メトロポリタン美術館 ファッション展 アメリカのクラシック映画の世界へ In America: An Anthology of Fashion

メトロポリタン美術館では、いよいよ今年も新しいファッション展がはじまりました。アメリカのファッションをテーマとした特別展の続編で、In America: An Anthology of Fashion と題され、アメリカのクラシックなファッションがテーマとなっています。会場となっているのは、アメリカの様々な時代の歴史的な建物や装飾品などが展示されている、アメリカンアートの1階のギャラリーです。それぞれの部屋に合わせたファッションが飾られ、まるでアメリカのクラシック映画の中に入り込んだかのような面白い体験ができるようになっています。

ニューヨークのメトロポリタン美術館は、すっかり通常モードとなり、ニューヨーカーはもちろん、旅行者も加わり、特に週末は大変な賑わいとなっています。

3年振りのメトロポリタン美術館の春のファッション大イベント、メットガラが先日行われました。メットガラの後の楽しみといったら、ファッション展です。今年のファッション展は、In America: An Anthology of Fashion と題され、アメリカの歴史的なファッションがテーマとなっています。昨秋からはじまっている、In America: A Lexicon of Fashion の続編で、引き続き、アメリカのファッションがテーマとなっています。
会場となっているのは、アメリカ美術が展示されている American Wing の1階で、彫刻やティファニーのステンドグラスなどが展示されている広々とした広場 (The Charles Engelhard Court) が入場口となります。週末はそれなりの待ち時間を覚悟し、ミュージアム到着後、真っ先に訪れるのがおすすめです。

ネオクラシカル建築のファサードの入口をくぐると展示がはじまります。このファサードは、かつて存在した、アメリカ国立銀行 (Bank of the United States) のウォール街支店のファサードが移築されたものです。アメリカンウィングの1階には、アメリカ各地の様々な時代の建物が移築された Peiod Rooms が展示されていて、それぞれのお部屋に合わせて、まるで映画の世界のようなファッションを楽しむことができます。

入口を入ると、まず出迎えてくれるのは、歴史的な大物のファッションの展示です。
まず一つ目は、アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンが着用したとされる服です。

そして続いて、エイブラハム・リンカーンが着用したとされる服も登場します。
こちらの服、実は、現在でもその名を残す、ブルックスブラザーズのブランドの服でした。

入口の正面奥に、美しいドレスが飾られています。
思わずつられて行ってしまいそうになりますが、その前に、左右に二つづつお部屋があるので、そちらを見てから奥に進んで行きます。
後で戻れそうなのですが、ここで見逃すともう戻れません。

今回のファッション展は、これまでとは異なり、アメリカ各地の様々な歴史的な建築の一部のお部屋が当時の姿を伝えるように再現され展示されている、Period Rooms が舞台となっています。著名映画監督らが演出する形で、それぞれその時代のアメリカの著名ファッションデザイナーによるドレスやスーツに身を包んだマネキンたちが登場しシーンが作り出されている、とても面白い展示です。ファッションと同時に、インストレーションアートのようなシーンを見て、歴史も学べるようになっています。

こちらは、19世紀初頭のマサチューセッツ州 Haverhill にあったお屋敷のお部屋、Haverhill Room です。女優で映画監督でもある、Radha Blank さんにより演出された白髪の長い髪が印象的な女性が登場し、物語の中のような雰囲気です。

こちらも、同じく19世紀初頭頃、バージニア州リッチモンドにあったお屋敷の一部屋、Richmond Room です。女優で映画監督でもある、Regina Kingさんの演出で、優雅なパーティの様子が描かれています。

19世紀初頭頃のメアリーランド州ボルチモアに建てられたお屋敷のダイニングルーム、The Baltimore Room の一コマ。フォトグラファーで映画監督でもある Autumn de Wilde さんの演出で、楽しいダイニングシーンが描かれていて、可愛いワンちゃんも登場しています。

同じく19世紀初頭頃のバージニア州 Petersburg に建てられたお屋敷の一部屋、The Benkard Room。Autumn de Wilde さんの演出で、女性が倒れていて、ホラー映画の一幕のような雰囲気です。

アメリカの家具や、絵画、彫刻、工芸品など、メトロポリタン美術館の様々な作品が飾られているギャラリーに、ファッションが飾られるので、合わせてみることができるのは非常に面白いです。

お屋敷とは少し雰囲気が異なる、こちらの一風変わったお部屋は、シェーカー教徒の寝室、Shaker Retiring Room です。シェーカー教は、18世紀にイギリスのマンチェスターではじまったキリスト教のプロテスタントの一派で、アメリカへ移り住み、各地にコミュニティを作り暮らしていました。こちらは、ニューヨーク州オールバニー近くにある Mount Lebanon にあったコミュニティハウスのシェアルームです。歌ったり、踊ったりと独特のスタイルを持った宗派ですが、そのシンプルでサステナブルな暮らしやデザインは、現在でも注目を集めています。映画監督である Chloé Zhao さんの演出です。

今回のファッション展は、それぞれの部屋で趣向が凝らされ、どれもドラマチックな演出がされていますが、最も驚きがあった写真映えするお部屋が、19世紀に活躍したアーティスト、John Vanderlyn による巨大なベルサイユ宮殿とその庭園の様子を描いた絵画が飾られている、Vanderlyn Panorama Room です。入口には、白いフォーマルな当時の形のスーツに身を包んだ紳士が出迎えています。

こちらは、ファッションデザイナーで、映画監督でもある Tom Ford さんの演出で、鏡張りの部屋の中央には、美しいドレスを身にまとったたくさんのマネキンたちが、ダイナミックに配置されていて、迫力満点です。

マネキンたちは、剣を持ち、フェンシングで戦っています。歴史的にファッションに大きな影響を与えたフランスのファッションと、そこから独自のファッションとして脱却を図るアメリカファッションの姿が描かれています。

このお部屋では、巨大なヴェルサイユ宮殿と庭園の絵画も見どころです。

鏡張りのキラキラした部屋を出てすぐのギャラリーでは、通常のファッション展に近い形で、様々なドレスが展示されていきます。
Carolyn Schnurer、Anne Fogarty、Lloyd Kiva New、Claire McCardell、Vera Maxwell ら20世紀に活躍したアメリカのファッションデザイナーの作品の数々が展示されています。

ドレス以外にも、プレイスーツ (Playsuit) や、最近、制服としての他、ファッションとしてもよく見かけるようになって来ている仕事着のつなぎ (Jumpsuit/Uniform) などアメリカらしい衣服も展示されています。

こちらは、19世紀後半に、コネチカット州 Meridan に建てられた、ルネサンスリバイバル様式のお屋敷の一室、Renaissance Revival Room です。映画監督の Julie Dash さんの演出で、パーティの身支度の真っ最中で、ドレスを着飾り華やぐ中、忙しい雰囲気も伝わって来ます。

こちらは、19世紀前半に建てられた、ニューヨークにあったお屋敷のギリシアリバイバル様式の客間、Greek Revival Parlor です。こちらも、Julie Dash さんによるステージングで、美しいお花が印象的です。

19世紀中頃に建てられた、クイーンズのアストリアにあったロココリバイバル様式の客間、Rococo Revival Parlor は、映画監督、Janicza Bravo さんによる演出で、シンプルながらフランス風のおしゃれな雰囲気です。

こちらは、19世紀中頃に建てられた、ニューヨーク州 Newburgh のお屋敷のゴシックリバイバル様式の書斎、Gothic Revival Library です。こちらも、Janicza Bravo さんによるステージングです。

こちらは、ニューヨークの著名建築ファーム、McKim, Mead & White により、19世紀後半にデザインされたニューヨーク州バッファローのお屋敷のステアホール、McKim, Mead & White Stair Hall です。映画監督の Sofia Coppola さんによる演出で、少し不気味な雰囲気です。

こちらは、鉄道王として知られる、ハンティントンの未亡人、Arabella Worsham や 石油王として知られる John D. Rockefeller が所有していた、19世紀後半のニューヨークのタウンハウスのドレスルーム、Worsham-Rockefeller Dressing Room で、素晴らしい家具が印象的です。こちらも、Sofia Coppola さんによるステージングです。

美しいドレスを合わせて、ティファニーや John La Farge のステンドグラス、細かい装飾が施された家具など美しいアート作品も見逃せません。

最後を飾るのは、アメリカの著名建築家、フランク・ロイド・ライト が、20世紀初頭にデザインしたミネソタ州ミネアポリス近郊の邸宅、Francis W. Little House の一室、フランクロイドライトルーム (Frank Lloyd Wright Room) です。映画監督の Martin Scorsese さんによるステージングで、当時のホームパーティの様子がとてもよく伝わって来る、まさに映画の世界に入ってきたような世界観です。

メトロポリタン美術館のファッション展、In America: An Anthology of Fashion と合わせて、同時開催している、In America: A Lexicon of Fashion も是非ご覧ください。

メトロポリタン美術館ファッション展 アメリカのファッション In America: A Lexicon of Fashion

見どころいっぱいの巨大ミュージアム、メトロポリタン美術館の基本情報は、こちらです。

メトロポリタン美術館 ミュージアム見どころ完全攻略法

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・ アメリカのクラシック映画の世界へ In America: An Anthology of Fashion
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