(flickr/Rareclass CC BY-NC-ND 2.0)
今日はブレグジット (Brexit) の決定を受け、世界中のマーケットが大きく動く一日となりました。昨日、イギリスでEU離脱の国民投票が行われ、離脱派が 52% と多数を占め、イギリスが EU から脱退する方向へ進んで行くことが決まりました。平和な統一ヨーロッパを目指してきた EU から初の離脱国が誕生することになりそうです。そんな歴史的な投票結果を受けて、世界中の政治、金融マーケットが大きく動いています。
2度の世界大戦を引き起こしたナショナリズムへの反省に端を発し、ヨーロッパでは経済をはじめとした様々な分野で共同体として活動していこうという考えから、1950年代にEU の一つの前身であるヨーロッパ経済共同体 (EEC) などの組織が設立されました。イギリスは1973年に加盟、その後、さらに統合は進み、現在に続く EU は 1993年に創設されました。イギリス、デンマークを除いた加盟国は貨幣もユーロに統一された状態にまで至っています。
昨年は、ギリシアの財政危機により、ギリシアの EU からの離脱が心配されましたがなんとか留まることとなりました。以前、1982年にデンマーク領グリーンランドが離脱したことはあるようですが、国レベルではイギリスが初の EU 離脱国となります。
イギリスが初の EU 離脱国となる、その背景は、こちらのビデオでまとめられています。
年齢、地域によりばらつきがあったようですが、投票率は72%で、全体的には52%の人々が離脱に投票しました。
(BBC)
(BBC)
残留に向けて頑張っていた首相のDavid Cameronさんが辞意を表明し、イギリスのポンド、ユーロ、そして各国の株式市場も大きく下がり、金や円が上昇しています。
国民投票の結果はイギリスでは法的には強制力はないようですが、民意ということで、現首相は近々正式に離脱のプロセス (Lisbon Treaty Article 50) を宣言するのではないかと考えられているようです。その後2年の猶予期間内に、イギリスとEUで離脱の詳細について話し合われ正式に離脱することとなります。
イギリスというと一つの国で捉えてしまいがちですが、正式名称はUK (United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland) ということで、実は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドと歴史、文化の違う国の集まった連合国です。2014年にスコットランドでイギリスからの離脱を求め国民投票が行われたことは記憶に新しいです。
今回の投票結果でEU残留が多数だったスコットランド、北アイルランドに関しては、イギリスからの分離を求める声が再び上がってくると思われます。またEU側でもイギリスに続こうという国が出てきてもおかしくありません。
離脱の背景にあるのは、下図にも示されていますが、多くの人が日常で直接感じるのは、EU圏を自由に行き来することができる圏内からの移民の激増、不動産価格とそれに伴うレントの高騰などによるのではないかと思います。また自国の政府にさらにEUの政府と、2重の存在によるさらなる制度の硬直化、経済格差のある圏内での予算の配分の不公平感なども影響していると思われます。
(ONS GB)
EUからの離脱は短期的には、移民の激増や不動産価格の高騰などの問題に有効かもしれません。ただし、長期的には、イギリスだけではありませんが、政治的独立性を保ったとしても、情報、マネーには国境がありませんので、流動性の溢れた世界中からの投資フロー、ビジネス環境の変化の激しさをコントロールすることはできません。
ナショナリズム的な動向は、イギリスだけではなく今年のアメリカの大統領選の一つのテーマでもあります。大切なことは、多くの人々に不平が溜まり、ドラスティックな変化を待望する前に、常に膨れ上がりがちな政府などの組織が自発的に不公平感がなくなるように構造改革を進めていくこと、特定のビジネスやアセットクラスだけが多数にメリットを与えることなく、簡単に利益を享受できるような一方的な政策をストップすることなどが大切ではないかと思います。