ビットコインが年初から2倍と、最高値を更新し、現在、仮想通貨全体が大盛り上がりとなっています。仮想通貨市場がこれほどまでの盛り上がりを見せるとは、日銀をはじめ、世界の中央銀行が予期できたのでしょうか?この仮想通貨ブームは、特に日本で大フィーバーとなっているようで驚きです。
ところで、このビットコインとか、仮想通貨とかっていったい何なのでしょう?なんとなくわかる気もするけれど、でも実態はよくわからない、そういう人も多いと思います。仮想通貨とは?について、また今までの経済の流れの中で、仮想通貨がどうやって生まれてきて、これからどうなっていく可能性があるのか?を、わかりやすく書いてみようと思います。
ビットコイン急騰中!
今ビットコインは最高値更新中です。中国と日本からの買いがすごい模様です。
#Bitcoin soars to a new high https://t.co/7c1lPjM3DW pic.twitter.com/dp3vnclj5T
— Yahoo Finance (@YahooFinance) June 6, 2017
ゼロ金利、もしくはマイナス金利を基調とし、中央銀行がこともあろうに、自国や他国の株式を買い上げたりと、客観的に見ると、モラル的に疑問があり、投機的とも言える行為を繰り返していて、明確な成長性を感じられるようなストーリー展開が見られない今の経済の現状では、人々は、余剰資金の投入先を他に求めてしまうのも無理はありません。
仮想通貨の本質的な価値は別にして、高騰している市場に一気に資金が集まってしまうのは当然の帰結かもしれません。その恩恵を受けているものの一つが、ビットコイン市場です。
ビットコインって何?
ところでビットコインって何?仮想通貨って何?という人も多いと思います。
ビットコインがなぜ生まれたのか、その誕生の背景と、ビットコインの特徴を説明しておきます。
基本の基本 通貨ってなに?
ものやサービスの提供など価値の交換を媒介するために生まれたのが通貨です。遠い昔から、社会がスムーズに運営されるために、通貨は必要不可欠な存在でした。
歴史的には、それぞれの社会で価値あるものとして認識されるものが、通貨として使用されてきました。例えば、最も信頼されていたものが「金(ゴールド)」です。近代(-1971年)までは金(ゴールド)との交換が可能な通貨が発行されていました。紙幣を持っていくと、一定の割合で金(ゴールド)と交換できたのです。
ところが、現在の通貨システムでは、通貨はただの通貨。国の信用のみで、何の担保もない不換紙幣となっています。以前まではゴールドと交換できるという担保的価値があったのに。
そんな担保のない通貨をもとに、現在の社会を発展させるためのゲーミフィケーション (Gamification) の基本ルールとして取り入れられているのが、「金利&部分準備銀行制度 (Fractional-reserve banking)」と「資本主義」です。
詳しいお金の歴史について、こんな動画もあります。
現在の資本主義はフェア?
世界史上、王政や社会主義など様々な制度がありましたが、権力が一部の人に偏ると、結果的に腐敗することが多く、最終的には適切な競争を生み出せず、衰退してしまい、その結果、生き残ってきたシステムが資本主義というシステムです。
資本主義の最大の特徴は、誰かが中央からコントロールするのではなく、国民または企業がそれぞれが自身の利益を増やす活動を行うことにより成り立つという、分散ネットワークに近い形となっている点です。
18世紀に誕生した新しい国家、アメリカの急激な成長は、まさにこの資本主義の仕組みのおかげと言えると思います。そして、現在では、少なくとも経済活動に関しては、世界全体がほぼ資本主義となっています。
経済学はそんな経済活動を計量的に分析する学問ですが、個人的には、普遍性のある学問というよりは思想に近いと思います。ここ数十年の間、資本主義の中で、特に存在感が大きく増しているのが金融政策で、あまりの余剰資金の多さにカジノ資本主義のような状態になっている感じがあります。通貨に何の担保もないこと、その発行を一部の人々が不透明にコントロールし、特定のアセットを買い上げるといった活動が金融政策の名目でそれぞれの国で行われ、現在の資本主義の形は、アンフェアなゲームとなりつつあるのかもしれません。
金融政策として金利や通貨、流通量をコントロールしているのが日本だと日銀、アメリカだと “The Fed” と呼ばれるアメリカの中央銀行です。現在では、債券、株式などのアセットの価格にまで直接影響を与えています。
いよいよビットコインの誕生!
資本主義の最大の特徴である、誰かが中央からコントロールすることなく経済が回っていくという理想に反して、国家、中央銀行のマーケット、経済へのあまりにも大きな影響力が目につくようになる中、ビットコインが生まれてきました。
ビットコインは、2009年に Satoshi Nakamoto により造られました。ちなみに、この人は、日本人かどうかは不明で、ただの架空の名前です。こちらが、最初にそのコンセプトが紹介された文書(PDF)です。
ビットコインの仕組みってどうなってるの?
ビットコインのシステムの一番の特徴は、オープンソースで、特定の第3者が介入することなく、国境はなく、世界中の多くのコンピューターにより構成される Peer to Peer の分散システム上に、取引がオープンに記録されていくということです。
特定の管理組織は必要なく、ビットコインの分配と言うインセンティブを与えることにより、多くの参加者を呼び込み、その分散システム上でデータを共有し、改ざんすることが難しい仕組み「ブロックチェーン」で管理されています。
お札は日銀など中央銀行がその都度コントロールして増刷していますが、ビットコインはどうやって流通量が決まるのでしょう?
ビットコインの流通量は、特定の人や組織がコントロールするのではなく、事前にそのスケジュールがすでに決定されていて、その情報もオープンに公開されているという、興味深い、フェアでエレガント?な仕組みになっています。ある種、興味深い経済、通貨に関する実験的なシステムとなっています。
ビットコインのプライバシーはどうなってるの?
みんなが取引データを見れるって、プライバシーはどうなってるの?ってびっくりする人もいるかもしれませんが、このビットコインのシステム上では、個人データは一切なく全て匿名で参加するため、銀行システムを介さずに自由に世界中と取引ができるものとなっています。そのため、オンライン決済に適した媒体なのですが、その性質から、犯罪やマネーロンダリングなどに利用されるというネガティブな側面もあります。通常、ビットコインを取引所などで、ビットコインと各国通貨を交換する段階で、身元確認が必要となります。
匿名で通貨の取引をするため、オーナーシップの証明には暗号が利用されます。そのため、ビットコインなどの仮想通貨は「クリプトカレンシー」とも呼ばれています。
ビットコインの仕組みを大まかに解説したのがこちらのビデオです。
現在では、そんなビットコインの成功にインスピレーションを受けて、様々な種類の仮想通貨が登場しています。
ビットコインの価値が上がる?下がる?その価値は?
仮想通貨にそもそも本質的な価値があるのか、あるとすればいくらが妥当なのか、とても難しいところですが、相対的にキャッシュの価値が下がればアセットの価値が上がるという、世界の国々の中央銀行の金融政策へのアンチテーゼと言えるかもしれません。
日銀やその他各国の中央銀行の望んだ形で、実体経済にどれくらい影響があるか分かりませんが、仮想通貨に関しては、ある種のアニマルスピリットを呼び起こし、日銀総裁が、以前、言っていたようなピーターパン効果を達成しているようです。
仮想通貨の新しいコンセプトや、技術的な革新の側面では間違いなく価値があると思います。今後、特定の人や組織がコントロールすることができない、フェアなルールで運営される自立した P2P の分散システムは、例えば、金融全般、SNS、オンラインビジネスの新たな形など様々な分野でも応用可能なコンセプトで、成長の可能性を秘めていると思います。
ただし、その仮想通貨が現実の通貨に変換される過程において、国や企業、人とあらゆるレベルでの関与が起こり、マーケットをある方向にコントロールしようという力、集団心理などにより、大きく変動することとなります。仮想通貨自体はキャッシュフローを生み出さないため、より高値で購入してくれる人がいてプラスの取引となる、そんな仮定を基にした取引ということで、ポンジスキーム的な側面がありますが、特定の人や組織がコントロールしないオープンなシステムなので、訴える相手がおらず、それぞれの国の政策により間接的には影響を受けますが、直接的につぶされる可能性は低いと言えます。経済における他のコンセプトも大なり小なりそんな側面があり、みんなが価値があると認識する限り、価値があると言え、それによってビットコインの値段が上がりますが、その逆も起こりえます。
ビットコインを買うべき?リスクはないの?
現在、最高値ということで、これから参入する人は、特にギャンブルに参加するという心づもりが必要だと思います。さらに高騰を続けるかもしれませんし、ある日突然価値が激減する可能性もあると思います。ただし、参加するかどうかは別にして、ビットコインは、コンセプト的にはよくできていて、知っておくと面白いものだとは思います。ビットコインは直接、相手を見つけることにより取引することができますが、通常、株式の売買の時のように、取引所・ブローカーを利用することになります。たくさんの業者があり、そのシステムやサービスもそれぞれなので注意して選ぶ必要があります。過去にはハッキングされたり、つぶれた業者も多くあり、預けておくか、自分で管理するか、など購入後の管理の仕方にも注意が必要です。自分で管理する場合、所有者の証である自分の暗号情報(プライベートキー)をなくしたり、他人に知られないようにする必要があります。
こちらにあるように、携帯の番号を乗っ取られてしまい、ちょっとの間に8000ドルを失ってしまったいう話もあります。手口あざやかな犯罪や詐欺なども横行しているので注意が必要です。
中国やロシアが国営の仮想通貨をはじめるなどの話もあるようですが、今後、各国政府がどういう対応を取っていくのかは興味深い所です。