ニューヨークの写真美術館、国際写真センター (International Center of Photography (ICP)) が、ロウアーイーストサイドに移転し、新しいミュージアムがオープンしました。ICP は、昨夏から半年程休館となっていましたが、今年、2020年1月に、ロウアーイーストサイドの最新開発プロジェクト、エセックスクロッシング (Essex Crossing) に移り、以前より広々とした開放感のある美しいミュージアムとなっています。いくつかの面白い切り口の写真や映像作品の特別展が、並行して開催されており、写真好きの人におすすめのミュージアムです。現在は、ヒップホップをテーマとした特別展も行われていて、ヒップホップファンも楽しめると思います。
ICP として知られる、ニューヨークの歴史ある写真ミュージアム、国際写真センター (International Center of Photography) は、1974年に、著名な写真家、Cornell Capa により創設された、写真に関する教育機関とミュージアムからなる文化的組織です。以前は、ニューヨークのミッドタウンにありましたが、ロウアーイーストサイドに移転してきました。国際写真センター (ICP) が、新しくオープンしたのは、昨年、オープンしたばかりの エセックスマーケット の道を挟んだ向かいの建物で、ロウアーイーストサイドの再開発プロジェクト、エセックスクロッシング (Essex Crossing) 内です。
新しい建物には、国際写真センター (ICP) の学校と、ミュージアムが一緒に入っていて、ミュージアムの入り口を入っていくと、奥に細長く、ミュージアムショップがあります。
ミュージアムショップの横には、ゆったりとくつろげるスペースもあります。
ロビーでチケットを購入し、ミュージアム内へ進みます。
新しい国際写真センター (ICP) のミュージアムの建物は、Diller Scofidio + Renfro と共に、MoMA の拡張リノベーションも手掛けた建築ファーム、Gensler によるデザインです。
ミュージアムのギャラリーは、2階と3階の2フロアから構成されています。
いくつかのテーマの特別展が開催されていますが、現在、メインの展示となっているのが、2階のニューヨークのヒップホップシーンをテーマとした、”CONTACT HIGHA Visual History of Hip-Hop” です。
ヒップホップの発祥は、1970年代のサウスブロンクスとされ、その後、現在まで、多くの著名ラッパーを輩出してきたニューヨークのヒップホップシーンが、写真や映像など様々なビジュアル表現で紹介されています。20世紀後半、CDがたくさん売れて大盛況だった音楽業界ですが、一獲千金を夢見る人々を惹きつけたのがヒップホップの世界でした。ヒップホップが大ブームとなり、その影響は、現在でも広く感じることができます。
ヒップホップの誕生と同時期に盛んだったのが、グラフィティです。70‐80年代にかけて活躍した、グラフィティアーティスト、キース・ヘリングと Futura の写真も展示されていました。ちなみに、ニューヨークのブロンクス美術館では、現在、地下鉄グラフィティの特別展 が開催されているので、興味がある人は訪れてみるのもおすすめです。
現在も活躍中の Jay-Z や Kayne West、その他、赤い背景で、一際存在感のある The Notorious B.I.G ら著名ラッパーの写真も色々と展示されています。The Notorious B.I.G は、90年代に活躍し、”Big Poppa” (映像) などで知られるラッパーです。東海岸と西海岸のヒップホップ抗争の中、1997年に、LA で殺害されてしまいました。
ICPのギャラリーでは、写真の数々が美しく展示されています。
こちらはラッパーたちが集まった迫力の集合写真ですが、ハーレムのジャズミュージアム で見かけたような、かつてのジャズミュージシャンの集合写真を彷彿とさせる写真です。時代は違っても、常に新しいジャンルが生み出されていきます。
ドキュメンタリーではなく、コンテンポラリーな感じのアートな作品もあります。
ルーヴル美術館を舞台にしたミュージックビデオでも話題になったカップル、Jay-Z と Beyoncé。Jay-Z は、ブルックリン出身で、Alicia Keys と共同作、”Empire State of Mind” (映像) などがよく知られています。
Kanye West のデビューアルバム、The College Dropout のアルバムカバー撮影時の写真。
映像作品も上映されていて、見入っていました。ヒップホップと言えば、2023年に、新ミュージアム、ユニバーサルヒップホップミュージアム (Universal Hip Hop Museum) が、ニューヨークのブロンクスに登場予定となっています。ちなみに、現在、Universal Hip Hop Museum による [R]Evolution of Hip Hop と題された特別展が、Bronx Terminal Market で開催されています。
同じく2階では、まだ20代の若手フォトグラファー、Tyler Mitchell さんの展示も行われています。”I Can Make You Feel Good” と題された展示で、アフリカ系の人々をモチーフとした作品が並んでいます。
こちらは、写真を布にプリントして、洗濯物のようにかけられている面白い世界観の作品です。
クッションに寝ころびながら、天井を見上げて作品を鑑賞する、リラックスルームの空間もあります。
フォトグラファー Tyler Mitchell さんは、ビヨンセをはじめヴォーグの表紙の写真などで知られていますが、得意としているのが、アフリカ系の人々を生き生きと描写するモチーフです。
3面に異なる映像が投影されている美しい作品。
ミュージアムギャラリーの3階フロアでは、イギリス出身で、シアトルを拠点に活動するアーティスト、James Coupe さんの映像作品の展示が行われています。James Coupe さんは、テクノロジーの発展による、監視やAIによる Deep Fake など今後、問題となって行きそうな分野をテーマとしているコンセプトアーティストです。今回の展示では、1979年に公開された、ニューヨークのギャングをテーマとした映画、”The Warriors” のシーンをベースに、お客さんの顔が、映像に埋め込まれるという作品です。
巨大な3面にまたがる迫力あるスクリーンでは、AIによりお客さんの顔が分析され、数多くの人々が登場する映画のシーンで、プロファイルに合致しそうな人物に埋め込まれるようになっています。
この他、3階では、ICP のコレクションの中から、20世紀中頃のニューヨークのロウアーイーストサイドの写真が展示されています。かつて、移民が密集して住み、世界で最も人口密度が高いと呼ばれた、ロウアーイーストサイドの活気が伝わって来る作品が色々あります。
3階からは、エセックスマーケットのある東側が見渡せます。エセックスマーケット やその地下の マーケットライン は、ニューヨークの最新フードホールです。ミュージアムの前後に訪れて見るのもおすすめです!
国際写真センター (ICP) は、1時間程で、全体を見て回ることができます。現在、開催されている全ての特別展は、2020年5月18日までの開催です。ニューヨークパス も利用できます。
国際写真センター (ICP) の行き方は、地下鉄 F/M/J/Z線の Delancey St / Essex St 駅から徒歩1分です。
国際写真センター International Center of Photography (ICP)
79 Essex St, New York, NY 10002 地図
開館時間:
月・水・金・土・日 11 AM – 7 PM
木 11 AM – 9 PM
休館日:火曜日
入場料:
大人 $16
シニア (62-) $12
学生 (ID) $12
* 毎週木曜日の午後5時から9時まで、最終土曜日の午前11時から午後2時までは、Pay what you wish で入館できます。
国際写真センター (ICP) は以前までこんなミュージアムでした。
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