20世紀初頭パリの雰囲気 MoMA 特別展 オルセー美術館らと共同企画 スーラ マティスら新印象派を支えた Félix Fénéon

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ニューヨークの人気美術館、MoMA は、コロナのため、約5ヵ月間の閉鎖を経て、ようやく再開しました。モマは、ニューヨーク近代美術館という名前の通り、19世紀後半の印象派以降の著名アーティストの素晴らしいコレクションを誇る近現代美術館です。そんな MoMA で、再開後新しくはじまった展示が、後に新印象派 (Neo Impressionist)、アバンギャルドとして知られるアーティストたちを支えたことで知られる、コレクターでギャラリストでもあった Félix Fénéon さんに焦点を当てた珍しい特別展です。印象派からさらに近代アートへと飛躍する中間点となり、今では有名ですが、当時は、無名で斬新な作風だったアーティスト、点描のスーラやシニャック、ナビ派のボナールやヴァイヤール、フォービスムのマティスらの、Félix Fénéon さんと関係の深い作品が展示されています。

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再開後の MoMA で、Félix Fénéon さんの特別展 が開催されているのは、3階南側のギャラリーです。今回の特別展は、オルセー美術館オランジュリー美術館、ケ・ブランリ美術館、MoMAによる共同企画で、オルセー美術館では、昨秋から年初にかけて開催されていました。MoMA では、本来なら今春3月下旬からの開催が予定されていましたが、コロナのため、期間をスライドし、ミュージアム再開後からスタートし、2021年1月2日まで開催されます。19世紀末から20世紀初頭前後のパリの雰囲気が感じられる特別展となっています。

Félix Fénéon さんは、パリが世界の文化の中心だった、19世紀末から20世紀前半にかけて、フランスで活躍した、美術評論家であり、コレクター、アートディーラーでもあった、アナーキストとしても知られる文化人です。19世紀のフランスというと、帝政、王政、共和制、社会主義的な体制が行ったり来たりする混乱期であった一方、産業革命や、科学技術の発展により、貧富の差が拡大し、特に後半は、政府への信頼は失墜し、社会の大きな変革を求める声が高まっていた時代でした。そんな社会的な変化を求めるエネルギーが、アートの世界で表れたのが、印象派とポスト印象派のアーティスト達による新しい表現手法と言えるかもしれません。19世紀後半頃から、王室や政府系の専門美術機関などのアート界での影響力が薄れはじめ、次第に、アートは、広く一般に開かれて行きました。

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Félix Fénéon さんも、アナーキスト的な革命思想を持っており、アーティストとしてではなく、パトロンという立場で、先進的、アバンギャルドなアーティストたちを美術評論家、コレクター、ギャラリストなど様々な立場で応援していった人物です。Félix Fénéon さんは、スーラ、シニャック、ボナール、マティスをはじめ、印象派後の新しい表現を模索した、新印象派のアーティストたちを見出し、支援し、結果的に、印象派から20世紀以降の近代アートに橋渡しをした形で、その後のアート界に大きな影響を与えることになりました。
こちらは、ポール・シニャック (Paul Signac) が、Félix Fénéon を描いた、1890年の作品です。

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特別展には、かつて、Félix Fénéon さんのコレクションであった作品や、関わりの深いアーティストの作品を中心に、MoMA のコレクション作品の他、メトロポリタン美術館や、グッゲンハイム美術館、オルセー美術館など様々な美術館やプライベートコレクションからやって来ています。Félix Fénéon さんと同じ思想を持ち、友人でもあった、点描主義の代表的アーティスト、スーラやシニャックら点描アーティストの作品から展示がはじまります。Félix Fénéon さんは、批評家として、ネオインプレッショニズム (Neo Impressionism) という表現を用い、点描主義アーティストたちを評価する記事などを書き、プロモートしていたそうです。

メトロポリタン美術館 の有名なジョルジュ・スーラ (Georges-Pierre Seurat) の1884年の “A Sunday on La Grande Jatte” の習作もやって来ています。こちらも、Félix Fénéon さんのコレクションの一つだったそうです。完成版は、シカゴ美術館 にあり、門外不出の作品となっています。

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こちらは、MoMA 所蔵、スーラの1890年の作品、The Channel at Gravelines, Evening, Marine avec des ancres summer。スーラは、元祖点描主義のアーティストです。

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スーラに影響を受け、点描を描きはじめ、点描主義の代表的アーティストとなったのが、シニャックです。
こちらは、シニャックの1888-90年の作品、Sunday です。

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シニャックも、Félix Fénéon さん同様、アナーキストで、当時のアート界には、思想家が多かったようです。こちらは、シニャックが、1896年に描いた作品、In the Time of Harmony: The Golden Age Has Not Passed, It Is Still to Come というとても長い思想家的な題名の作品です。

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パリの オルセー美術館 からも何点か作品がやって来ていましたが、こちらもその一つ、シニャックの1897-99年の作品、Demolition worker です。

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現在もコロナの影響もあり、BLM運動など社会運動が盛んになって来ていますが、19世紀末のパリも、アナーキスト、ソーシャリスト、その他、諸々の活動家を中心に、様々な社会運動が行われ、政府と衝突することも多かったようです。そんな光景を描いた作品も展示されています。Félix Fénéon さんも、アナーキストグループが起こしたとされた爆破や暗殺事件の容疑者として逮捕されたことがあります。

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その一方、文化人が、サロン、カフェ、キャバレーなどに集い、議論したり、芸術にふけったり、退廃的な文化が花開いた時代でもありました。そんな時代の象徴、ロートレックのポスターなども展示されています。

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スイス出身で、フランスで活躍したアーティスト、Félix Vallotton の1896年の作品。Félix Fénéon を描いた Félix Fénéon at La Revue blanche。Félix Vallotton は、ナビ派と関係が深く、木版画やイラストなどで出版にも携わっていたアーティストで、イラストレーター風の作風です。昨秋から年初にかけて、メトロポリタン美術館で、Félix Vallotton の特別展 が開催され、数多くの作品が集まっていました。少し、エドワード・ホッパーの作風が思い浮かんできます。

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ナビ派を代表する、ボナールやヴァイヤールの作品も展示されています。独特の渋い色合いが特徴です。こちらは、ボナールの1899年の作品、Woman Posing on a bed。

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こちらは、ヴァイヤールの1903年の作品、The Folding bed。どちらも、かつて Félix Fénéon さんのコレクションの一部だった作品です。

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著述業を営む一方、アナーキストとしての活動で逮捕されたりするなど波乱の人生を歩んでいた、Félix Fénéon さんですが、後に、フランスの著名ギャラリー、Bernheim-Jeune で、ギャラリストとしての仕事をはじめます。
ピカソと並び、モダンアーティストの巨匠として知られるマティスは、実は、Félix Fénéon さんが、まだマティスが無名だった頃に見出し、専属契約を取り付けたアーティストでした。
野獣派 (フォービスム) として知られる、独特の色使いのマティスの作品の数々。Félix Fénéon さんは、当時、流行していたアフリカから持ち帰られた仮面や人形も多数収集していたそうで、そんな作品の数々も絵画と合わせて展示されています。

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マティス (Henri Matisse) のフォービスム時代、1905-06年の作品、Interior with a Young Girl (Girl Reading)。少女が部屋で読書している姿を、奇抜ですが、美しい色合いで描いています。

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マティス同様、フォービスムの代表的アーティスト、Kees van Dongen の1908年のソプラノ歌手を描いた作品、Modjesko, Soprano Singer。強烈な色使いが特徴です。

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フランスで活躍したアーティストだけでなく、イタリア人フューチャリズムアーティストの作品もあります。Félix Fénéon さんは、1912年、パリで初のフューチャリズムの展示を開催しました。
こちらは、イタリアの著名モダンアーティスト、ウンベルト・ボッチョーニ (Umberto Boccioni) の1911年の作品、The Laugh。色合い的には、フォービスムの影響が感じられますが、少し暗いトーンが特徴です。常設展にある近未来的なロボットのような彫刻作品も有名で、20世紀初期にイタリアで盛んだった、フューチャリズム (Futurism) を代表するアーティストの一人です。

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ボッチョーニ同様、フューチャリズムを代表するイタリア人アーティストの一人、Carlo Carrà の1910-11年の作品、Funeral of the Anarchist Galli。警察により殺害されたアナーキストのお葬式の様子を描いた作品で、政府とアナーキストグループの争いで混乱状態となっている感じが伝わって来ます。

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こちらは、モディリアーニ (Amedeo Modigliani) の1918-19年の作品、Jeanne Hébuterne with Yellow Sweater。グッゲンハイム美術館所蔵の作品です。モディリアーニの作風に影響をあたえたのもアフリカンアートということで、アフリカの彫刻や仮面を愛した、Félix Fénéon さんの心をとらえた作品だと思います。

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グッゲンハイム美術館 のもう一点のモディリアーニのヌードの作品もあります。どちらも Félix Fénéon さんのコレクションだった作品で、後に、グッゲンハイムに譲られました。点描で有名なスーラの印象派風作品の数々も展示されています。

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MoMA による、今回の特別展の紹介映像は、こちらです。

印象派・ポスト印象派のアート好きの人におすすめで、19世紀末前後のパリの雰囲気が感じられる特別展です。
再開後の MoMA の様子は、こんな感じになっていて、とても快適にゆっくりと鑑賞することができるようになっています。MoMA は今事前予約制になっていて、9月28日までは、入館無料のため特に人気となっています。翌週のチケットが金曜日午前10時にリリースされ予約開始になります。

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