ニューヨークの膨大なデータで知るコロナの真実 ニューヨーク抗体検査速報 NYCは21%

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数ヵ月という恐るべきスピードで、世界中に蔓延した新型コロナウイルス。アメリカだけでなく、世界中の感染の中心地となってしまったのが、ニューヨークシティ (NYC) です。未知のウイルスということで、まだまだ分からないことだらけですが、多くの感染者、犠牲者を出しているニューヨークでは、新型コロナウイルス (COVID-19) に関する様々なデータや知見が得られてきています。ニューヨーク州では、どれくらいの人たちがすでに感染しているのか、感染の広がり具合を知ることができるということで期待されている、抗体検査が今週からはじまりました。まだ3000人程という少ないサンプルではありますが、その速報値が、ニューヨーク州知事のクオモさんにより発表されました。ニューヨークシティ (NYC) では、なんと5人に1人の割合で抗体を持っていました。



ニューヨークでどれ位の人が感染しているの?

ニューヨークをはじめ、世界各地の多くでは、新型コロナウイルスの検査は、例え症状があっても全ての人が受けられるわけではありません。その理由のひとつが、医療キャパシティが崩壊しないように、ということと、もうひとつが、検査して感染していることがわかったとしても、新ウイルスで有効な薬などの対処法がないからです。つまり検査して陽性だとわかっても、症状が軽い人は、結局自宅で待機する以外何もできないので、検査をしてもしなくても結果同じなので、検査は重症者だけに限ってきたのです。

そういうわけで、よほど重症でない限りは検査も受けず、自宅で様子を見ているだけの感染者が多くいるので、一般的に発表されている感染者数の数は、検査を受けて陽性と確認された感染者数で、真の感染者数は、実際には発表されている数よりも大きいのです。

そんな感染者の中には、無症状で本人すら気づかないうちに感染者になっていることもあり、実際にそんな無症状感染者がかなり多いことを示唆する事例も多くでていたので、全体の本当の感染者数とその蔓延具合を知ることができる、抗体検査に注目が集まっていました。

ニューヨーク州では、感染の全体像を知るための大規模な抗体検査がはじまりましたが、その速報値が、州知事のクオモさんにより発表されました。ニューヨーク州全域のスーパーマーケットなどのショッピングスポット 40ヵ所で、ランダムに3000人程の抗体検査を行ったところ、ニューヨーク州全体では、13.9%、ニューヨークシティだけで、21.2% の人が抗体を保有している、つまり、すでに新型コロナに感染したことがある、という結果が出ました。ニューヨークシティの 21.2% という数字は、なかなか驚きの数字だと思うのですが、そのあたりを歩いている人たちの5人に1人がすでに新型コロナにかかったことがある、というレベルの数字で、かなりの蔓延率となります。

ただし、まだ3000人程のランダム検査で、サンプル数の少なさや偏りなどもあると思いますが、この結果が全体像をとらえていると仮定すると、ニューヨーク州では、なんと270万人もの人が既に感染していたことになります。また、現在の PCR 法による感染者データでは、新型コロナの感染者の死亡率が 7% 程とされていますが、感染者数が増えると、死亡率は 1% 以下に下がります。抗体があると2度目の感染を防げるかどうか、また、どの位の期間抗体が保持されるのかの研究結果が待たれています。

ちなみに、こちらは、PCR 法の検査で、NYCでは、出産直前の妊婦さんの16% 程が陽性だったという事例も報告されています。注意深く生活していたであろう妊婦さんですらこの高い感染率で、感染しても無症状だった妊婦さんがとても多かったのには驚きました。

ソーシャルディスタンス効果が出てきたニューヨーク 妊婦さんに無症状が多い?!

こちら のCDCによるレポートは、ニューヨークではありませんが、2週間程前に、サンフランシスコ、シアトル、ボストンなどのホームレスシェルターで行った PCR 検査の結果によるデータで、感染率が高かった場所(サンフランシスコ)では、66% もの人が陽性で、検査した地域全体のデータでは 25% もの人が陽性だったそうです。

重症になったのはどんな人?

こちら のレポートでは、ニューヨークの重症患者、5700人を分析した結果を報告しています。全般的に、重症患者に高齢者が多いことはよく知られていますが、重症患者の 57% が高血圧の持病があり、さらに、41% が肥満で、1/3 強程の人たちが糖尿病の持病があったそうです。

新型コロナの治療で世界中の国々が求めてすっかり有名になってしまった人工呼吸器ですが、実はこの人工呼吸器、これがあれば助かるのかというと、残念ながらそうでもなく、この人工呼吸器を使用する段階までいってしまった患者さんの 88% は、亡くなってしまっているそうです。
ニューヨーク州では、下記のように、犠牲者の基礎疾患に関する情報などを公開しています。

fatalities-new-york-state
(Fatalities – New York State)



NYCの救急コール(911)の増減

ニューヨークでは、通常、平均的には、一日に、4000件程の救急コールがあるそうですが、感染者のピーク期の3月30日には、なんと6527件ものコールがあったそうです。ピーク期に比べると、現在では、NYCの救急コール (911) の件数は、かなり落ち着いてきています。

新型コロナウイルスらしい症状がある場合でも、重症者以外は、自宅での隔離と療養が薦められていますが、急激に悪化するケースも多くあります。NYC は、もともと陽性と確定した人の死者数のみを公表していましたが、現在では、新型コロナウイルスの症状を示す陽性と確定されていない死者数も合わせて、こちら で発表しています。全体では、陽性となった人の死者数の約1.5倍程となっており、検査する間もなく、自宅や病院到着前に急変し、亡くなってしまうケースも多く見られています。

手遅れになる一つの原因と思われるのが、本人も気づかない、サイレントな低酸素状態 (silent hypoxia) です。ICUで実際に働いていたお医者さんによると、血中の酸素濃度が相当下がっているにも関わらず、本人はあまり症状を感じていないというケースが多く見受けられるそうです。心配な人は、下記記事でも紹介されている、自宅で血中酸素濃度をモニターできる、パルスオキシメーターを準備していおくのもいいかもしれません。パルスオキシメーターは、指先の皮膚の上から酸素濃度を計測できるもので、日本人による発明品です。その発明者である、青柳さんが今月お亡くなりになりました。

ただし、手遅れになる原因はこれだけではなさそうです。

コロナの症状は肺炎・呼吸器系だけではない?

コロナは、SARS-CoV-2 (Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2) の名称からも示唆されるように、肺炎疾患を中心とする呼吸器系の病気と一般には認識されていますが、実は、新型コロナウイルスには、肺炎以外にも致命的となる症状があるようです。
先日、新型コロナに感染し、闘病中のブロードウェイミュージカルの俳優、 Nick Cordero さんが、血栓のため足を切断したそうです。コロナでなぜ足を切断?!って多くの人が、首をかしげたと思いますが、実は、新型コロナの症状のひとつとして、血栓ができ、それに起因する、脳梗塞や、心臓発作、腎不全など様々な臓器や部位での異常が起こることもあり、それが、健康そうに見える年齢層の低い人も含めた感染者の急死に関連していると考えられているようです。

ICUの患者さんには血栓を発症する割合が高く、ニューヨーク以外でもオランダ、中国でも同様の状態が報告されています。なぜ血栓ができやすくなるのかのメカニズムは、詳しく分かっていないようですが、もともと高血圧や心臓病、高脂血症など基礎疾患があった人があまり動かなくなり重症化している、または、免疫の過剰反応である、サイトカインストームなどいくつかの説があるようです。血液希釈剤 (Blood thinner) などの対処療法を行っている病院もあるようです。

まだまだ全貌が完全にわかっていない、新型コロナウイルスですが、とにかく日々集まる膨大なデータから研究が進み、一人でも多くの重症者を救えるようになり、治療法の確立が進むことを願うばかりです。

こちらでも、最新のデータや研究について紹介しています。

コンタクトトレーシングは有効?新型コロナウイルス最新研究情報

ニューヨークの膨大なデータで知るコロナの真実 ニューヨーク抗体検査速報 NYCは21% was last modified: 4月 29th, 2020 by mikissh