ニューヨークには、数多くのミュージアムがありますが、中でも個性的なミュージアムが、ブルックリン美術館です。ブルックリンには、世界中の様々な地域にルーツを持つ、人種、文化、宗教など多種多様な人々が住んでいますが、そんな土地柄、ブルックリン美術館では、多様性 (Diversity) に富んだ展示が特徴となっています。ブルックリン美術館は、現在、コロナのため閉館中ですが、写真ベースのストリートアートという一風変わったジャンルのアートの世界を切り拓いたフランス人アーティスト、JR の特別展とともに、もうひとつ、注目のアーティストで、古典西洋美術のモチーフにアフリカ系の人々が登場するという特徴的なスタイルで知られるブルックリン出身の ケヒンデ・ワイリー (Kehinde Wiley) さんの特別展などが今頃開催され盛り上がっているはずでした。3月に、これらの話題作品を見に行ってきたのですが、特に、JR の作品は、本当に無数の登場人物がアートになった、どうやってステージングしたの?とビックリさせられる作品が色々と展示されていました。
ブルックリン美術館を訪れたのは、3月初旬、まだニューヨークで 初の新型コロナウイルス感染者が確認されたばかりの頃 でしたが、短期間で世界が激変し、今となっては3月初旬も遥か昔のことのような感があります。
この日は、ブルックリン美術館恒例の First Saturday の夕方で、たくさんの人々がやって来ていました。
ブルックリン美術館の人気イベントとなっているのが、毎月第一土曜日に開催される、First Saturday です。夕方以降、入場無料となり、毎月、音楽、ダンス、アート教育など様々なテーマのイベントが開催され、盛り上がります。残念ながら、現在は、閉館中ということで、今月から、オンラインで、バーチャルファーストサタデー (Virtual First Saturday) が開催されることになりました。
JR: Chronicles
ブルックリン美術館の1階で、昨年の10月4日からはじまり、5月3日までの開催予定だった特別展が、JR: Chronicles です。JR は、フランス出身のアーティストで、人をテーマとした写真のストリートアートで知られています。そんなアーティストの写真、映像など様々な媒体の作品が展示されていました。中でも印象的だったのが、ニューヨークの街並みに、たくさんのニューヨーカーが登場する巨大な作品、The Chronicles of New York City です。
タイム (TIME) の表紙は、外出禁止中のパリをテーマとした、現在を象徴するような JR の作品が飾られていましたが、JR は、そんな時代や場所の雰囲気を捉えるのがとても上手なストリートフォトアーティストです。
FINDING HOPE, Paris, for @time pic.twitter.com/M1Xr273Jw0
— JR (@JRart) April 16, 2020
シューレアルな感じのニューヨークの街並みが描かれています。
この他、様々な人の面白い顔を捉えたパーソナルスナップも印象的でした。
人々の喜怒哀楽をとらえる表現も上手です。
街中に描いたグラフィティや、
こちらも本当にたくさんの人が登場している白黒の映写作品なども展示されています。
The Chronicles of New York City は、ウィリアムズバーグのイーストリバー沿い、ドミノパークでも展示されています。
ドミノパーク ブルックリン 絶景が楽しめる ウィリアムズバーグ ウォーターフロントの新くつろぎスポット Domino Park
ケヒンデ・ワイリー Jacques-Louis David Meets Kehinde Wiley
オバマ元大統領を描いた作品でも知られる、ブルックリン出身アーティスト、ケヒンデ・ワイリー (Kehinde Wiley) のミニ特別展、Jacques-Louis David Meets Kehinde Wiley も開催されていました。こちらは、1月24日からはじまった展示で、5月10日までの予定となっていました。
ケヒンデ・ワイリー (Kehinde Wiley) は、古典西洋美術の典型的なモチーフをアフリカ系の人々が登場するという作風で描くことで知られていますが、そんなアーティストの作品のインスピレーションの元となった、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、フランスで活躍した巨匠、ジャック=ルイ・ダヴィッド (Jacques-Louis David) の作品がお隣同士に展示されていました。
こちらが、ケヒンデ・ワイリー (Kehinde Wiley) の作品、Napoleon Leading the Army over the Alps (2005)。
こちらが、マルメゾン城所蔵 ジャック=ルイ・ダヴィッド (Jacques-Louis David) が描いた、ナポレオンのアルプス越えの作品、Bonaparte Crossing the Alps (1800–1) です。
ジャック=ルイ・ダヴィッド (Jacques-Louis David) は、ナポレオンに重用された、18世紀前半から19世紀初頭にかけてフランスで活躍したアーティストで、ルーヴル美術館のナポレオンの戴冠式などでもよく知られています。
この他、タイムズスクエアに飾られた、話題のケヒンデ・ワイリー (Kehinde Wiley) の彫刻作品の小さいバージョンの彫刻作品も展示されていました。
ケヒンデ・ワイリー (Kehinde Wiley) のタイムズスクエアでの騎馬像の展示の様子は、こちらです。
騎馬像といえば、もうひとつ、先住民アートの特別展、Jeffrey Gibson: When Fire Is Applied to a Stone It Cracks の展示も印象的でした。
この他、ブルックリン美術館のコレクションの中から女性アーティストに特化したユニークな企画展、Out of Place: A Feminist Look at the Collection も行われていました。
女性らしいアイデアや色合いの作品が色々展示されていました。
女性アーティストといえば、ブルックリン美術館で有名な作品の一つが、ジュディ・シカゴ (Judy Chicago) の ザ・ディナーパーティ (The Dinner Party) です。
毎年、3月は、女性月間となっていますが、The Dinner Party のギャラリーでは、こんなコンテンポラリーダンス作品も登場しています。クールなブルックリン美術館らしい、カッコいいダンサーたちを集めた素敵な作品です。
JR と Kehinde Wiley の特別展は、予定通りであれば、5月初旬で終了となりますが、その他の展示は、期間が長いため、おそらく再オープン後に見ることができると思います。またミュージアム巡りができる日が待ち遠しいです。
ブルックリン美術館の詳しい見どころとファーストサタデーは、こちらで紹介しています。