アメリカでは、コロナによる経済シャットダウンで、リテールを中心に経営破綻が続いていますが、昨日、旅行関連の企業、ハーツ (Hertz)、ダラー (Dollar)、スリフティ (Thrifty) などを抱える、アメリカ大手レンタカー会社、ハーツ・グローバル・ホールディングズ (Hertz Global Holdings) が破綻し、経営再建に向けて、チャプター11を申請しました。パンデミックということで、アメリカ国内はもとより、世界中で同時に移動や旅行が禁止になるという、前代未聞の状態が長く続いており、もともと借金の多い企業にとっては致命的となっています。
アメリカを中心に、世界各地の空港を中心に、展開している大手レンタカー会社、ハーツ・グローバル・ホールディングズ (Hertz Global Holdings) が、破綻し、昨日、5月22日、再建を目指し、連邦倒産法第11章 (Chapter 11) を申請しました。こちら の Hertz による発表によると、チャプター11 の対象は、アメリカとカナダのみで、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなどその他の地域は、除外となっており、今後も、 Hertz、Dollar、Thrifty をはじめとした全てのブランドで、通常通り営業を続け、10億ドルの手元資金で、再建を目指すそうです。
第4四半期、昨年通年共に、過去最高の売上だったという事で、今年2月の四半期決算発表前後には、株価が $20を超えていましたが、昨日は $3以下で推移していました。現在の最大株主は、投資家の Carl Icahn で、38% 程所有しているそうです。
Hertz は、4月に ABS (Asset-Backed Security) への返済を遅延し、5月22日までに、4億ドルを用意する必要があったようです。レンタカー会社ということで、膨大な数の車を所有していますが、それを売るにも中古車市場も不安定となっており、売却は不可能でした。債権者との話し合いがまとまらない中、今回のチャプター11の申請に至ったようで、債権者の中には、IBM や Lyft も含まれています。
ハーツ (Hertz) といえば、空港に並ぶレンタカー会社の中でも大手の人気の会社の一つですが、老舗のレンタカー会社で、その起源は、実は、102年以上も前にまで遡ります。なんと、1918年、スペイン風邪 のパンデミックの年に、シカゴで創業された会社で、Ford Model T を貸し出していたそうです。
ちなみに、Ford Model T と言えば、自動車の一般普及に大きく貢献した歴史的な車種で、ミシガン州にある ヘンリー・フォード博物館 や、ニュージャージ州にある トーマス・エジソン国立歴史公園 などで見ることができます。
その後、1923年に、John D. Hertz さんに売却され、Hertz という名称となりますが、今度は、自動車会社の GM に売却され、1953年、再び買い戻します。その後、現在のユナイテッド航空、フォードなど様々な会社の傘下となりますが、2005年、いくつかのプライベートエクイティがグループで買収し、2006年に、ニューヨーク証券取引所に上場されました。大部分を占める ABS に加え、プライベートエクイティと 2012年の、Dollar Thrifty の M&A もあり、現在、244億ドル程もの莫大な債務を抱えていました。スペイン風邪の年に始まった会社が、新型コロナのパンデミックをきっかけに破綻することになってしまいました。現在、レイオフや一時休暇 (furlough) などで従業員を減らしており、今後、規模が縮小されるなど色々な変化はあるとは思いますが、再建計画を経て、復活を果たす可能性もあると思います。
Avis や Enterprise など同業他社は、Hertz ほど債務は多くはないので、差し迫った破綻の危険はなさそうです。自動車メーカーの大顧客であるレンタカー会社の現状は、自動車メーカー、そして中古車市場にも大きな影響を与えそうです。Hertz では、中古車のオンラインセール(中古車、CPO)が行われています。
大手リテールでは、以下の企業が、コロナ破綻し、再建を目指しています。
一足早く、2月にチャプター11を申請し、再建を行っていた Pier 1 は、全店を閉鎖し、清算することを発表しています。
