アメリカは、新型コロナウイルスの大流行を押さえるため、ニューヨークをはじめ数多くの州で、外出禁止令が出ており、激増する患者さんの治療に賢明に当たる医療、グローサリーなど生活する上での基本機能以外は、大部分がストップし、経済活動に大きな影響が出ています。景気がいい状態からの誰もが予測できない急激な変化だったこともあり、一番心配されるのが、モーゲージ、ローン、レント、その他固定費の支払い、それらを支える短期的な借り入れなど大小様々なビジネス、個人の短期的な資金繰りです。ここしばらく議論の続いていた、新型コロナウイルス経済救済法案 (The CARES Act; the Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act) がついに国会上院で、全会一致で可決されました。新型コロナウイルスのパンデミックは、100年に1度の規模の世界同時発生的な自然災害と言うことで、救済額も220兆円 ($2 trillion) と史上最大規模の額となっています。
アメリカ最大の新型コロナウイルスの流行地となり、感染者が予想以上に激増中のニューヨークでは、多くの人が自宅で待機する中、重症患者の急増に備えて急ピッチで、医療スペースや、医療器具、医療スタッフの増強がされています。その一方、多くの人が気になっているのが、少し前までは考えられなかったほど大急変してしまったビジネスや、個人の収入のことです。これから2-3ヵ月程のキャッシュフローが不安となる中、株式市場は大荒れで不安だらけの金融市場になっています。そんな不安を払拭すべく、発表されたのが、史上最大220兆円のアメリカ経済救済法です。
アメリカ中央銀行と金融市場の動き
金融市場の安定化に関して、昨日、アメリカの中央銀行、いわゆる日本銀行のような存在の、連邦準備制度銀行 (Federal Reserve Bank) が、米国債、モーゲージ債 (CMBS)、さらに歴史上はじめて社債も購入することを発表しました。
また、財務長官の Steven Mnuchin さんが、経済の正常化を目指すことも表明し、国会で議論中の経済刺激法案と合わせて、期待感が高まったこともあり、NYダウもかなり上昇しています。
アメリカ経済救済法案
そして、一般の人々に最も関係がある、もう一つの大対策が、アメリカ経済救済法案です。
早速、今日、既に300万人以上という莫大な数の失業保険申請者数 (雇用統計-PDF) が発表されましたが、失業者だけでなく、資金繰りに困っている個人やビジネスを助けるために、たくさんの支援が行われます。
これは史上最大規模となる、大レスキュープランで、上院議会全会一致で議決されました。
法案の原案は、共和党の上院議員のリーダー、Mitch McConnell さんで、その後、財務長官の Steven Mnuchin さん、民主党の国会のリーダーが交渉を続け、党派を超えた合意に至っています。
一般への現金給付
収入制限はありますが、すべての人に現金給付が行われます。給付金額は以下のようになり、大人は1人$1200、夫婦だと$2400、子供は1人に付き$500づつになります。例えば、夫婦+子供2人の4人家族だと、現金給付金は $3400 です。
-大人$1200 (夫婦合算$2400)、17歳以下の子供一人$500
-収入制限あり $75,000 (夫婦合算 $150,000) から給付金が減少し、$99,000 (夫婦合算$198,000) 以上はなし 2019年または2018年のタックスリターンの数字(確定申告の所得)で判断
所得制限などはありますが、もともとのアイデアは近い形となっています。
失業保険の拡充
失業保険は、今現在ある制度での保障に加えて、さらに追加で 1週間あたり $600 がこれから4か月に渡って支払われるようになります。
従来は雇用されている従業員しか保障されていませんでしたが、今回、自営業者や、ギグワーカー(UBER などネット上で単発仕事をしている人たち)も受けられるようになります。
-それぞれの州の既存の制度による支払い + 一週間当たり$600 (4ヵ月間)
-既存の制度上は、従業員のみですが、自営業やギグワーカーにも拡張
スモールビジネス ローン
スモールビジネスは、従業員を雇用し続けることを条件に利子のつかないローンを組むことができます。
*スモールビジネス ローン予算は、$367 billion
-500人以下のスモールビジネスへの利子なしローン
-従業員への給料やレントなど使用目的によっては返還免除条項あり
-従業員の解雇禁止など条件付き
一般企業 ローンとローン保証
スモールビジネスだけでなく、今回大打撃を受けた、例えば旅行会社、航空会社などの大企業もローンをすることができます。
ただし、トランプ大統領の関連企業など、国会議員の関連企業などは、この支援は受けられないようにしたそうです。
*大打撃を受けた一般企業へのローンとローン保証 予算は $500 billion
-航空会社や安全保障上重要な産業など一部業界、企業はグラント部分も
-従業員の雇用、自社株買の一定期間の禁止など制約と支援状況の監視
-大統領や国会議員に関連する企業は支援から除外
その他、病院や州や地方政府への支援、ペイロールタックスへのクレジット、支払の遅延など様々な税制上の補助、学生ローンも9月30日まで支払の遅延可で、遅延に伴う罰金はなし、など幅広い対策が盛り込まれています。
膨大な法案の詳細は、こちらです。
法案は、金曜日に下院で可決される見通しで、その後、大統領により承認されます。別案を提出していた下院では、さらにその後の追加策も検討していくようです。
3月27日金曜日に、下院で可決され、大統領が承認し、法案が成立しました。
今回の法案以前に、ワクチン研究への補助や、新型コロナウイルスのテストの無料化、病欠の有給化などに関する法案も既に可決されています。
この他、タックスリターンの締め切りのが3ヵ月間延長された他、それぞれの州でも、様々な対策が取られています。ニューヨーク州では、新型コロナウイルスの影響で、困っている人のために、90日間のモーゲージの支払の延期、差し押さえの禁止、レントの未払いによる強制退去の禁止などが行われています。
多くの商業物件では、チェーン店を中心に直近のレントの支払延期の交渉が進められているようです。
信用不安から連鎖倒産させることなく、短期間で、上手く乗り切ることができれば、もとの状態に近い形で復活できる可能性もあると思われます。多くの人が長期間、行動を制限され自宅待機で閉じ込められるという、前代未聞の体験の後には、消費意欲が急回復する可能性は高いと思います。