ニューヨークで、旅行者にあまり知られていないかなという穴場の美術館のひとつが、クイーンズのロングアイランドシティーにあります。あの有名なニューヨーク近代美術館 (MOMA) の別館で、コンテンポラリーアート部門となっている MOMA PS1 です。
MOMA PS1 のお庭には夏らしい巨大な涼しげなアートが飾られ、また、MOMA PS1 らしいクールな本屋さんや、おみやげ屋さんもあり、ゆったりとした時の流れの楽しめるミュージアムです。
この MOMA PS1 は、MOMA 入場時のチケットを持って行くと共通券で訪れることができます。
また、ニューヨーカーであれば無料で入場できるということもあり、ふだんニューヨーカーが多く、みんなふらりとやってきてくつろいでいます。
MOMA PS1 は、クイーンズ、ロングアイランドシティーの内陸側の少し不便な位置にありますが、なかなかユニークなコンセプトのミュージアムです。その起源は、1971年にまで遡り、ニューヨークが危険で人口も減っていた時代に、廃棄された建物をアーティスト達のスタジオや展示会場として利用しようというプロジェクトがスタートしたのがきっかけでした。
そんなプロジェクトにピッタリだったのが、かつて学校だった建物です。古い校舎は改築され、現在でもミュージアムとして使われています。PS1 は、近代美術館として有名なニューヨーク近代美術館 (MOMA) のコンテンポラリーアート部門として合併し、MOMA PS1 として現在に至っているミュージアムです。
かつては校庭だったと思われるアウトドアスペースは、現在真っ白な世界に包まれて、こんな幻想的な雰囲気になっています。真っ白な布と真っ青な空がマッチする作品は、お天気のいい日は特に綺麗です。時々涼し気に所々からミストが噴き出したりして、ちょっとドキドキさせてくれる作品です。
そんな作品は、実は今年、2017年の Young Architects Program で大賞を受賞した作品だそうです。MOMA PS1 では、夏の間、毎週土曜日には音楽の特別イベント Warm Up が開催されていて、その会場となっています。
現在、MOMA 本館の方では、こちらのデザインも含め Young Architects Program の最終選考に残った作品の模型が展示されています。
MOMA PS1 は、昔学校だった建物なので、時々それらしい雰囲気が感じられます。入り口を入ってすぐの廊下には、ちょっとおもしろい仕掛けがあります。それがここ。子供が何かに夢中になっています。
よく見てみると、古い廊下の木の板目の穴がそのまま生かされていて、アートな仕掛けがされています。
そして、入ってすぐの広場には、キッズたち歓迎のアート作品があります。このアートはすっかり子供たちのジャングルジムと化していますが、大人気の作品です。
かつての学校の廊下の雰囲気が残りノスタルジックな感じ。
いかにも学校らしい階段にもちょっとしたアートが添えられています。
映像アートが多い今日この頃ですが、こちらは映像アートではなくシミュレーションなんだそうです。Ian Chengさんによる Emissaries と題された展示です。ゲームエンジンを利用して作られたというシミュレーションアートで、どんな映像が作り出されるかは、前もって決まっていないのだとか。
こちらでは Ian Cheng さんがシミュレーションアートとは?を簡単に説明をしてくれています。どんなシミュレーションなのか詳細が気になる所ですが、面白いコンセプトです。
こちらは、コンテンポラリーアーティストとしては、逆に珍しい、印象派の影響を感じさせる風景画の作品群です。特にニューイングランド地方などイーストコースト周辺の風景の作品が多いです。これら風景画を専門としているアーティストさん、Maureen Gallace さんの展示で “Clear Day” です。歴代の作品が並んでいて、作風の変化がわかり、このアーティストさんがどのように自分らしいアートを確立していったか、自分の中でのブームなどが見られ、興味深い展示となっています。
毎年のように海を訪れては波の絵を描いていたようで、そんなコレクションもおもしろいです。
ふんわりとした綺麗な色使いの優しい雰囲気の世界観で結構好きです。
統一した小さなキャンバスの絵が印象的で、このアーティストらしいアピールポイントになっています。真っ白なギャラリールームに飾られた優しい世界観のアートの世界が本当に綺麗で居心地がいい感じです。
窓から入る光がとてもいい雰囲気
独特の世界のアートが各お部屋に展示されていて、ある種、学校の文化祭みたい?!
ここは今流行りのバーチャルリアリティ、VRアートの体験コーナー。
中国人アーティスト、Cui Jie さんの近未来デザイン風の作品もなかなか印象的。
MOMA PS1 の歴史を紹介する展示コーナーもあります。
この日は、本当にお天気もよく、美しい雲が空に広がっていたのですが、そんな日ならではの特に素晴らしいアート作品となっていたのがこちら。James Turrell さんの Meeting です。天井に四角く穴が開いていて、空をみる、それがアートになるというアイデア賞と言えるコンセプトアートですが、自然と光の美しさを感じられる面白い作品です。
個室になっていて、壁の周囲のベンチから、穴の開いた天井を眺められるようになっていますが、寝っ転がって空を眺めているカップルもいました。みんながそれぞれ感じるままにアートを楽しむことができるこの自由スタイルが好きです。James Turrell さんというと、実は 金沢21世紀美術館 にも作品があります。
レンガのお部屋。実はただのお部屋ではなくこれもアート。
ストローがこんなに散りばめられていたりと、こちらも存在する空間とコラボした作品となっています。
MOMA PS1 には、カジュアルな雰囲気のミュージアムカフェもあります。
ミュージアムのギフトショップは思いの他いつも人気で、他ではあまり見かけないようなおもしろい本が色々並んでいたりして楽しめます。
ニューヨークに住んでいることがわかる証明(運転免許証など)を持っていけば、ニューヨーカーは無料で入場できます。また、それ以外でも MOMA に入場した後、2週間以内であれば無料で入場することができます。ただし、土曜日は特別な音楽イベントのため別料金となります。
普段着のニューヨーカー気分が味わえるミュージアムとして訪れてみても楽しいと思います。
MoMA PS1 の 2019年夏の展示の様子は、こちら。
MoMA PS1
22-25 Jackson Ave, Long Island City, NY 11101 地図
定休日:火・水
営業時間:12-6PM
入場料:10ドル (MOMA のチケットを持って行くと共通券で入場できます)
MOMA PS1 では、毎年、ブックフェアなど様々なイベントも行われます。
マンハッタンにある有名な MOMA(モマ)本館はこちらです。