メトロポリタン美術館は、昨年、2020年3月以来、約5カ月間の閉鎖期間を経て、8月下旬に再開しました。再開後、一部の狭いギャラリーを除き、ほとんどのギャラリーがオープンしていましたが、そんなメトロポリタン美術館で、唯一、閉鎖が続いていたのが、2階正面の古典西洋絵画のギャラリーです。2階正面にある19世紀以前の西洋アートギャラリーでは、2018年以来、スカイライトプロジェクト (Skylights Project) と呼ばれる自然光を取り入れて、ギャラリーを明るくするリノベーションが行われています。昨年3月の閉館前までは、左半分のギャラリーのみオープンしていましたが、右半分のギャラリーのリノベーションが完了したため、展示作品の入れ替えが行われ、昨年12月中旬から、多くの人に知られる古典西洋アートの巨匠の作品の数々が、”A New Look at Old Masters” という題名の下、再びオープンしています。
ニューヨークを代表するミュージアムである、メトロポリタン美術館は、まだまだウィズコロナ真っ只中ではありますが、ホリデーシーズン中、例年よりは圧倒的に少ないですが、たくさんのアートファンが訪れ賑わっていました。昨年、創立150周年を迎えた、メトロポリタン美術館ですが、3月中旬以来、ミュージアム史上最長となる約5ヵ月間もの間、閉館していました。再開後は、入館プロセスが変更 され、みんながマスク姿となり、以前とは少し違った雰囲気になっていますが、アートファンが集まり、メトロポリタン美術館 150周年を記念展 や ファッション展 などは、事前または朝早く入館しての予約が必須となっていて、売切れ必至の人気イベントとなっています。
再開後、一部の狭いギャラリーを除いて、ほぼ全てのギャラリーがオープンしていましたが、そんな中、唯一全てのギャラリーが閉鎖されていたのが、美術館の正面の階段を上ってすぐのところにある、1250年から1800年までの古典西洋アートのセクションです。
これは、コロナ以前から予定されていた、自然光をコントロールしてギャラリーに取り入れる、スカイライトプロジェクト (Skylights Project) と呼ばれる、2018年から4年半がかりで行われているリノベーションによるもので、右半分のリノベーションが行われたフェーズ1 が終了し、作品の移動が行われ、昨年の12月12日から、“A New Look at Old Masters” というタイトルの下、明るくなったギャラリーで、ブリューゲル、ルーベンス、カラバッジョ、ベラスケス、ゴヤをはじめ西洋アートの巨匠たちの数多くの作品が、再び公開されています。入口付近には、メトロポリタン美術館が豊富なコレクションを誇る、18世紀のイタリア人アーティスト、ティエポロの巨大な作品の数々が飾られています。
フェーズ1 の時に公開されていた左半分のギャラリー(以下 MAP 赤い部分)が今度は非公開となり、フェーズ2 でリノベーションを終えた、右半分のギャラリーが公開されています。
今回のリノベーション、スカイライトプロジェクトの中心となっているのが、天井部分です。メトロポリタン美術館のギャラリーは、以前は、少し薄暗い印象でしたが、日射量の異なる季節に応じて、自然光を調節しながら、室内に取り入れることができるようになり、ギャラリーが明るくなり、作品もより美しく見えるようになっています。カップルや友人同士、家族などで訪れている人が多く、また一人でふらっとやって来ている人も結構いて賑わっていました。
展示方法も、これまでは、時代・地域別が通常でしたが、”A New Look at Old Masters” と題された新しい展示は、それぞれのギャラリー毎に、テーマに基づき関連性のあるアーティストや作品が地域を越えて並べられています。アートのカテゴリーの他、肖像画、静物画、神話など様々なテーマでキュレートされています。
正面を入ってすぐの大きなギャラリーは、17世紀バロック期のローマがテーマとなっています。カラバッジョ、グエルチーノ、アンニーバレ・カラッチ、グイド・レーニらイタリア人アーティストをはじめ、ベラスケス、リベラ (Jusepe de Ribera)、ムリリョら、イタリアのバロックに影響を受けたスペインのアーティストの作品も合わせて、展示されています。
最奥にある巨大なギャラリーは、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、ティントレットらベネチア派をはじめ、後期ルネサンス、マンネリズムの巨匠の作品が展示されています。
こちらは、ルネサンス期のギャラリー。ボッティチェリ、ギランダイオら様々なアーティストの作品が展示されています。
ルネサンス以前、Duccio らシエナ派らの金ぴかの宗教絵画のギャラリーもあります。フィレンツェのウフィツィ美術館 が専門のエリアです。
女性的な優美な雰囲気のフランスのギャラリー。
ドラマとかでもこんなシーンがありますが、最近美術館のギャラリーでは、ニューヨーカーたちが久しぶりにお友達と会ってお話する場所としても人気になっています。
こちらは、フランスで18世紀中頃に隆盛だったロココのギャラリー。ロココの代表的アーティスト、フラゴナール (Jean-Honoré Fragonard) の作品もずらりと並んでいます。
18世紀後半から19世紀初頭にかけて新古典主義のギャラリーでは、フランス人アーティスト、Jacques-Louis David、イタリア人彫刻家、Antonio Canova らの作品が展示されています。
初期オランダ絵画のギャラリーでは、オランダ絵画の創始者とも言える、15世紀前半に活躍した Jan van Eyck や Rogier van der Weyden らの作品が並んでいます。肖像画と宗教画が中心です。
その後、15世紀後半に活躍した Hans Memling や David Gerald ら、15世紀後半から16世紀初頭にかけてオランダで活躍した巨匠の宗教画の数々が展示されているギャラリーです。
オランダ絵画といえば、風景画が有名ですが、そんな後の風景画アーティストたちに影響を与えたのが、ブリューゲル (Pieter Bruegel the Elder) や Joachim Patinir です。こちらのギャラリーでは、両アーティストの作品が並んで展示されています。
オランダの黄金時代に活躍したレンブラントやフェルメールの作品は、地下のギャラリーで展示されています。
ルーベンスのライオンハントなど神話をモチーフとした作品が集まっているギャラリー。
17世紀のヨーロッパ絵画のギャラリーでは、フランダース地方出身で、スペインやイギリス王室がパトロンだった、ルーベンスとアンソニー・ヴァン・ダイクの作品が集合。その後のイギリスアートに大きな影響を与えたアーティストです。
同ギャラリーでは、フランスやスペインで17世紀に活躍したアーティストの作品も展示されていて、スペインの誇る巨匠、ベラスケスの作品の数々も展示されています。
18世紀にスペインで活躍したゴヤの作品の数々もずらり。ゴヤは、ベラスケスと共に、スペイン王室のコレクションを展示している マドリードのプラド美術館 で最もフィーチャーされているアーティストです。
18世紀イタリア絵画のギャラリーでは、写実的な作品で知られる、カナレット (Canaletto) の作品が集合。たくさんの天使が舞っているモチーフが有名なティエポロ (Domenico Tiepolo)、詳細に描いたギャラリーの絵をモチーフにした作品で知られる、ジョバンニ・パオロ・パンニーニ (Giovanni Paolo Panini) らの作品なども素晴らしいです。
“A New Look at Old Masters” は、リノベーションが完了する 2022年春まで開催されます。その後は、全てのギャラリーを使って展示されることになります。
メトロポリタン美術館の西洋美術については、こちらで詳しく紹介しています。
西洋美術好きの人は、一階のヨーロッパの彫刻ギャラリーも訪れてみるのもおすすめです。今シーズンは、メットのクリスマスツリー が、例年とは違う場所に飾られて雰囲気が変わっています。
西洋アートを鑑賞しているだけでもあっという間に時間が経ってしまいますが、メトロポリタン美術館は、その他、世界各地の様々な時代、ジャンルの膨大な作品の数々を見ることができるおすすめミュージアムです。
メトロポリタン美術館の全体像は、こちらをどうぞ。
夏の終わりの再開直後は、こんな感じでした。