ポンピドゥーセンター 見どころ溢れるパリの国立近現代美術館

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パリの美術館がある街のほとんどの建築は、20世紀前半までに建てられた古典様式の建物ですが、その中で一際目立つのが、20世紀後半に建てられた斬新な建築、ポンピドゥーセンターです。ポンピドゥーセンターには、マティスやピカソなどポスト印象派時代後から現代までの充実した近現代アートのコレクションを誇る国立近現代美術館 (Musée National d’Art Moderne) があり、近現代アート好きの人には見逃せない人気のミュージアムです。

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ポンピドゥーセンター

ポンピドゥーセンター (Centre Georges Pompidou) は、ルーヴル美術館オルセー美術館オランジュリー美術館 などの集まっているパリの美術館エリアから、少し離れた場所にあり、東に20、30分程歩いた、セーヌ川右岸のパリ4区にあります。位置的には、東にルーヴル美術館、南にノートルダム大聖堂などのあるシテ島、西にピカソ美術館があります。

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(Google Map)

ポンピドゥーセンター (Centre Georges Pompidou) は、ホイットニー美術館 をデザインしたことでも知られる著名な建築家、レンゾー・ピアノ (Renzo Piano) とリチャード・ロジャース (Richard Rogers) らのグループのデザインにより、1977年に完成した文化的複合施設で、近代以前の街並みの残るパリにおいて一際目立つ建物です。

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館内には、国立近現代美術館 (Musée National d’Art Moderne) の他、オシャレなインテリア雑貨屋さん、本屋さん、図書館、映画館、レストランなどがあります。

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1階でチケットを購入し、建物のアクセントとなっている名物エスカレーターに乗って、美術館のある4-6階を目指します。4、5階が常設展で、入口は5階、出口が4階です。6階は、特別展となっています。

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国立近現代美術館 Musée National d’Art Moderne

ポンピドゥーセンターの中心が、国立近代美術館 (Musée National d’Art Moderne) です。この国立近代美術館は、1947年に設立された美術館で、かつて、フランスが国として所有していたコレクションが収蔵されていた、リュクサンブール美術館のコレクションのうち、1905年以降のものを引き継いだ美術館で、1977年に、このポンピドゥーセンターに移ってきました。その充実したコレクションは、ヨーロッパ一で、MOMA に次ぐ所蔵作品数を誇っており、1905年以降、現在までの膨大な近現代アートのコレクションから近代アート、現代アートと二つのフロアに渡り、展示されています。ニューヨークで言うと、MOMAグッゲンハイム美術館 と近い内容の美術館です。

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近代アート 5F

近代アートセクションでは、1905年から1960年までの作品が展示されています。マティス、ピカソ、カンディンスキー、レジェ、ジャコメッティら20世紀の著名アーティストの作品が数多く展示されていて、見応えがあります。ちなみに、1905年以前のポスト印象派の著名アーティストであるセザンヌ、ゴーギャン、ゴッホの作品は、オルセー美術館にあり、国立近現代美術館には、フォーヴィスム、キュビスム、抽象主義、シューレアリスムなど、それ以降のアーティストの作品が収蔵されていて、20世紀のアートの流れが分かる展示となっています。

20世紀初頭、大胆な色使いでアート界を席巻したのが、フォーヴィスムです。その代表とされるヘンリ・マティスの作品が数多く展示されており、絵画だけでなく、彫刻作品もあります。
こちらは、マティスの1926年の作品、装飾模様の中の人物 (Figure decorative sur fond ornemental)。

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マティスと共にフォーヴィスムの代表的アーティストとされる、アンドレ・デラン (André Derain) の作品、テムズ川の船着き場 (LES QUAIS DE LA TAMISE)。

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フランスの国旗がはためくフランスらしい作品、Raoul Dufy による LA RUE PAVOISÉE。

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後に、キュビスムの代表的アーティストとなる、ジョージ・ブラック (George Braque) の L’Estaque。20世紀初頭は、個性的な明るい基調の色使いの時代だったことが伺えます。

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アフリカの仮面に影響を受け、独自の作風を築いたモディリアーニの1918年の作品、Gaston Modot。昨年、ニューヨークのユダヤミュージアムで、モディリアーニの特別展 が行われましたが、モディリアーニは、アートムーブメントとは関係なく、ただ当時の人々の注目の的だったパリへとやって来て、多くの個性的な作風で人々を魅了してきました。

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日本に数多くの作品が存在するジョルジュ・ルオー(Georges Rouault)のピエロを描いた1932年の作品、Le Clown blessé。マティスと同時期に国立美術学校で学んだアーティストです。すっかり宗教画の少なくなった20世紀に、数多くの宗教画を残し、一目見たらすぐ分かる個性的な作風です。

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ギャラリーの所々では、国立近現代美術館の歴史についても紹介されています。

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アブストラクアートの代表的アーティスト、カンディンスキーの作品も数多く展示されています。カンディンスキーは、抽象アートを描き続けたアーティストですが、時代と共に、作風が変化していった様子なども分かります。
こちらは、1914年に描かれた Painting with a Red Mark。フォーヴィスム (Fauvism) 的で、美しい色合いの作品です。

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キュビスムから次第に変化し、丸みを帯びたユーモラスな独特の作風を確立したフェルナン・レジェ (Fernand Léger) の作品もたくさんあります。

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こちらは、パウル・クレー (Paul Klee) の1922年の作品、KN der Schmid です。ワシントンDCのフィリップスコレクションでは、今年、パウル・クレーと彼に影響を受けたアーティスト達の特別展 が開催されていましたが、独特な面白いスタイルのアーティストです。

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こちらは、抽象アート、特に円をモチーフとした作品で知られるロベール・ドローネー (Robert Delaunay) が描いたエッフェル塔。1926年の作品です。

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こちらは、カンディンスキーの1923年の作品、Auf Weiss II [On white II]。カンディンスキーと並ぶ抽象アートの代表的なアーティスト、カジミール・マレーヴィチ(Kazimir Malevich)の影響もあるのかもしれませんが、より精確な幾何学模様が多用されています。当時の時代背景、精神や神秘の世界の流行も背景にあるのかもしれません。

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さらにシンプルに、何かを書き残しているかのような1937年の作品、Trente。先日、グッゲンハイム美術館で見たカンディンスキー以前に抽象アートを描いていたという女性アーティスト、Hilma af Klint の特別展 を思い起こさせます。

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元祖リキテンシュタインの色合いの抽象アーティスト、ピエト・モンドリアン (Piet Mondrian) の1937年の作品。抽象アートは、次第にシンプル、哲学的な形に収束していった感じが伺えます。

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ピカソの作品も色々と展示されています。数年前に、ニューヨークの MOMA で行われていた ピカソ彫刻展 で見かけた作品にも再会です。

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ピカソは、様々なスタイルの作品を残していますが、ジョルジュ・ブラックと共にキュビスムの代表的なアーティストとして知られています。こちらは、強烈な色使いのフォーヴィスムとキュビスムが融合したようなピカソの1935年の作品、La Muse。

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1920年代から1930年代にかけて、抽象アートとは別に、起こったムーブメントが、超現実主義と呼ばれるシューレアリスムです。架空の世界を現実世界より詳細に描いた不思議な作品の数々を生み出したシューレアリスムですが、そんなムーブメントを代表するアーティストの作品も展示されています。
こちらは、マックス・エルンスト (Max Ernst) の1923年の作品、皇帝 (Ubu Imperator)。

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アメリカでも大活躍したスペイン出身の大人気アーティスト、サルバドール・ダリ (Salvador Dalí) の1930年の作品、ウィリアムテル (William Tell)。

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ジャコメッティの彫刻、絵画作品もたくさんあります。今夏、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で行われていた ジャコメッティの特別展 を思い出す光景が広がっています。

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絵画作品と一緒にモダンデザインの椅子などが飾られているギャラリーもあります。

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フランスの美術館では、フランス、またはヨーロッパのアーティストの作品が多く展示されていますが、20世紀以降のアートがテーマの国立近現代美術館では、アメリカでお馴染みのアーティストの作品も登場します。20世紀中盤からの抽象表現主義、ポップアートで、国際的にも有名なアメリカ人アーティストが増えていきます。

まず一つ目は、抽象表現主義の代表的なアメリカ人アーティスト、ジャクソン・ポロック (Jackson Pollock) の初期の頃、1943年の作品、The moon-woman cuts the circle。シンプルで幾何学的、内省的な静的な感じを受ける抽象アートが、動的に発展した抽象表現主義を描くようになったアーティストで、ポロックと言えば、ドリップなどのアクションペインティングで有名ですが、この頃は、20世紀前半の流れを受け、抽象的ではありますが、まだ具体的な対象を描いているのが見て取れます。

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ロイ・リキテンシュタイン、ニューヨークの地下鉄の駅のアート でもお馴染みの Chuck Close、

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そして、現在、ホイットニー美術館で大規模な特別展が行われているアンディ・ウォーホールの作品なども展示されています。

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5階からは、外の小さな広場に出ることができます。スカルプチャーガーデンには、マティスやヘンリ・ムーアなどの彫刻が置かれ、エッフェル塔などパリの絶景も楽しむことができます。5階の他、最上階の6階からもパリの美しいビューが楽しめます。

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現代アート 4F

現代アートセクションでは、1960年以降の作品が展示されています。インストレーションアートなど様々なメディアの個性的な面白い作品が見られます。

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思わず空間に引きずり込まれそうになります。

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Ettore Sottsass 的な色合いの展示。

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Donald Judd のお馴染みのモチーフの作品もあります。

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ポンピドゥーセンター (Centre Georges Pompidou) は、常設展を一通り見て回るのに所要時間は約2時間程、ゆっくり過ごす場合は、3時間程の時間を見ておくといいと思います。20世紀に活躍した著名アーティストの膨大なコレクションを誇り、世界中の美術館の特別展に貸し出されることも多いので、常設展でもかなり頻繁に展示される作品が入れ替わっていると思います。この他、6階では、様々な特別展が開催されていて、現在は、キュビスムや日本の著名な建築家、安藤忠雄などの展示が行われています。こちらは、ミュージアムパスには含まれていませんが、4階、5階の近現代アートの常設展だけで、見どころがいっぱいなので、あまり時間の余裕のない旅行者は、常設展だけでも十分だと思います。在住者、旅行者で興味がある特別展が行われている場合は、こちらも一緒に訪れてみるといいと思います。

ポンピドゥーセンター Centre Georges Pompidou
Place Georges-Pompidou, 75004 Paris, France 地図

開館時間:11 a.m. – 9 p.m.
休館日:火曜日、5/1
入場料:大人 €14 (18-25歳)€11 子供(18歳以下)無料
※ パリパス、パリミュージアムパスでは常設展のみ入場できます。

この他、世界で最も有名なフランスを代表する美術館のルーヴルには、1848年までの作品のコレクション、

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オルセー美術館には、1848年から1905年までの作品のコレクションが収蔵されています。

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モネの作品を中心とした印象派の美術館が、オランジュリー美術館です。

オランジュリー美術館の見どころ モネの睡蓮で有名なパリ・チュイルリー公園の見逃せない印象派近代アートミュージアム

この他、それぞれのアーティストの寄贈により誕生したロダン美術館、ピカソ美術館もフランスの国立美術館で、どれもアート好きには見逃せないアートミュージアムです。

ポンピドゥーセンター 見どころ溢れるパリの国立近現代美術館 was last modified: 12月 1st, 2018 by mikissh