ニューヨークのグッゲンハイム美術館では、先日から新しい特別展がスタートしました。グッゲンハイム美術館といえば、抽象アートという印象がありますが、この特別展では、あまり知られていない20世紀初頭の抽象アートの先駆けとも言えるスウェーデン人女性アーティスト、Hilma af Klint の作品が紹介されています。写真映えする作品も多く、撮影を楽しんでいる人も多く見かけました。
グッゲンハイム美術館は、カンディンスキー、モンドリアンなど抽象アートのコレクションが充実していていますが、実はこの知られざる女性アーティストは、それ以前から、このような彩りやデザインが美しい幾何学模様の抽象的な作品を描いていていたそうです。グッゲンハイム美術館へ入館してすぐのギャラリーに飾られている、10個の巨大な迫力ある作品群が壮観です。
グッゲンハイム美術館では、今夏、ジャコメッティの特別展が開催されていましたが、先日、新しくスタートしたのが、スウェーデン人女性アーティスト、Hilma af Klint さんの特別展です。19世紀後半から20世紀前半に活躍したアーティストです。19世紀後半、当時隆盛だった古代の智慧を探求する神智学(Theosophy)に傾倒していた人だったそうです。ちなみに、この19世紀後半の神智学は、近代アートをはじめ様々な分野に影響を与え、ニューエイジや現代のスピリチュアルにつながっていった存在のようです。
The Ten Largest と呼ばれるシリーズで、巨大な10作品が並んでいる様子は、圧巻です。
上のフロアからのぞき込んでみると、こんな様子。人生の移り変わりの様子を表しているそうです。Hilma af Klint さんが抽象アートを描き出したのは、1906年からで、途中、中断しながら、1915年までに何かの啓示を受けたかのように、抽象絵画を描き続けたそうです。生前これらの作品は一般公開されることなく、死後20年間は、公開しないようにとの遺言を残したそうです。草間彌生さんの巨大な作品のような迫力を感じます。
ピンクのお花をモチーフにした作品も多く、ピンクとパープルの淡いグラデーションの色遣いなどとてもかわいい雰囲気で好きでした。たまにはこういう可愛いアートもいいですね!
可愛らしい色だけでなく、ダークトーンな作品もあります。
ビビッドなカラーコントラストの時もあります。
多くの人の注目を集めていた作品群のひとつがこちらです。グッゲンハイム美術館のスロープを上から降りてくるときにも遠くからでも目に入ってくる存在感ある神秘的、少しオカルト風な作品で、ダヴィンチコードの作者の本に出てきそうなシンボルが描かれています。
ミステリアスな作品も。
一つのテーマを持って、小さな作品を並べることによって、一つのアート作品となる、現代アートのような作品も手掛けていたようです。時代を感じさせない作品です。
円形をモチーフとしたシンボリズム的な作品。美しい色合いの円形と言えば、ドローネー(Robert Delaunay)の作品が思い浮かびます。
色鮮やかな楽しい作品です。こちらは、ロシアンアヴァンギャルドのシュプレマティスム(Suprematism)のような雰囲気です。
抽象アートと言うと、男性的なイメージで、シャープな印象が強いですが、女性アーティストだけあって、丸みのあるどこか暖かみがある雰囲気の作品が多いです。
こちらは、グッゲンハイム美術館による Hilma af Klint の紹介ビデオです。
“Hilma af Klint: Paintings for the Future” は、来年、2019年4月23日までの開催です。
グッゲンハイム美術館は、フランク・ロイド・ライトによりデザインされた建物で、メインギャラリーは、とても個性的ならせん状となっています。
抽象アートのコレクションが有名な美術館ですが、ルノワール、モネ、ピカソ、セザンヌなど印象派・ポスト印象派アーティストの常設ギャラリーもあり、定期的に展示される作品も入れ替えられるので、グッゲンハイム美術館を訪れたら、メインの展示と一緒に訪れてみるのがおすすめです。