20世紀アメリカ近代建築の巨匠、フランクロイドライト (Frank Lloyd Wright) の代表的な建築8カ所が世界遺産になりました!現在、アゼルバイジャンのバクーで開催されているユネスコの会議で、今日、世界文化遺産に決定したのは、ニューヨークでもお馴染みの グッゲンハイム美術館や、ピッツバーグ近郊の落水荘をはじめ、全米に散らばるライトの代表的建築サイト8ヵ所です。ライトは、周囲の景観に融和しながらの個性的なデザインが特徴で、まだまだヨーロッパの影響が強かった20世紀初頭、アメリカならではの独自の建築スタイルを確立した建築家です。
フランク・ロイド・ライトは、ル・コルビュジエ (Le Corbusier)、Ludwig Mies van der Rohe らと共に20世紀前半に活躍した世界的に著名な建築家です。日本を訪れたこともあり、旧帝国ホテルをデザインしたことでも知られています。2017年のライト生誕150周年を控え、2016年にも世界遺産にノミネートされましたが、ル・コルビュジエの建築群が登録された一方、ライトは、落選となってしまいました。そして、ようやく今回、2019年、全米に点在する、フランクロイドライト建築を代表する8ヵ所の世界遺産登録が決定しました。
ウィスコンシン州出身のライトが、建築家としてのキャリアをスタートしたのは、シカゴです。ライトがデザインした最初の自身の家兼建築スタジオが、シカゴのお隣、オークパークにあります。こちらのサイトは、世界遺産には含まれていませんが、ライト邸の他、ライトがデザインした豪邸が立ち並び、初期のライト建築を知るのにおすすめです。
以下、今回、「フランク ロイド ライト 20世紀建築」“20th Century Architecture of Frank Lloyd Wright” として世界遺産に登録された、フランクロイドライト建築を紹介します。
ユニティーテンプル
フランク・ロイド・ライトが初期の頃、オークパークに建築した教会です。
1904年にデザインし、1905年から1908年にかけて建てられた教会、ユニティーテンプルが、世界遺産に選ばれました。
ユニティテンプル Unity Temple
875 Lake St, Oak Park, IL 60301 地図
ロビー邸
フランクロイドライトのシカゴにある有名建築、ロビーハウス (Robie House) です。
シカゴのオークパークを拠点に活動していた、フランクロイドライトが、20世紀初頭前後、典型的なスタイルとして取り入れていたのが、アメリカ中西部の大平原をイメージした、プレーリー様式でした。レンガ造りで、水平方向への伸びやかな広がりが感じられる、プレーリー様式の代表作が、シカゴ大学のお隣にある、ロビー邸 (Robie House) の建築です。1908年頃デザインし、1909年から1910年にかけて建てられました。
フランクロイドライトらしさが光る代表的な建築である、ロビーハウスの中をこちらで詳しく紹介していますが、日本好きだったフランクロイドライトは和の要素も所々に取り入れていて、美しいステンドグラスやインテリア、家具など、どこをとっても見てもセンスが感じられる美しい建築でした!
また、プレーリースタイルといえば、世界遺産には含まれていませんが、ニューヨークのアップステート、バッファロー周辺の Darwin D. Martin House なども、ライト初期のプレーリースタイルの建築として残されています。
タリアセン
高層ビルの父とも呼ばれる Louis Sullivan に可愛がられながらも、外部の仕事を請け負い、彼の建築ファームを解雇されたり、とドラマチックな人生を歩んだ、フランク・ロイド・ライトですが、1909年、オークパークでの家庭生活を放棄し、ヨーロッパで、1年程暮らします。そして、1911年にアメリカへ帰国後、ウィスコンシン州 Spring Green の タリアセン(Taliasin) を自分でデザインし、自身の邸宅としていましたが、殺人事件や火事など様々な不幸な出来事が起こり、そんな場所でありながらも、ライトの生涯の拠点となった場所でした。
タリアセン Taliesin
5481 County Rd C, Spring Green, WI 53588 地図
ホリホックハウス
1920年代前後に流行したスタイルが、中米の古代マヤ文明の遺跡に影響を受けたデザインである、マヤリバイバル様式です。ライトのマヤリバイバル様式の代表的建物が、1919年から1921年頃にかけて建てられた、ロサンゼルスのホリホックハウスです。旧帝国ホテルが、建てられたのもこの頃です。ライトにとっては、カリフォルニア州や日本は、古代マヤ文明が似合うエキゾチックなロケーションだったのかもしれません。
フランクロイドライトのホリホックハウスは、ロサンゼルスの絶景ビュースポットの丘にある、エレガントな素敵なインテリアの建築です。
ホリーホックハウス Hollyhock House
4800 Hollywood Blvd, Los Angeles, CA 90027 地図
落水荘
フランクロイドライトの最高傑作に挙げられることも多い建物が、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外にある、落水荘 (Falling Water) です。周囲の景観との融和をデザイン規範にしたライトらしいデザインで、森と川に見事に馴染んだ邸宅です。1935年から1937年にかけて建てられました。
Jacobs House
1936年から1937年にかけて、ウィスコンシン州マディソンに建設された Herbert and Katherine Jacobs First House は、ライトが提唱した、富裕層用ではない一般用の建築で、アメリカらしい集合住宅、ユーソニアン (Usonian structure) の代表的建築です。時代背景的には、世界恐慌の影響で、富裕層が激減したことが影響しています。
Herbert and Katherine Jacobs First House
441 Toepfer Ave, Madison, WI 53711 地図
タリアセン ウエスト
1937年頃から、アリゾナ州の州都、フェニックスのお隣、スコッツデールに、ライトの冬の別邸、建築スタジオとして建設されたのが、タリアセンウエスト (Taliesin West) です。世界恐慌の影響でフランクロイドライトはやりたい仕事が減っていき、そんな中、自分の冬の別荘 & 建築学校として、建設した個性的な建物です。
今までに色々なフランクロイドライトの建築を見てきましたが、このタリアセン・ウエストは、中でも、フランクロイドライトの人柄が垣間見れる面白い場所でした。フランクロイドライトの弟子になるためにはなどの面白いお話も伺え、アリゾナらしい明るい開けた雰囲気の建築ツアーは素晴らしかったです。
タリアセン ウエスト フランクロイドライト 冬の別邸&建築スタジオ アリゾナ・スコッツデール Taliesin West
グッゲンハイム美術館
フランクロイドライトが、晩年に手掛けた最後の作品が、ニューヨークにある、グッゲンハイム美術館です。
グッゲンハイム美術館が完成したのが1959年。ところがフランクロイドライトはその年にグッゲンハイム美術館の完成を見届けることができないまま亡くなりました。個性的なデザインの建物が次々と登場するニューヨークですが、今でもその斬新さは失われておらず、ニューヨークの有名美術館として、そして素晴らしい建築として、グッゲンハイム美術館には毎日多くの人が訪れています。
フランクロイドライトが最後に手掛けた傑作建築である、グッゲンハイム美術館は、美しいらせんの廊下を下りながら、アート鑑賞ができるという、優雅な素晴らしい美術館です。
そんなフランクロイドライトの建築、グッゲンハイム美術館がある、ニューヨークでは、2017年、MoMA で、ライトの150周年記念の特別展が開催されていました。
フランクロイドライトの建築が世界遺産に登録された、これを機に、ニューヨーク、シカゴ、ピッツバーグ、ロサンゼルス、スコッツデールなどアリゾナ州を訪れたら、足を伸ばしてみるのもおすすめです。