世界中から日々たくさんの人々が訪れる大都会ニューヨーク周辺には、JFK 空港、ラガーディア空港、ニューアーク空港と3ヵ所も空港があります。空港の数が多いというのは、もちろん便利なのですが、空港のサービスレベルとなると、残念ながらあまり自慢できるようなものではありません。世界中の様々な空港と比べると、ニューヨーク周辺の空港は、狭くて、設備も古く、チェックインエリアが大混雑となっている光景も日常的で、海外の空港をよく知る旅慣れた人からみたら、これがニューヨーク?!と驚くこともあるようなそんな残念な状態になっています。また飛行機の遅延が多いことでも有名で、ニューヨーク周辺の空港は残念ながら悪名高い空港が多いんです。
そんな中、昨日、このニューヨーク周辺の空港が、いよいよアップグレードされるというニュースがありました。ニューヨーク周辺の空港だけではなく、ニューヨークの重要な交通拠点のひとつで、世界的にも最も交通量の多いバスターミナルの一つである、ポートオーソリティーバスターミナルも新ターミナルを建設することが決定されました。
ニューヨーク周辺の空港や、ポートオーソリティバスターミナルなどのニューヨーク周辺の交通の要所を管轄しているのは、ワールドトレードセンターなども管理しているポートオーソリティー・ニューヨーク&ニュージャージー (Port Authority of New York and New Jersey) です。
そのポートオーソリティ NY&NJ が、今回、ニューヨーク周辺の3空港のうちの2つ、ラガーディア空港とニューアーク空港を、そしてミッドタウンにあるポートオーソリティー・バスターミナルを、100 億ドル以上もかけ、アップグレードすることを決定しました。
日本の空港のように魅力的なお店もたくさん入った美しく洗練された空港に慣れていると、現在のニューヨークのラガーディア空港や、ニューアーク空港の様子をみるとびっくりするかもしれません。例えば、以前、現アメリカ副大統領である、ジョー・バイデンさんが、ラ・ガーディア空港に降りたって発した言葉が、ここはまるで第3世界の空港だね、とのこと。おそらくみんなそんな気持ちが分かると思います。
昨年、発表された、トラベルに関する様々なデータを提供している Travelmath によるアメリカの空港ランキングでは、2015年のワースト空港は、なんとニューアーク空港でした。その次、ワースト2が、ラ・ガーディア空港。そして、JFK空港は下から8番目という、ニューヨーク周辺空港がみんな揃ってワーストランキング入りという不名誉な結果でした。
そんな状態なので、以前から、ラガーディア空港のリノベーションの計画がニュースになっていましたが、ニューヨークタイムズのこちらの記事にあるように、昨日、Port Authority New York & New Jerseyにより、予算の決議が行われ、ラガーディア空港だけでなく、ニューアーク空港、そしてさらに現在のポートオーソリティーバスターミナルに変わる、新バスターミナルの建設プロジェクトまで進めていくことが決定されました。この日認められた予算金額は、一日で決議されたものとしては、ポートオーソリティー史上最大だそうで、かなり本気のプロジェクトとなることが伺えます。
こちらのビデオでは、1930年代に完成し、老朽化しているラガーディア空港の将来のビジョンが説明されています。こんな風になると、素晴らしいですね。
またその前日にも、別のプロジェクトのための大きな予算案が通っています。1910年に完成したかなり老朽化が進んでいるハドソンリバー沿いのアムトラックとNJトランジットのトンネルを新しいものにするというプロジェクトで、こちらは、アムトラックと半々で、調査のために7000万ドルの予算が下りました。総プロジェクトとしては200億ドルもかかると言われています。
こちらの記事は、現状について詳しく解説しています。
ニューヨークの施設の老朽化がより目につくようになってきていますが、あらためて、驚かされるのは、ニューヨークという街は本当に昔からのものを大切に今までずっと使い続けてきていることです。例えば、ブルックリンブリッジができたのは、なんと1883年。そんなブルックリンブリッジや、ジョージ・ワシントンブリッジ、ガス、水などのインフラなどはすべて100年程度の年月を経ても、安定して使用可能という、建設当時の技術水準の高さには驚かされます。
プライベートの投資意欲が減退している中、それを補い、最も健闘しているのは、パブリックセクターですね。
先日、アメリカの大手引っ越し会社、United Van Lines により、発表された2015年の州間の人の流出量データによると、ニューヨークメトロエリアから出ていく人の数は、アメリカ内でもトップレベルでした。黄色が流出、青色が流入を表しています。
ちなみに、こちらが流出量トップ5。ニューヨーク周辺の州からの流出が目立ちます。
1. New Jersey
2. New York
3. Illinois
4. Connecticut
5. Ohio
流入量トップ5は、こんなふうになっています。
1. Oregon
2. South Carolina
3. Vermont
4. Idaho
5. North Carolina
ニューヨーク州という州のレベルでみるとそんな心配なデータがでているのですが、実はその中で唯一、特異点となっているのが、ニューヨークシティーなのです。昨日、発表された国勢調査によると、NYCの人口は初めて850万人を越え、史上最高に達しました。
昨年7月までの一年間で、こちらの記事にあるように、人口が最も増えているのは、クイーンズ、次いで、ブルックリンです。人口の増加率でいえば、ブロンクスが 1% で州内で最も高かったそうです。
アメリカ全体で言うと、昨年7月までは、シェールオイルブームが続いていた、テキサスのヒューストンとダラスエリアの人口増加率が目覚ましかったようですが、現在はどうでしょう。
全般的にいえることは、大都市への人口集中の傾向に変わりはないということです。
ますます人口が増え、旅行者も増えているというトレンドの中のニューヨークでは、周辺の老朽化しつつあるインフラストラクチャーをアップグレードしていくことは早急に求められていることだと思います。
ところで、変革の中枢となる、ポートオーソリティー・ニューヨーク&ニュージャージー (Port Authority of New York and New Jersey) は、ニューヨーク州とニュージャージー州のジョイントベンチャーのような組織です。そのため、一方の押すプロジェクトをサポートすると、もう一方の押したいプロジェクトも採用される力学が働き、またお互い責任を転嫁できる相手がいることもあり、コストや運営に関しては適当になる傾向がある気がします。巨大プロジェクトということで、その管理は大変で、最終的には、新ワールドトレードセンターのように、見積もりの倍のコストと倍の時間がかかることを想定しておくことが現実的かもしれませんね。
そういえば、ポートオーソリティーと言えば、管轄のワンワールドトレードセンターで、先日ちょっとしたハプニングがありました。先日、ベルギーで起こったテロ事件を追悼するライトアップが世界各地で行われ、ワンワールドトレードセンターも知事の命令によりライトアップを行ったのですが、ベルギーの国旗色は黒、黄、赤のはずなのに、なぜか、フランスの国旗色?に見えていて話題になっていました。
One #WorldTradeCenter lights up in WRONG colors as world mourns #Brussels #terrorist attacks… https://t.co/MfFlAa3a6A
— Drudge Report (@drudgeheadlines) March 23, 2016