アメリカ南部の人気都市、チャールストンといえば、昔ながらの古い街並みが特徴的ですが、近年街は拡大中で、歴史的なダウンタウンから少し離れたエリアには、お洒落なレストランやバーに加え、最新のミュージアムなど、新スポットが続々と誕生しています。ダウンタウンの中心から少し離れた、フェリー乗り場や水族館などがあるリバティスクエア周辺のウォーターフロントに 2023年にオープンしたチャールストンの最新ミュージアムが、国際アフリカ系アメリカ人博物館 (International African American Museum (IAAM)) です。美しい現代的な建物のミュージアムで、アフリカ系アメリカ人の歴史やロウカントリーで暮らす Gullah Geechee の人々の文化、かっこいい映像やアートなどを通じて、インタラクティブに学ぶことができます。
国際アフリカ系アメリカ人博物館 (IAAM インターナショナルアフリカンアメリカン博物館) は、サムター要塞や対岸のマウントプレザント行きのフェリー乗り場がある、リバティススクエア近くのウォーターフロントにあります。2023年6月にオープンしたばかりのチャールストンの最新スポットです。
古い街並みで知られるチャールストンでは、とても珍しい現代的な建物のミュージアムで、周囲は美しいヤシの木に囲まれ、ブロックが宙に浮いたような感じのユニークな建築が目印です。国際アフリカ系アメリカ人博物館の建物は、オハイオ州を拠点に、大学や空港、ホテルなどパブリックスペースのデザインを数多く手掛けているアフリカ系アメリカ人の建築ファーム、Moody Nolan によるデザインです。
1階部分は、建物を支える柱があるだけで広い空間が広がっています。入口でセキュリティチェックを済ませ、ギャラリーのある2階へと向かいます。
館内に入ると、ドラマチックな映像が流れる美しい空間が広がっています。アフリカ系アメリカ人の歴史や文化をテーマとし、たくさんのパネルが使われた面白い映像芸術です。それぞれのギャラリー間の区切りがあまりないオープンなフロアデザインで広々としていて、とても現代風な雰囲気です。
展示は 2階の 1フロアのみで、入口を入って正面にある、イーストウィングと、その手前のウエストウィングの2つのエリアがあります。
2つのウィングをつなぐ中央の通路で上映されているのが、TransAtlantic と題された映像で、博物館のイントロとなる作品になっています。
ウエストウィングのメインとなっているのが、アフリカ系アメリカ人の観点からみた、アメリカ大陸の発見から現在に至るまでのアメリカ史 American Journeys です。文字や写真のパネルを用いた伝統的なスタイルの展示で、時系列で分かりやすく展示されています。
15世紀末のコロンブスによるアメリカ大陸の発見を皮切りに、ヨーロッパ各国によりアメリカ大陸の植民地化が進められました。その際に主要な労働力を提供したのが、アフリカ大陸から強制的に連れて来られた奴隷たちです。チャールストンは、北米における奴隷貿易の中心地だった街で、なんと 40% 以上もの奴隷が、チャールストンの港からアメリカへやって来たそうです。
そんな歴史もあり、チャールストンには、奴隷制度に関する歴史的なスポットや博物館が色々あります。アメリカンジャーニー (American Journeys) の展示では、奴隷制度の時代に加え、これまでなかった、奴隷廃止後にアフリカ系アメリカ人たちがどうなっていったかの歴史についても詳しく紹介されています。
奴隷廃止後も、法的な差別や先入観による差別が長く続きましたが、公民権運動など様々な社会運動を通じて、少しづつ払拭されていきました。
2009年に、アフリカ系アメリカ人のバラク・オバマさんがアメリカ大統領になったのは、とても大きな出来事でした。現在では、アフリカ系アメリカ人は、様々な分野で活躍しています。
展示の途中には、所々で、アート作品や歴史的な遺品が飾られています。
ウエストウィングの最奥部には、CENTER FOR FAMILY HISTORY と呼ばれる美しいライブラリーがあります。様々な本が置かれている他、アフリカ系アメリカ人が自分のルーツを調べるためにリソースも用意されています。
ウエストウィングには、特別展ギャラリーもあります。現在、行われているのは、Ming Smith: Feeling the Future と題された写真展です。
Ming Smith さんは、白黒のストリートフォトなどで知られるアフリカ系アメリカ人女性のフォトグラファーで、ニューヨークの街角の写真などかっこいい作品が色々展示されています。
ストリートフォト以外にも抽象アートのような写真も印象的でした。
イーストウィングの最奥部からは、クーパーリバーの水辺の景色が見えます。
イーストウィングの中央の広いギャラリーでは、サウスカロライナにおけるアフリカ系アメリカ人をテーマとした展示が行われていて、サウスカロライナ出身の著名人などが紹介されています。
思わず注目してしまうこちらは、大西洋を横断する奴隷貿易の主要ルートだったチャールストン、バルバドス、シエラレオネの関係性をテーマにした美しい映像作品です。
アフリカ系アメリカ人のルーツでもあるアフリカの伝統的な文化やアートなども紹介されています。
プランテーション時代に、サウスカロライナの特産品となっていたのが、西アフリカからやって来た奴隷たちによって生産されたアフリカ原産のカロライナ・ゴールドと呼ばれるお米です。
Carolina Gold / Memories of the Enslaved では、模型や写真、アーティファクトなどを用いて、そんなプランテーション時代の稲作の様子が紹介されています。
ロウカントリーと呼ばれるチャールストン周辺を含めた大西洋沿岸部には、奴隷の子孫にあたる Gullah Geechee と呼ばれる人々が多く住んでいて、独特の方言や工芸作りなど昔ながらの慣習や文化を守りながら暮らしています。そんな Gullah Geechee の人々の文化を紹介するコーナーもあります。
シティマーケットやチャールストンの街角でも見かける、Gullah Geechee のお馴染みの工芸品、スイートグラスバスケット(Sweetgrass Baskets) なども展示されています。
館内には、小さな劇場があり、Gullah Geechee のスピリチュアルな文化が幻想的な美しい映像で紹介されています。
Gullah Geechee の文化は、チャールストンの名所、ブーンホールプランテーション などでも学ぶことができます。
チャールストンの国際アフリカ系アメリカ人博物館は現代的な美しい空間で、アフリカ系アメリカ人の観点からアメリカの歴史を学ぶことができる、チャールストンの今注目のミュージアムです。国際アフリカ系アメリカ人博物館の見学所要時間は、1時間半あれば余裕をもって見て回ることができます。美しい映像やアートなどが点在し視覚的にも楽しめる現代的なミュージアムです。
国際アフリカ系アメリカ人博物館 International African American Museum
14 Wharfside St, Charleston, SC 29401 地図
ワシントンDCのアフリカ系アメリカ人博物館も見応えがあり、おすすめです。
チャールストンには、たくさんの見どころがあります。