世界の著名美術館でよく作品を見かける、ドイツの現代美術で最も有名なアーティストの一人、ゲルハルト・リヒター (Gerhard Richter) の特別展が、メトロポリタン美術館の別館、メットブロイヤー (Met Breuer) ではじまりました。ドイツ人らしい雰囲気の作風で、本物の写真以上に写実的な作品群と、それとは対照的なコンテンポラリーアートの定番、抽象アートの作品群が集まり、同じアーティストの作品とは思えないようなバラエティに富んだ作品が展示されています。
Met Breuer にて、2020年3月4日にはじまった、ドイツ人著名コンテンポラリーアーティスト、ゲルハルト・リヒター (Gerhard Richter) の特別展、Gerhard Richter: Painting After All は、3階と4階の2フロアに渡り、絵画作品を中心に、ガラスや鏡を使ったコンセプトアート的な作品など、ゲルハルト・リヒターの大作が大集合しています。
ジャクソン・ポロックを彷彿とさせるような、抽象表現主義 (Abstract Expressionism)、カラーフィールドとポップアートが合わさったようなポップな抽象アートから、写真のように写実的な作品まで多岐に富んだ作品が、2フロアに渡り展示され、とても見ごたえのある特別展です。
ゲルハルト・リヒターの作品を紹介していきます。
こちらは、Grays と呼ばれるモノクロの灰色、白黒を多用していた、ゲルハルト・リヒターの初期の頃 1960年代の作品です。
ゲルハルト・リヒターとは
ゲルハルト・リヒター (Gerhard Richter) は、1932年にドレスデンに生まれ、現在88歳の現役アーティストです。ナチスドイツ下で生まれ、その後、共産圏の東ドイツで過ごし、ベルリンの壁が建設される直前の1961年に西ドイツに逃亡、その後、ドイツの現代アートを代表するアーティストとなっています。戦争のトラウマを感じさせる、ドイツの現代アートの著名アーティストで、Anselm Kiefer と共に、世界の様々な美術館でもその作品をよく見かけます。
初期の頃に、よく描いていたのが、モノクロ写真のような写真をもとにした写実的な作品ですが、ぼんやりとした感じで独特の雰囲気を醸し出しています。親族を描いていたものが色々と展示されています。
ゲルハルトリヒター CAGE
ゲルハルト・リヒターの最も有名なシリーズの一つが、Cage です。
音楽家であり、詩人でもあり、思想家でもあった、アメリカ人アバンギャルドアーティスト、ジョン・ケージ (John Cage) にちなんだ作品だそうです。
抽象アーティストかと思えば、写真のような作品もあります。こちらは、娘さんを描いた1977年の作品、ベティ。とてもリアルな目を引く作品でした。
流氷を描いた美しい風景画。
2001年にニューヨークで起こった911事件を描いた作品もあります。現実的でもありながら、抽象的でもある、混ざり合った作風で描かれています。
最近では、ガラッと作風が変わり、ポップな色使いの幾何学模様や、ストライプの作品も描いています。
こちらの映像では、そんな作品を描いた心境を語っています。
60年代頃に流行ったと思われる、レトロな髪形の女性たちの作品。
現実と抽象の狭間のような、シューレアリスム的な作品も色々あります。こちらは、海の様子。
強い感情が込められた感じの母子の作品。
ガラスを用いた抽象的なミニマルアートも何点か展示されています。コンテンポラリーアートの様々な大きなムーブメントに影響を受けている様子も見て取れます。
森を描いた抽象アートのシリーズ、Forest (Wald)。
こちらは、ゲルハルト・リヒターのドキュメンタリー作品のトレイラーですが、作品の描き方が紹介されています。アンディ・ウォーホル のシルクスクリーンを彷彿とさせますが、個性的な技法で描かれています。
グレイや暗い色使いの抽象アートだけでなく、80年代頃から明るい色使いの作品も描いています。
最近は、幾何学模様系の抽象アート作品をよく描いているようです。
ゲルハルトリヒター ビルケナウ
第2次世界大戦中、ヒトラー政権下、ホロコーストの舞台となったアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所 (Auschwitz II-Birkenau) をテーマとしたシリーズが、ビルケナウ (Birkenau) です。ギャラリーの部屋の奥には、鏡があり、その両側には、4枚ずつのパネルが飾られています。片側は、実際に描いたもの、もう一方は、そのデジタルコピーとなっています。
収容所の様子を隠し撮りしたという写真をもとに、ゲルハルト・リヒターが、描いた作品で、悲しい雰囲気を漂わせています。
3階では、ゲルハルト・リヒターに関する映像作品も上映されています。
メトロポリタン美術館の今回の特別展の紹介映像です。作品については、こちら でも詳しく紹介されています。
会場のさらに詳しい様子は、こちらの映像で見ることができます。
ゲルハルト・リヒター特別展は、2020年7月5日まで開催されています。
Met Breuer の本館、メトロポリタン美術館と合わせて訪れてみてください。