ホイットニー美術館 エドワードホッパー特別展 20世紀アメリカンアートの巨匠が描いたニューヨーク

ニューヨークのホイットニー美術館では、20世紀前半に活躍した著名アメリカ人アーティスト、エドワード・ホッパー (Edward Hopper) の特別展、Edward Hopper’s New York が開催されています。ホッパーは、長年、マンハッタンのグリニッジビレッジで暮らし、ニューヨークをはじめ20世紀前半の変わり行くアメリカの都市部の光景を数多く描いたアーティストです。当時のアメリカ美術は、世界のアートの中心だったヨーロッパの影響を強く受けていたのですが、ホッパーは、ヨーロッパの主流とは一風異なったアメリカらしい作品を描き、20世紀前半のアメリカの光景をどことなく幻想的で独特な優しい雰囲気のイラスト風に描いた、その場所の雰囲気が良く伝わって来る作風をしています。

ニューヨークのミートパッキングディストリクトにある、アメリカンアートに特化したミュージアム、ホイットニー美術館では、現在、アメリカ美術の巨匠、エドワード・ホッパーのニューヨークを描いた作品をテーマとした特別展、Edward Hopper’s New York が、10月19日から2023年3月5日にかけて開催されています。
特別展の会場となっているのは、ホイットニー美術館の5階で、ホイットニー美術館をはじめアメリカ各地の様々な著名美術館からやって来た、ニューヨークの光景を描いた数多くのホッパーの作品が、時期、媒体、モチーフなどテーマ毎に展示されています。

ホッパーは、1882年、NYCにも近いハドソン川沿いの街、Nyack で生まれ育ちました。Parsons の前身となる、ニューヨークのアートとデザインの学校の William Merritt Chase、 Robert Henri ら当時の著名アーティストの下で学びます。その後、イラストやエッチングなど商業アートの分野でキャリアをスタートし、次第にファインアートに移って行きました。

エドワードホッパー (Edward Hopper) は、1908年から亡くなる1966年まで、アーティストとして活躍した約60年間を NYC で暮らしていました。20世紀前半に隆盛だった、アメリカン リアリズム (American Realism) 的なスタイルで、ニューヨークを描き続けたアーティストで、今回の特別展は、今も変わらないニューヨークの景観が多数登場し、アート好きはもちろん、ニューヨーク好きの人も楽しめるようになっています。

The City in Print と題された最初のセクションでは、ホッパーのキャリアの出発点となった、雑誌の表紙やポスター用のイラスト、水彩画、エッチングなど商業アートの作品の数々が展示されています。アメリカでは、メディアや広告など商業アートの分野は大きく、ホッパーの他、例えば、アンディ・ウォーホル、ノーマン・ロックウェルなど著名アーティストとなる以前に、商業アートの分野で活躍していたアーティストが多数います。

ホッパーは、1906年から1910年にかけて、当時のアートの中心だったパリを中心にヨーロッパを3度に渡って訪れており、今回の特別展では、その時の資料も展示されています。1913年には、生涯に渡ってホッパーの家であり、アトリエでもあった、ワシントンスクエアパークの北側のタウンハウスに移ります。
ホッパーのモチーフの中心は、何気ない日常の光景です。まだ若かった1910年代には、水彩画やエッチングの作品も数多く手掛けています。
ニューヨークの街角の光景を描いた1913年の水彩画の作品、New York Corner です。

こちらは、お馴染み地下鉄の中を描いた、1918年のエッチングの作品で、臨場感あふれるニューヨークの何気ない日常が伝わって来ます。

ホッパーの初期の代表作の一つ、室内で縫い物をしている若い女性の後ろ姿を描いた1921年の作品、New York Interior。

こちらも、ほぼ同時期、1921年頃に描いた作品、Girl at a Sewing Machine で、ミシンで縫い物をしている少女を描いています。ヨーロッパ訪問の際には、特にレンブラントの夜景に感動したそうです。こちらの作品でもそうですが、ホッパーは、室内のモチーフが多く、光と影を印象的に描いています。

そんな室内、特に窓が主役となっている作品の数々は、The Window と題されたセクションで展示されています。
こちらは、女性が一人テーブルに座っている、夜のファーストフード店の光景を描いた1927年の作品、Automat。ガラスに反射した店内の光が、現実感を引き立てています。

夜のタウンハウスを窓越しに、外から覗き込む形で描いた1928年の作品、Night Windows。日常的な光景だけど、どこか別世界感のある不思議な世界が描かれています。

黙々と働く2人のウェイトレスと窓辺の色鮮やかなフルーツが印象的なレストランの光景を描いた1930年の作品、Tables for Ladies。

こちらは、ブルックリンのタウンハウスの部屋の内側から窓の外方面を描いた1932年の作品、Room in Brooklyn。対象となるシーンを外側から客観的に見つめる、イラストレーターや、フォトグラファー的な作品が多いです。

ニューヨークと言えば、摩天楼など高層ビルが思い浮かびますが、ホッパーがニューヨークの建築をモチーフとして好んで描いたのが、横に伸びる平たい建物です。The Horizontal City では、そんな構図の作品の数々が展示されています。
こちらは、タウンハウスの1階にお店が軒を連ねる、7th Avenue の光景を描いた1930年の作品、Early Sunday Morning。ニューヨークには、今も昔の街並みが残っている場所も多く、こんな雰囲気の場所も色々な所に残っています。

こちらは、かつて Blackwell’s Island と呼ばれた、現在のルーズベルト島を描いた、青が美しい 1928年の作品、Blackwell’s Island です。こちらも横に平たく伸びる低層建築が主役となっています。

エドワードホッパー (Edward Hopper) の家は、ニューヨークのワシントンスクエアにありました。場所は、ワシントンスクエア公園の北側のタウンハウス (3 Washington Square North) で、ホッパーは 1913年以来、住んでいました。ニューヨーク生活の中心となっていたのが、自宅があったワシントンスクエアで、Wahington Square と題されたセクションが今回ありましたが、ホッパーが当時使っていたノートなどプライベートな資料や自宅周辺を描いた水彩画などの作品も色々あります。

ニューヨークの橋の風景、マンハッタンブリッジなど身近な光景を描いた水彩画などが展示されています。

合わせて、作品に関するノートや写真など様々なパーソナルな資料も展示されています。

ニューヨークのタウンハウスの屋上からの景色は、水彩画で多く描かれましたが、中には、油絵で描かれたものもあります。こちらは、1932年の油絵の作品、City Roofs です。

エドワードホッパーは、パフォーミングアートが好きで劇場にも足繫く通い、作品のモチーフとしてもよく描きました。そんな作品とホッパーが鑑賞した作品の半券コレクションなどが、Theater と題されたセクションで展示されています。

劇場らしい雰囲気が良く伝わって来る1939年の作品、New York Movie。

こちらは、二人のピエロが舞台に登場する、ホッパー最後の作品、1966年、83歳の時に描いた、Two Comedians です。

20世紀中頃には、抽象アートや抽象表現主義などが隆盛となりましたが、ホッパーは、それまでのスタイルを貫き、現実とファンタジーの狭間の世界を描き続けました。そんな作品の数々は、Reality and Fantasy のセクションで展示されています。
当時、ニューヨークをはじめとした都市部での暮らしは、新しいスタイルの生活でした。都市部ではたくさんの人々が近所に暮らしているにもかかわらず、一人一人は孤独を感じながら生活していた、そんな都市部の孤独感を描いた 1952年の作品、Morning Sun がこちらです。

当時の都市部の新しい仕事のスタイルと言えば、オフィスワークです。ホッパーは、オフィスをモチーフとした作品も色々描いていて、こちらは、1940年の作品、Office at Night。小さなオフィススペースで、男性と女性の二人が働いています。

こちらは、1953年の作品、Office in a Small City。ニューヨークをはじめアメリカ各地の都市部で見かける典型的なオフィスの光景が描かれています。どことなくシューレアリスム感があります。

5階の小部屋のギャラリーでは、ホッパーのスケッチ作品の数々が展示されています。セントラルパークをはじめニューヨーク中の様々な場所でスケッチをしていたことが伺えます。

ホイットニー美術館では、エドワード・ホッパーをはじめ、オキーフ、ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズら、アメリカの著名アーティイストの作品が、常設展で展示されています。
エドワードホッパーのニューヨーク関連の作品は、特別展フロアに移動していますが、それ以外の作品は、7階の常設展ギャラリーに飾られています。
こちらは、当時のヨーロッパの影響が強く感じられる、ホッパーの若い時代、1914年の作品、Soir Bleu です。

今回の特別展には、やって来ていませんが、ホッパーのこの他の有名作品には、シカゴ美術館 所蔵の Nighthawks などがあります。

エドワードホッパーの特別展が開催中のホイットニー美術館の基本情報はこちらになります。

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ホイットニー美術館 エドワードホッパー特別展 20世紀アメリカンアートの巨匠が描いたニューヨーク was last modified: 1月 15th, 2023 by mikissh