迫力がある空間となっています。最後の晩餐は、レオナルド・ダ・ヴィンチにより、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会 (Santa Maria delle Grazie) の食堂に描かれた有名な壁画です。ダヴィンチ没後500周年を記念し、ルーブル美術館では、数年前に、大規模なレオナルド・ダ・ヴィンチ展が開催されていました。ダヴィンチ展の記事で、ミラノで訪れた際の本物の最後の晩餐も紹介しています。

アンディ・ウォーホルと、新進気鋭のアーティスト、バスキア (Jean-Michel Basquiat) は、共同でコラボ作品も手掛けています。
ウォーホルの晩年、1985-86年に、アンディウォーホルとバスキアが制作した、サンドバッグにキリストを描いた作品、Ten Punching Bags (Last Supper) です。近年、バスキアもよく注目を集めていて、最近のニューヨークでは、Brant Foundationグッゲンハイム美術館 などで、バスキアの特別展が開催されました。

アンディ・ウォーホルは、銃撃を受け、生死を彷徨って以来、死を意識した、ガイコツをモチーフとした作品をよく描くようになりました。
こちらは、自画像の頭の上に、愛嬌のある頭蓋骨が描かれている、1976年の作品です。

アンディ・ウォーホルの蓋骨の作品は、他にも登場します。

ドルサインなど商業主義的な作品と共に、社会的な出来事を描いた作品もあり、二律背反的な側面が至る所で感じられるアーティストです。大きい方の元祖ドルマークの方が存在感がありますが、小さい方のドルサインは、バスキアとのコラボ作品で、バスキアらしい落書き風イラストが描かれています。

銃撃事件後、頭蓋骨と共に、よくモチーフとなったのが、銃やナイフです。ナイフと十字架の作品が交互に並んでいます。

巨大なナイフと十字架の作品。ナイフや銃とともに、十字架も一緒に展示されています。

ウォーホルは、映像など様々な分野に渡り活躍しました。会場では、当時のチェルシーホテルのエキセントリックな雰囲気をテーマとした、二つのシーンが左右並列して流している面白い作品、The Chelsea Girls (1966) が上映されています。
ウォーホルは、エキセントリックなゲイアーティストであることはよく知られていますが、その一方、カトリックやルネサンスなどの伝統的な文化も重んじ上手くミックスし、自身の作品として来た様子がうかがえます。ウォーホルとカトリックの関係については、ウォーホル美術館のキュレーターによる、こちらのエッセイでも分析されています。

アンディウォーホルのよく見かける有名なモチーフが描かれたお土産グッズも色々と揃っています。
ブルックリン美術館のウォーホル特別展は、2022年6月19日までの開催です。

アンディ・ウォーホルの特別展が、ニューヨークのホイットニー美術館で開催されたときのコレクションもよかったです。

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ブルックリン美術館では、クリスチャンディオールの特別展も、2022年2月20日まで開催されています。是非見てみたいという人は急ぎましょう。人気のため、金曜日から週末にかけては、クリスチャンディオール展のみ時間を延長し、午後8時30分まで入場できるようになっています。

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