ニューヨークでは、秋を迎え、すっかり日常が戻って来た感じですが、これまで人通りも少なかったチェルシーのギャラリー街も、9月から新展示がはじまり、活気が戻って来ています。物議を醸すKKKをモチーフとした作品などで知られる著名近代アーティスト、フィリップ・ガストン (Phillip Guston) や、メトロポリタン美術館で回顧展が開催された、アリス・ニール (Alice Neel)、ポップアートで知られる ロバート・ラウシェンバーグ (Robert Rauschenberg) ら近現代の著名アーティストをはじめ様々なアーティストの特別展が開催されています。現在、チェルシーの著名ギャラリーで開催中の注目の特別展を紹介していきます。
ニューヨークには、数多くの美術館がありますが、ギャラリーもたくさんあり、美術館の特別展レベルの個展やグループ展も行われています。ニューヨークで最もギャラリーが集まっているのが、チェルシーになりますが、アート好きの人は、美術館巡りに加え、チェルシーのギャラリー巡りを楽しんでみるのもおすすめです。ギャラリーには、だいぶ多くの人が訪れるようになって来ていますが、ニューヨークのルール通り、入場時に、ワクチン接種のチェックが行われるので、ワクチンカードやそのコピー、アプリなどを携帯しましょう。
以下、現在開催中の注目の展示の中からいくつかを紹介します。
フィリップ・ガストン Hauser & Wirth
スイスを本拠とする国際的なギャラリー、Hauser & Wirth のチェルシーのギャラリーでは、現在、フィリップ・ガストン (Phillip Guston) の個展、Philip Guston 1969 – 1979 が開催されています。
フィリップ・ガストン (Phillip Guston) は、20世紀中頃前後に活躍したカナダのモントリオール出身のアメリカ人アーティストで、メトロポリタン美術館や MoMA など著名美術館でも飾られています。漫画やイラストで登場しそうなコミカルなキャラクターが描かれていることも多く、ピンクと黒をはじめとしたダークな色合いを多用するなど独特の色使いが印象的なアーティストです。
フィリップ・ガストンは、面白いおにぎりマンのようなモチーフの作品をいくつも描いていますが、実は、これは、白人至上主義者グループ、KKK を描いたものです。KKK を描いた意図は、明確にされていませんが、プロモートするために描かれたものではなく、ジョークまたは反面教師的に描かれたのではないかと考えられています。
昨年、フィリップ・ガストンの特別展が、ワシントンDCのナショナルギャラリーや、ロンドンのテートモダン、ヒューストン美術館、ボストン美術館などで開催が予定されていましたが、展示に KKK を描いた作品が含まれており、BLM 運動が巻き起こっている最中だったこともあり、延期されることになりました。改めて、2022年に、フィリップ・ガストンの特別展は開催されることになっています。
今回の個展は、KKK を描いたものを含め、フィリップ・ガストンが晩年に描いた作品が、数多く展示された見応えのある展示になっています。
Hauser & Wirth では、1階のフィリップ・ガストンの個展に加え、Avery Singer の個展、Reality Ender も開催されています。異次元空間を力強く描く感じの独特の作風のアーティストです。
両展示共に、10月30日までの開催です。
Hauser & Wirth Chelsea
542 West 22nd Street 地図
アリス・ニール David Zwirner
David Zwirner の 20ストリートのギャラリーでは、先日、メトロポリタン美術館で特別展が開催されたばかりの、ニューヨークで活躍した女性アーティスト、アリス・ニール (Alice Neel) の初期の頃の作品をテーマにした特別展、The Early Years が行われています。
アリス・ニールと言えば、何気ない日常の一コマを描いたアーティストで、身の回りの人々の肖像画やニューヨークの光景などを多く描いています。こちらは、クリスマスの時期の息子の様子を描いたパーソナルな作品です。
アリス・ニールの個展は、10月16日までの開催です。
メトロポリタン美術館で今年の春、アリス・ニールの特別展が開催され人気がありました。
David Zwirner は、チェルシーにいくつかギャラリーがあり、19ストリートのギャラリーでは、Lisa Yuskavage の新作展、が開催されています。鮮やかな色使いと幻想的な作風が特徴です。こちらは、10月23日までの開催です。
David Zwirner
525 19th St New York, NY 地図
537 W 20th St, New York, NY 地図
こちらの作品のよう雰囲気の焚き火をモチーフにした作品も多く描いていて、メトロポリタン美術館にも展示されています。
ロバート・ラウシェンバーグ Pace Gallery
Pace Gallery では、ホイットニー美術館で特別展がはじまったばかりのジャスパー・ジョンと並んで、neo-Dada として知られる20世紀後半に活躍した現代アーティスト、ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauchenberg) の個展、Channel Surfing が開催されています。
neo-Dada は、20世紀中頃に大流行していた抽象表現主義(Abstract expressionism) から乖離し、後のポップアートへと繋がっていく橋渡し的な存在となりました。
絵と写真を混合するなど、色々なものを組み合わせ、再構成した日常感のある作品が特徴です。
この他、Thomas Nozkowski の The Last Paintings、
Robert Longo の I do fly / After summer merrily の展示も行われています。
ペースギャラリーのもう一つのギャラリーでは、Convergent Evolutions と題されたグループ展が開催されています。
体をテーマとした個性的な作品の数々が展示されていて面白いです。
Pace Gallery
540 W 25th St, New York 地図
510 W 25th St, New York 地図
ちょっと変わった所では、Lehmann Maupin で、Gilbert & George の特別展、NEW NORMAL PICTURES が開催されています。写真に自分達が登場し、まるでコメディアンのような雰囲気です。
Gagosian Gallery では、ディアビーコン や MoCA LA などでお馴染みの金属のガラクタで出来た彫刻で知られる、John Chamberlain の特別展 も、9月28日からはじまっています。
今回紹介したのはごく一部で、チェルシーには、本当にたくさんのギャラリーがあります。ふらりと色々な所を巡ってみるのも楽しいと思います。