ニューヨークのマンハッタンは、高層ビルが立ち並ぶ大都市で、セントラルパークなどの都市公園を含め、ほとんどの場所は、人手が加わり開発されています。そんなマンハッタンで、数少ない手つかずの自然が残されているのが、最北端に位置する、インウッドヒルパーク (Inwood Hill Park) です。周囲をハドソン川とハーレム川に囲まれた丘の公園で、巨大な木々が生い茂った森には、インウッドヒルパークの人気トレイルコースがあり、マンハッタンにいながら手軽にハイキングが楽しめます。また、丘の上からは、雄大なハドソン川と対岸の切り立った絶壁のパリセイズ (The Palisades)、丘の麓では、ハーレム川の塩性湿地 (Salt Marsh) など気持ちのいい水辺の景色も楽しめます。かつてオランダ人が先住民からマンハッタン購入の契約をしたとされる、歴史的な場所があったり、バードウォッチングなど野生動物の観察でも人気の公園です。
インウッドヒルパーク(Inwood Hill Park) は、マンハッタンの最北端、インウッドにある、周囲を川に囲まれた小高い丘を中心とする自然豊かな公園です。園内には、美しい花々も点在していて春を楽しめます。
かつてはマンハッタン最後の農地で、裕福なニューヨーカーの郊外の別荘地として人気だったエリアでしたが、1926年に公園となりました。
インウッドヒルパークの一番の魅力は、天然林の巨大な木々が残る森の中のハイキングです。ハイキングコースは、公園の南北どちらからでもスタートできます。また公園北部のハーレムリバー沿いの水辺のエリアも気持ちのいい憩いのスポットとなっています。ハーレム川沿いなど公園北部からスタートする場合は、地下鉄A線の Inwood – 207 St、または、地下鉄1線の 215 St が最寄り駅となります。南部からハイキングをする場合やハドソン川沿いに向かう場合は、地下鉄A線の Dyckman St が最寄り駅となります。
インウッドヒルパークのトレイルコースは、オレンジ、青、白の三種類ありますが、好きに組み合わせて歩いてみても大丈夫です。
(Inwood Hill Park Map by NYC – PDF)
丘と水辺だけでなく、園内には、大きな芝生エリアもあります。
インウッドヒルパークでは、面白いことに、黒いリスがよく目につきます。ニューヨークでは、全般的には、茶色っぽいリスや、グレー色っぽいリス (Eastern gray squirrel) を多く見かけますが、種的には同じだそうですが、遺伝子の変異により、色が異なっていて、黒い方が、外敵に見つかりやすいというデメリットがある一方、太陽光を吸収しやすく、その結果エネルギーを保存できるというメリットがあるようです。インウッドヒルパーク周辺では、黒いリスが主流となっています。
園内には、野球、ソフトボール、サッカー、バスケ、テニスなど様々な運動場もあります。
インウッドヒルパークに隣接して、Muscota Marsh と呼ばれる、塩性湿地 (Salt Marsh) に面したパブリックスペースもあり、ローカルの憩いのスポットになっています。
マンハッタン最北端のハーレムリバー沿いなのに、なぜ海水と疑問に思う人もいるかもしれませんが、実は、ハドソン川河口付近のハドソン川やハーレム川は低地を流れていて、潮の満ち引き、潮汐に応じて、川の流れが逆流し、時間帯によって海水が流入するんです。ここは、水鳥たちの絶好の観察スポットとなっています。
ここからは、マンハッタンとブロンクスの間を流れるハーレムリバーに架かった、ヘンリーハドソンブリッジ (Henry Hudson Bridge) の全景を眺めることができます。ハーレムリバーは、もともとは、ブロンクスと繋がっている、マーブルヒルの北側を蛇行していましたが、船を通りやすくするため、マーブルヒルの南側に、直線上に進む運河が建設され、1895年に完成しました。その後、マーブルヒルの北側は埋め立てられ、もともとマンハッタンの一部だったマーブルヒルは、地理的には、ブロンクスの一部となりましたが、行政的には、現在でもマンハッタンに区分されています。
岩壁には、コロンビア大学のCが描かれています。ニューヨークのマンハッタンを一周する サークルライン のベストオブクルーズツアーで見て以来です。
そして、インウッドヒルパークならではの存在が、人気のトレイルです。園内の様々な場所から丘を上って行くトレイルコースに入ることができます。トレイルマップも色々な場所に設置されています。
地図以外にも、トレイルの途中、所々にも、木に色が塗られていて、それぞれのコースの目印となるようになっています。
トレイルは、全般的には舗装された坂道ですが、郊外の山にやって来たようなワイルドな雰囲気も楽しめます。
インウッドヒルパークのトレイル沿いには、色々な見どころも点在しています。こちらは、ハーレム川から丘に向かった途中にある、Shorakkopoch Rock と呼ばれている岩で、かつて新大陸へやって来た東インド会社のオランダ人、Peter Minuit が、1626年、この周辺で暮らしていた先住民のレナペ族(Lenape) からマンハッタンを$24相当で購入する契約をした場所とされています。
こちらは、インディアンケイブ (Indian Cave)。かつて、レナペ族がキャンプをしていたサイトだそうです。
その近くでは、先住民文化にインスピレーションを受けた感じの木々で作られた美しい見事なテントを見かけました。
トレイル沿いには、巨大な岩が数多くありますが、中には、美しい形の穴があいたものもあります。なんとこれは、5万年程前の氷河期に氷河により削られできた穴だそうで、Glacial Potholes と呼ばれています。
これらの歴史的な岩のスポットがあるのは、The Clove と呼ばれるエリアで、鳥が多く見られるバードウォッチングの人気スポットです。
大木が多く、キツツキを多く見かけました。こちらは、セジロコゲラ (Downy Woodpecker) です。
丸い点々が印象的な鳥、ハシボソキツツキ (Northern Flicker)。カンムリキツツキ (Pileated woodpecker) なども目撃されています。
歌鳥 ムナジロゴジュウカラ (White-breasted nuthatch)。この他、小さなフクロウのアメリカオオコノハズク (Eastern screech owl) も住んでいます。
途中、クジラの背中のような形状の岩、Whale Back Rock があります。
トレイル沿いには、樹齢がとても長そうな大木が数多くあります。
ハドソン川と対岸の断崖、パリセイズを見渡せる、展望スポットもあります。
こんな風に川沿いの道を進んで行きます。
途中、カラフルな鳥、ショウジョウコウカンチョウ (Northern Cardinal) もたくさん現れます。
まだ少しづつ緑が見えてきた段階で、つぼみの花も多かったですが、もう少しすると花と緑がいっぱいの森に変身します。
マンハッタンに居ながら、ちょっと自然の中、ハイキングをしたいという時におすすめの公園です。トレイルを南側に抜けると、すぐ近くに、地下鉄A線の Dyckman St がある他、フォートトライオンパークがあるので、まだまだ余裕があるという人は、そちらも一緒に訪れてみるのもいいと思います。
インウッドヒルパーク Inwood Hill Park
Payson Ave. &, Seaman Ave, New York, NY 10034 地図
インウッドには、この他、かつての農家の家が博物館として開放されている、ダイクマンファームハウスもあります。
お隣のフォートトライオンパークは、こんな公園です。