メトロポリタン美術館 日本美術 国宝級の貴重な作品が勢揃い!特別展 Anxiety and Hope in Japanese Art

ニューヨークのメトロポリタン美術館の日本美術ギャラリーでは、現在、密教、阿弥陀信仰、修験道をはじめ古くから日本美術のモチーフとなって来た不安と希望をテーマとした、Anxiety and Hope in Japanese Art (日本美術に見る不安と希望) と題された特別展が開催されています。先日、日本滞在中に、桜の名所で世界遺産にもなっている吉野山を訪れ、初めて蔵王権現の存在を知りましたが、平安時代につくられた蔵王権現像をはじめ、日本にあれば国宝級の歴史的に貴重な作品の数々が、メトロポリタン美術館の日本美術ギャラリーに展示されています。仏像に加え、戦の屏風絵や、吉野や厳島神社のお花見の様子を描いた屏風絵、美しい絵巻物や、着物、浮世絵、写真など様々な媒体の作品が、不安と希望というテーマの下、展示されていて、日本の美術や歴史好きにおすすめの特別展となっています。

ニューヨークのメトロポリタン美術館は、世界の様々な地域、様々な時代の膨大な数のコレクションを誇る巨大なミュージアムです。日本美術に関しても、歴史的に価値の高い、日本にあれば国宝、または、重要文化財級ではないかと思われる素晴らしい作品の数々を所蔵しています。
メトロポリタン美術館の日本美術ギャラリーでは、そんなメットコレクションの作品を中心に、外部からの作品も加わり、日本美術に見る不安と希望 (Anxiety and Hope in Japanese Art) と題された特別展が行われてます。

仏像の他、壁画や、絵巻物、屏風絵、掛け軸、イラスト本、浮世絵、着物、食器、人形、写真など、古くは飛鳥時代の7世紀頃から20世紀までに渡る様々な作品が展示されています。

日本を旅行すると、名所で仏像などをよく目にすることになりますが、後から旅の思い出の写真を見返してみると、あまり残っていないのが、仏像などの写真です。有名なお寺の本堂の仏様をはじめ、日本の多くの仏像は、東京国立博物館や、奈良、鎌倉の大仏など一部を除いて、写真撮影禁止になっている所が多く、その場で目に焼き付けてこないと、後から写真で見返してみることができません。
そんな日本ではほとんど撮ることができない仏像などの日本美術品が、メトロポリタン美術館では、目の前で見ることができ、また美しく写真撮影することもできます。

今回のメトロポリタン美術館の日本美術展では、普段、見かけることのないメット所蔵以外の作品も展示されています。
こちらは、平安時代の1124年に造られた毘沙門天立像です。毘沙門天は、東方の持国天、南方の増長天、西方の広目天と並ぶ、四天王の一人で、北方を守る多聞天として知られています。かつて島根県奥出雲町の岩屋寺にあったもので、何度か修繕されています。

真言密教の本尊である、大日如来坐像。平安時代の木彫りの仏像です。左手を握りしめ、人差し指を立て、その人差し指を右手で覆う、大日如来の智慧を表す、智拳印のポーズを取っています。

こちらは、平安時代につくられた、不動明王立像です。不動明王は、大日如来の化身とされ、密教をはじめ様々な宗派で祀られています。かつて京都東山の九品寺にあった仏像です。

こちらは、14世紀中頃から後半、室町時代につくられた、十一面観音像です。こちらも九品寺にありました。

お地蔵様の像も色々展示されています。こちらは、鎌倉時代初期の代表的な彫刻家、快慶作とされる 13世紀初頭頃の地蔵菩薩像です。

いつも以上に勇ましい姿をしている、波切不動明王像。13世紀頃、鎌倉時代の作品で、メット所蔵のものではなく、今回の特別展のためにやって来たものです。
波切不動明王は、嵐に遭遇した空海を乗せた遣唐使の船を救うために現れたとされています。

先日、奈良県吉野への旅行で初めてその存在を知ったのですが、日本古来の山岳仏教、修験道の本尊、蔵王権現像も展示されています。
蔵王権現は、飛鳥時代に、修験道の創始者とされる、役小角(えんのおづぬ)が、吉野山の金峯山で修業中に示現した仏様です。インド伝来ではない、日本固有の仏様で、強く勇ましい姿をしています。
こちらは、11世紀、平安時代の像で、かつては、丹後の迎接寺にありました。吉野の金峯山経塚で出土した、線刻蔵王権現の鏡も一緒に展示されています。

着物など日本美術のコレクターである、John C. Weber Collection からやって来ている、鎌倉時代の蔵王権現像も展示されています。

合わせて、19世紀末、20世紀初頭の頃の吉野山巡礼お遍路着も展示されています。

17世紀前半、江戸時代初期に描かれた桜の季節の吉野と厳島の花見の様子を描いた屏風絵も展示されています。
こちらは、奈良県にある吉野を描いた美しい屏風絵です。

先日、訪れたばかりの桜満開の美しい吉野は、こちらです。

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こちらは、広島県にある厳島神社です。この他、那智大社、天橋立など昔からの信仰の中心や景勝地などの歴史的な作品も飾られています。

海と山の絶景が魅力の厳島神社の様子は、こちらです。

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現存する中で最古とされる鎌倉時代、1257年の妙法蓮華経第二十五の絵巻、観世音菩薩普門品も展示されています。

天神様として知られる、菅原道真の復讐のストーリーを描いた、北野天神縁起絵巻。こちらも鎌倉時代の貴重な作品です。

天皇家、摂関家の権力争いから起こった平安時代の二つの大きな内乱を描いた壮大な保元平治合戦図屏風。17世紀、江戸時代初期の作品で、かつては、雲州松平家が所有していたようです。

作品自体が、まるで物語のように細部まで詳細に描かれています。

こちらも同じく江戸時代、狩野永納作の唐子遊図屏風。英語では、100 Hundred Boys というタイトルになっていますが、たくさんの子供たちが登場する賑やかな作品です。

15世紀末頃に描かれた狩野正信の朱衣達磨像。達磨は、禅宗の開祖として知られている人物です。

平安時代に栄華を極め、その後源平合戦で滅びることになった平氏を描いた平家物語などをモチーフとしたものなど、怖面白い浮世絵作品の数々も展示されています。こちらは、 19世紀中頃の歌川広重による平清盛怪異を見る図。

天国と地獄も大きなテーマの一つとなっていて、それぞれをモチーフとした色々な作品も展示されています。

理想郷として知られる蓬莱山を描いた、鮮やかな色合いの美しい模様の打掛です。

こちらは、平安時代に極楽往生に関する重要な書を集めた仏教書、往生要集の内容をイラスト付きで描いた江戸時代の本。地獄の様子が描かれています。

なんと書院造のお部屋の掛け軸も「地獄」になっています。

Anxiety and Hope in Japanese Art は、日本美術や歴史好きの人におすすめの展示で、展示内容を変更しながら、来年2024年7月14日まで開催されます。

メトロポリタン美術館では、着物展や源氏物語展など様々な素晴らしい日本美術の特別展が開催されて来ました。

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ニューヨーク、メトロポリタン美術館の行き方と見どころはこちらをどうぞ。

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メトロポリタン美術館 日本美術 国宝級の貴重な作品が勢揃い!特別展 Anxiety and Hope in Japanese Art was last modified: 5月 30th, 2023 by mikissh