アメリカのコロナ経済支援策のその後 素早い対応と浮かび上がって来た問題点

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アメリカでは、新型コロナウイルスによる国家非常事態宣言 (National Emergency) が出されてから約2ヶ月が経ちました。この間、ほとんどの人が自宅で過ごし、実質上、ロックダウンの状態のため、幅広いビジネスに渡って、大きな経済的な打撃も出ています。非常事態宣言後、すぐに法制化されたのが、直近、3-4ヵ月程度を目途とした、経済的なダメージを支援するための経済支援策 (CARES Act) です。短期間で、法制化され、実施されたため、途中、色々と問題がありましたが、微調整を繰り返しながら、その大部分は実行され、人々のもとへ支援が届きつつあります。一般の人々への給付金 一人 1200ドルや、失業保険、スモールビジネスや個人事業主への支援 PPP などが行われています。

今となっては、遠い昔のことのように感じてしまいますが、アメリカで国家非常事態宣言 (National Emergency) が宣言されたのは、まだ二か月ほど前、3月13日 のことでした。アメリカで国家非常事態宣言後すぐに、ホワイトハウス、アメリカの国会で議論がされ、非常事態宣言の2週間後の 3月27日には、史上最大の $2.2 trillion(約220兆円)もの規模のコロナ経済支援策 (CARES Act) が成立しました。

一般への一時給付金と、通常時より手厚い失業保険、スモールビジネス支援など、大企業以外にも幅広い支援が行われ、期待されていましたが、途中色々な問題も出てきました。

史上最大220兆円のアメリカ経済救済法 現金給付1人$1200 失業保険拡充など盛りだくさんの支援に期待 The CARES Act

給付金

一般の人々への給付金は、税務署 IRS がすでに持っている情報で、基本自動振り込みされるので、すでに多くの人が受け取っていますが、新型コロナウイルス経済支援策 (CARES Act) では、大人$1200、夫婦$2400、子供一人$500 が給付されます。ただし収入制限があり、年収 $75,000 ($150,000) を越える場合は減額され、$99,000 ($198,000) より多い場合は、給付はありません。

この年収の数字は、2018年、または、2019年分の情報により決まりますが、タックスリターンをしたのにまだ振り込まれない人は、還付ではなく、支払いだった場合で、銀行の口座情報が、IRS になく、自動では銀行振り込みにならないので、銀行受け取りを希望する人は、IRS の給付金ステータスチェックサイト、Get My Payment で口座情報を登録する必要があります。自分の給付金が振り込まれる日やそのステータスがチェックできるツールなのですが、やはり最初の頃は正常に機能していなかったようで問題になっていました。現在は、修復されたようで、5月13日までに口座情報を登録すれば、銀行振り込みで受け取れるようで、締め切り日が指定されています。銀行口座の登録がない人は、今後、小切手での郵送となります。
膨大な数の人にスピーディに入金処理がされているのは素晴らしいことだと思いますが、やはり色々な間違いも起こっているようです。例えば、間違えた人に送ってしまったり、最近亡くなった方にも配られてしまったりなど色々な問題もあったようですが、返金が呼び掛けられています。

失業保険

アメリカでは、直近の BLS による 雇用統計(PDF) によると、現在、失業率が、14.7% と急上昇中です。自宅待機を促す中で職探しどころではない状況なので、CARES Act では、通常の失業保険に加えて、さらに毎週 $600 支払われるという、手厚く拡充された失業保険となっています。

また、通常は、失業保険の支給対象ではない、ギグワーカーやコントラクターなどの自営業もカバーされています。ただし、それぞれの州ごとで対応が異なり、物凄い数の申請を処理しなければならない上に、古いシステムを使用している所も多く、申請ができない、申請しても受給できないという人もまだまだ多いようです。

すでに受給を受けている人は、失業保険の受給金額に、さらに毎週600ドル上乗せされて振り込まれるため、受給者の中には、普通に働いている時よりも収入が多くなってしまうというケースもあったりするそうです。仕事に戻りたくなくなってしまう人も出てきちゃいそうですが、スモールビジネスの支援策で PPP を受給したスモールビジネスオーナーたちは、従業員が戻ってくることを想定していますが、そんな状況だと、呼び戻すべきかどうか葛藤も生じているようです。

スモールビジネス支援 PPP

アメリカのビジネスというと大企業のイメージが強いかもしれませんが、実は大部分を構成するのは、スモールビジネスです。そのため、経済支援策で最も注目を集めたのもののひとつが、PPP (Paycheck Protection Program) でした。PPP (Paycheck Protection Program) は、従業員500人以下のスモールビジネスを対象とした、条件を満たせば返済免除の可能性もある低利子のローンで、従業員がいない、自営業者、個人事業主も対象となっています。

経済支援策の最初の法案で、このスモールビジネス支援の PPP に対して割り当てられた金額が、$350 billion(約37兆円)だったのですが、応募者殺到で、なんと2週間で資金が枯渇してしまいました。以前紹介しましたが、蓋を開けてみたらビックリ、なんとたくさんの上場企業が名前を連ねていました。
PPP に関する詳細なガイダンスがなかったため、申し込み窓口となる各銀行の上顧客である大企業や富裕層、プライベートクライアントなどが優遇されたのではないか?と思われてしまうような結果になったため、世間からは非難勃発でした。
その後、大手レストランチェーンが支援金を返還しはじめ、再び間違いが起こらないよう、詳細なガイダンスも出されたこともあり、多くの上場企業が受け取った資金を返還しています。

そして、第二回目の支援金が4月後半に追加で $310 billion 承認され、以前とは異なったインセンティブが働き、小規模のスモールビジネスにも多く割り当てられ、平均支給額も以前の15万ドルから7万ドル程度まで下がって来ているようです。初回の PPP を分析した、ニューヨーク連銀のレポートによると、PPP の割り当ては、新型コロナウイルスによる被害の具合とは関係なく、銀行の優遇顧客の他、もともとスモールビジネスを専門としている、地域専門のコミュニティバンクの顧客が多かったようです。

アメリカのコロナ経済支援策は結局どうなった?スモールビジネス救済 PPP の行方

新しくできた PPP に関する詳細なガイダンスでは、資金調達が可能な上場企業と、投資業のプライベートエクイティ、ヘッジファンドなどは PPP 受給資格がなくなったので、その前までに受け取ってしまった企業は、5月14日までに返金するよう求められています。それまでに返金すればペナルティはないそうです。

PPP の支援金は、返済免除となる条件に、資金の 75% を従業員への給与に当てなければならない、8週間以内のみカバーされるなど、色々な縛りがあり、現在もシャットダウン中のニューヨークなどレントが高いエリアでお店をしているオーナーにとってはレント代を捻出したいところですが、PPP の資金からは 25 % 程度しか使えないので、なかなか厳しい条件となっています。
こちらの映像では、ブルックリンの子供の遊び場ビジネスの事例が紹介されています。

タックスブレーク NOLs

CARES Act で、全くスポットライトを浴びていなかった、隠れタックスブレークが知られてきています。2017年以降、パススルービジネスの営業損失(Net Operating Losses)をサラリーや株式投資など他の収入と合算できるのは、$250,000 (夫婦合算$500,000) が上限となっていましたが、2017年12月31日から2021年1月1日の間、この条項がなくなり、完全に合算できることになります。こちらのレポートでも論じられていますが、$1 million 以上の収入がある人は、なんと平均 $1.6 million もの節税効果があるとされており、今後、国会で議論が行われて行くと思われます。

時間が経ち、だいぶ新型コロナウイルスの性質が理解されて来ており、残念ながら短期間で終息する気配がないということが分かってきています。新型コロナウイルス経済支援策 (CARES Act) は、当面 3ヵ月前後の支援を目的とした支援策でしたが、さらに長引きそうな気配があります。
今後の経済支援策は、これまでの支援策の成果を見ながら、話し合われるようです。
自宅待機の解除を望む人もいますが、自宅待機を解除してもどれ位の人が、即、心置きなく外出を楽しめるようになるか、なかなか分からない所です。早く再開して欲しい気持ちもありますが、経済を復活させるには、人々の安心感を高める医療政策が必要になって来ます。

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アメリカのコロナ経済支援策のその後 素早い対応と浮かび上がって来た問題点 was last modified: 5月 4th, 2022 by mikissh