新型コロナウイルスは、パンデミックとなり、世界中で数多くの犠牲者を出し続けていますが、そんな新ウイルスに有効な治療法の探求が、日々続けられています。新薬の開発には、莫大なコストと時間がかかるため、現在、最も力が入れられているのが、様々な病気のために開発された既存の薬で、コロナに効く薬はないか、という探求です。いくつかの薬が候補に挙がっていますが、その中のエボラ出血熱ように開発された、ギリアド (Gilead Sciences) の Remdesivir のクリニカルトライアルの速報結果が発表され、治療薬としてのある程度の有効性が示唆されています。またワクチン開発への強い意気込みが感じられる、オペレーションワープスピードが発表されました。
昨日、アメリカ国立衛生研究所(NIH) によりギリアドの Remdesivir のクリニカルトライアル の結果が発表されました。1000人程の感染者に、Remdesivir とプラシーボを投与した所、Remdesivir を使用した患者さんは、回復に要する期間が11日間、対するプラシーボでは、15日間、31%短縮という明白な違いが認められたと発表しています。後に発表された Preliminary Report は、こちらです。
新型コロナウイルスですっかり、お茶の間の有名人となったファウチさんは、NIH 下のアメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID) の長ですが、Remdesivir に関する朗報についてコメントしています。
Remdesivir は、もともとは、エボラ出血熱やマールブルグ熱の治療薬として開発されましたが、残念ながら、その有効性は確認されませんでしたが、SARS や MERS などに効く可能性があるとされている抗ウイルス薬です。RNA ウイルスの複製を阻害する薬なので、今回の新型コロナウイルス (COVID-19) にも有効な可能性があるとされ、クリニカルトライアルが行われていました。NIH は、サルに対する Remdesivir の有効性 も確認しています。
劇的に効くというわけではありませんが、未知のウイルスに対して、多少なりとも有効であることが分かってきているのは、嬉しいことです。
当面すぐ使える新型コロナウイルスへの有効な対処療法が見つかるといいのですが、最終的には、新型コロナウイルス専用のワクチンの開発が待ち望まれています。最低でも一年程はかかると言われているワクチン開発ですが、世界各地で、様々なグループにより、ワクチンの開発が進められています。アメリカでは、既にヒューマントライアルがスタートしていますが、先日、ヨーロッパでも、オックスフォード大学のグループが開発したワクチンのヒューマントライアルがスタートしました。こちらの記事にあるように、既に、サルでも有効性が確認されているようで、ヒューマントライアルの結果から、6、7月頃には、新しいワクチンが有効かどうかの判定ができる予定だそうです。
ワクチン開発には最低でも1年から1年半程はかかるとされていますが、ホワイトハウスは、”Operation Warp Speed”(オペレーション・ワープ・スピード)と銘打った、来年1月までに3億個ものワクチンを用意する計画を発表しています。現実的かどうかは別にして、その強い意気込みは伝わってきます。どのワクチンが選ばれるのかはまだ分かっていませんが、こちらの記事で詳しく紹介されています。
WHO による世界各国の様々な新ワクチン開発プロジェクトのリストは、こちらです。
新型コロナウイルスに感染しているかどうか、蔓延状況を知るための検査もかなり進展してきています。
ニューヨーク州では、蔓延具合を知るための大規模な抗体検査が行われており、現在、全ての医療関係者が抗体検査を無料で受けられるようになっています。
最初の速報値では、ニューヨークシティの抗体保有率は、21% となっていましたが、さらに検査数が増え、最新の速報値では、25% となっています。この数値によると、4人に1人がすでにコロナにかかったことがあるということです。
また、NYCの消防・救急は、17.1%、警察 NYPD は、10.5% という速報結果も発表されており、想像以上に蔓延していることが伺えます。
カリフォルニア州の LA や NYC と、お隣、ジャージーシティなど、住人であれば誰でも、症状のあるなしに関わらず、PCR 検査を無料で受けられるようになっている都市やカウンティも出てきています。ただし、当然、検査に行くこと自体がリスクなので、感染しているかもという人以外は、避けた方がいいと思われます。こちらは症状がある人に対する差し迫った検査の必要性はもちろんですが、ウイルスの脅威の中、社会生活を再スタートさせるためにいつでも検査ができるようにしておくことが、必須のインフラになっていくと思います。陽性となっても、ほとんどの人は、自宅隔離という現実に変わりはないと思いますが、少なくとも周囲に感染させないように明確に努力ができます。仮に、コンタクトトレーシング ができるようになったとしても、ウイルス蔓延下、感染者と接触した人全員を盲目的に隔離していては、ロックダウンとあまり変わりなくなってしまいます。
Free COVID-19 testing is available to any L.A. County resident. https://t.co/13jZaOOegy
— Mayor Karen Bass (@MayorOfLA) April 30, 2020
On Monday, #JerseyCity will expand testing and we will provide free Corona testing to ANY resident requesting it – even residents not showing any symptoms. We believe expanding our testing is important to getting our local economy back. We will also be putting our… pic.twitter.com/zAsMWQDEzF
— Steven Fulop (@StevenFulop) April 30, 2020
クリニカルトライアル、ワクチン、検査、など幅広い分野で、短期間にかなりのスピードで色々と進展していっているのは、頼もしいことです。