ここしばらく素晴らしい天候が続いている、ニューヨークの週末。マンハッタンの最北端にある、メトロポリタン美術館別館の中世ヨーロッパ美術館、クロイスターズ (Cloisters) に久しぶりに行ってきました。クロイスターズ (Cloisters) は、約半年間の閉鎖を経て、メトロポリタン美術館の再開から約2週間後の 9月12日から、ウィズコロナの特別ルールで、再開しています。フォートトライオンパーク (Fort Tryon Park) の小高い丘の上にひっそりと佇む修道院のような静寂な素敵な雰囲気の美術館で、ニューヨークに居ながらヨーロッパ旅行にやって来た気分が楽しめる憩いのスポットです。カップルやお友達同士などでやって来ている人も多く賑わっていました。
ニューヨークを代表する美術館である、メットの別館、クロイスターズ (Cloisters) は、マンハッタン最北端のインウッドからハドソンハイツにかけて広がる、フォートトライオンパーク (Fort Tryon Park) にあります。
M4 のバスで、美術館の目の前までやって来ることができる他、地下鉄では、A線の Dyckman St または、190 St が最寄り駅となっています。ただし、現在、190 St の駅は美術館に近い出口のエレベーターが停止中で、かつ、美術館の入口が現在北側のみとなっているため、最寄りの地下鉄の駅としては Dyckman St の利用がおすすめです。Dyckman St で下車し、ちょっとした山登り気分で階段を上り、丘の上の方へと向かいます。もし、こんな山の階段が苦手な人は、M4のバスで行くのがおすすめです。
クロイスターズの正門入口までは、約10分程です。通常は、北側と南側の二ヵ所の入口がありますが、ウィズコロナの変更で、現在、入口は、北側の正門のみとなっていて、帰りのみ、南側に抜けて行けるようになっています。メトロポリタン美術館同様、クロイスターズも、事前チケット購入または予約が必要となっています。
クロイスターズの入場入口では、体温チェックが行われます。
館内には、ウィズコロナ下という事で、ハンドサニタイザーがあちらこちらに用意されています。正門から建物に向かう途中の廊下では、かつてのクロイスターズの姿を紹介する歴史的な写真が飾られています。
クロイスターズの館内は修道院のように、いくつもの聖堂と回廊で構成されています。
ロマネスク期からゴシック期にかけての中世ヨーロッパの建築や美術品が展示されているので、気分は本当にヨーロッパにいる感じです。
館内は、入口同様、人の流れが一定方向になるように、一方通行になっています。進む方向を示すシールが、廊下の所々に貼られています。マップはもらえないので、こちら の地図をみます。
それでは、ミュージアムへ入場します。
入場してすぐの最初のギャラリーは、12世紀頃のライオンやドラゴンなどロマネスク期の美術品が飾られている、ロマネスクホール (The Romanesque Hall) です。
そして、次に続くのが、12世紀頃に建てられたスペインのチャペルの一部を移築した、Fuentidueña Chapel。
中世の教会のような厳かな雰囲気です。
続いて、真っ白な空間に飛び出してきました。Saint-Guilhem Cloister です。こじんまりとした静かなクロイスターの空間です。
回廊を抜けると、二つ目の聖堂、Langon Chapel があります。
普段は、チャペルを出てすぐ右に進むと、外のウエストテラス (West Terrace) に出ることができますが、現在は、ウィズコロナのため閉鎖されています。ウエストテラス (West Terrace) は、すぐ隣を流れるハドソンリバーや対岸のパリセイズの崖の景色などが見渡せる絶景スポットです。
続いてあるのが、Pontaut Chapter House です。チャプターハウスは、修道院で、日常的に集会が行われていた場所です。
こちらは、Cuxa Cloister。中庭には、噴水があり、美しい花々が咲き、館内で一二を争う人気の休憩スポットです。みんなここでのんびりと時を過ごしていました。
初期ゴシックホール (Early Gothic Hall) では、13世紀から14世紀にかけての、フランス、イタリア、スペインの彫刻や絵画が展示されています。
初期ゴシックホールから階段を下りていくと、厳かな雰囲気のゴシックチャペル (Gothic Chapel) があります。 ステンドグラスの窓が美しく、中世のお墓の像がいくつも展示されています。
そのお隣は、美しい窓ガラスのお部屋、ガラスギャラリー (Glass Gallery) です。
ここでは中世の工芸品が展示されています。
ここで、お庭に出てきます。外に出ると、南仏の雰囲気の Bonnefont Cloister があります。
現在、ウエストテラスは閉鎖されていますが、最南端に位置する Bonnefont Cloister からは、ハドソンリバーや対岸の崖が見渡せます。まだ少しですが、色づきはじめています。紅葉のピークには、素晴らしい景色が広がります。
フォートトライオンパークとクロイスターズは、ニューヨークのおすすめ紅葉スポットの一つです。
Bonnefont Cloister の庭園には、ナシのようなフルーツから、毒草まで、様々な植物が見られます。
地下の最後のギャラリー、Treasury では、中世の様々な宝物が展示されています。
先日紹介したとても美しいライブラリー モルガンライブラリー には、もっとたくさんの希少な書物の数々が収蔵されていますが、クロイスターズにも JPモルガンさんから寄贈された本の数々が展示されています。お隣のお部屋にも、セイウチの牙でできた12世紀頃の十字架、ザ・クロイスターズ・クロス (The Cloisters Cross) など、珍しい宝物が色々展示されています。
ステンドグラスの飾られていたドイツの都市名から名付けられた Boppard Room です。美しいステンドグラスと豪華な祭壇のプレデラ (Alter Predella) など展示されています。
クロイスターズで最も有名な作品の一つが、ユニコーンが描かれたタペストリーです。ユニコーンのタペストリーがある、Unicorn Tapestries Room とその奥の Nine Heroes Tapestries Room の二つのタペストリーのギャラリーは、現在は、入口が一つだけとなり、人数制限の上で鑑賞します。ギャラリーに人が多い場合は、スタッフの指示に従い、ギャラリーの手前で列になって待つことになります。
次は、Merode Room と呼ばれる小さなギャラリーです。15世紀前半、初期オランダ絵画の傑作の一つ、Merode Altarpiece と呼ばれる Annunciation Triptych が展示されています。こちらも狭いお部屋なので、人数制限があります。
Merode Altarpiece は、15世紀前半、オランダ南部で活躍した、ヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck) と並ぶ、初期オランダ絵画の巨匠、ロベルト・カンピン(Robert Campin) のワークショップで制作されたとされる、3つのパネルからなる美しい作品です。大天使ガブリエルが、聖母マリアに受胎告知をするシーンが、フェルメールらその後のオランダ絵画で見られるような感じで、とても写実的に描かれています。同じく初期オランダ絵画で有名なロヒール・ファン・デル・ウェイデン(Rogier van der Weyden) は、Robert Campin の弟子だったとされています。Jan van Eyck と言えば、今年は、ベルギーのゲントで、年初から、Jan van Eyck の大規模な特別展 が行われていましたが、途中で中止になってしまいました。
最後は、クロイスターズ最大のギャラリー、後期ゴシックホール (Late Gothic Hall) です。15世紀後半から16世紀にかけての、フランス、イタリア、スペインの様々な彫刻、絵画、タペストリーなどが展示されています。
人数制限がされているだけあり、ミュージアム内はとても人が少なく、とても鑑賞しやすいです。
最後にミュージアムショップに立ち寄ります。クロイスターズの有名なユニコーンの絵柄のグッズがたくさん並んでいましたが、そんなクロイスターズならではのものから、メトロポリタン美術館のものまで色々なグッズが揃っています。
残念ながら、ここしばらくヨーロッパ旅行には行けそうにありませんが、クロイスターズは、ニューヨークで、ちょっとしたヨーロッパ旅行気分が味わえるスポットです。
クロイスターズでは、普段は、聖歌隊のコンサートなども開催されています。クロイスターズの様子や、チケット予約方法などは、こちらでも紹介しています。
クロイスターズを訪れたら、周辺のフォートトライオンパークを散策してみるのもおすすめです。
メトロポリタン美術館もニューヨークにいながら、世界各地からやって来た数々の傑作に出会うことができる、旅行気分が楽しめるミュージアムでおすすめです。