ニューヨークのミッドタウンにある、ペンシルバニア駅 (Pennsylvania Station)、通称 ペンステーションは、北米で最も利用者が多い駅として有名で、地下鉄や、アムトラック、LIRR、NJTransit など様々な交通機関が集まるハブステーションとなっています。そんなニューヨークのペンステーションは、歴史的な趣もなく古い雰囲気の場所となっていて、薄暗い21世紀とは思えないガッカリなデザインの駅としても有名でした。初めてやって来た人はここが本当にニューヨークかと驚いてしまうような場所だったのです。そんなペンステーションですが、2017年から、$1.6 billion を投じて拡張工事をずっと行っていました。かつてニューヨークの郵便局の中心的存在だった趣のある隣接する歴史的な建物、James A. Farley Building まで駅が拡張され、アムトラックとLIRRのターミナルを中心とした最新の複合施設、モイニハントレインホール (Moynihan Train Hall) が、オープンしました。ホール内には、中央の時計をはじめ、様々なアート作品も飾られていて、明るい現代的な空間になっています。
ニューヨークでのがっかりスポットの代表に挙げられることが多かったのが、通勤の人たちだけでなく、旅行者たちも利用する、アムトラックや、JFKやニューアークなどの空港からの列車も到着する、ペンステーション (Pennsylvania Station) です。ミッドタウンのメイシーズやエンパイアステートビルから近い場所にあります。
ペンステーションはもともと歴史的な趣がない上に古さが感じられ、薄暗く、デザインも複雑で分かりにくい、と気になる所を挙げたらきりがないほど不評の駅でした。そんなペンステーションの駅が、今回、大拡張され、真新しい駅の空間、モイニハントレインホール (Moynihan Train Hall) が完成し、2021年1月1日にオープンしました。
モイニハントレインホールが誕生したのは、ペンステーションの西側、8th Ave. と 9th Ave. の手前、31th St と 33th St で囲まれた巨大な歴史的なボザール様式の建物、James A. Farley Building 内です。James A. Farley Building は、かつてニューヨークの中心的存在だった郵便局があった建物です。
モイニハントレインホールへは、ペンステーションの東側の 7th Ave からコンコースを通って向かうこともできます。7th Ave 沿いには、新しい入口も登場しています。
エンパイアステートビルの方角の空に向かって伸びるような開放感のあるお洒落なエントランスになりました。
エスカレーターを下り、途中、LIRR のチケット売り場やお店屋さんがあるコンコースを真っ直ぐ進んで行くと、地下鉄の駅があり、その奥に、モイニハントレインホールがあります。LIRR のチケット売り場が移動していたり、電車案内の掲示板がなくなったりしていて、色々と変わっているところがあります。このコンコースは、まだほぼ以前のままですが、今後リノベーションされるようです。
モイニハントレインホール (Moynihan Train Hall) は、かつてニューヨーク州の上院議員で、1990年代に今回のプロジェクトを推進した、Daniel Patrick Moynihan にちなんで名付けられました。建築ファーム、SOM がデザインし、2017年から工事が行われていました。モイニハントレインホールができた場所は、かつてニューヨークの郵便の中心的存在だった James A. Farley Post Office Building の中央の郵便仕分けエリアです。地下には、電車のターミナルがあります。モイニハントレインホールは、ワールドトレードセンターと同じ Port Authority of NY & NJ という事で、高級感のある大理石が使用されていたりと雰囲気が似ています。
モイニハントレインホールは、アムトラックとロングアイランド鉄道 (LIRR) のためのホールで、切符売場があります。電車の案内も分かりやすく表示されています。
1階には、LIRR、2階南側にアムトラックの待合室があります。待合室の上には、巨大な電光掲示板があり、ニューヨークの名所をはじめ、色々な映像が流れていました。
この他、ホールには、以前、ブルックリン美術館 で見かけたような Kehinde Wiley さんの天井画をはじめ、様々なアート作品が隠れています。
モイニハントレインホールのアートと建築の見どころ! 明るい美しい空間にパブリックアートが点在するニューヨークの最新スポット
アムトラックの荷物受取所など、ミュージアム風なデザインです。
2階には、リテールスペースやアムトラックの待合室があり、オフィススペースへと繋がっています。2階からは、ホール全体がよく見渡せるので、たくさんの人が写真撮影にやって来ていました。
モイニハントレインホールは、駅としてだけでなく、オフィスや、リテール & レストランも入ります。既に、Facebook がリース契約を結んでいます。
1階には、2021年秋には、モイニハン フードホール がオープンします。
既に、スターバックスは、オープンしていて、マグノリアベーカリー もオープン予定になっています。
ニューヨークの地下鉄 A,C,E の駅や、NJTransit、アムトラックの深夜の時間帯 (1am to 5am) は、これまで通りの古い方のペンステーションを利用することになります。新ホールに到着するか、これまで通りのペンステーションに到着するかで全然イメージが変わってしまいそうです。
ちなみに、建物の東側にある外側の階段を上っていくと、これまで通り郵便局があります。
ニューヨークのペンステーションは、同じく、ニューヨークを代表する駅である、グランドセントラルターミナルと比較すると、趣がなくデザイン的にもかなり見劣りがしてしまう駅です。実は、もともとペンステーションは、当時の著名建築家、McKim, Mead, and White によりデザインされた、ボザール様式 (Beaux-Arts style) のとても素晴らしい巨大な建物でした。鉄道の黄金時代だった1910年にオープンし、第二次世界大戦以降、鉄道人気が飛行機と車に取って代わられていき、残念ながら、1960年代にもともとあった立派なペンステーションの建物が取り壊されてしまいました。
その後、新たにペンステーションとして建設されたのが、マディソンスクエアガーデンとオフィスビルで、駅としての機能は、地下の迷宮のような感じのスペースに追いやられ、全体的にチープな感じの造りになってしまっていたものが今まで続いていたのです。
こちらの映像では、ペンステーションの歴史について紹介しています。
今回、リノベーションされた郵便局のボザール様式の建物も、旧ペンステーションとほぼ同時期に、McKim, Mead, and White にデザインされ、建設されたものです。
もともとのペンステーションのスペースもリノベーションが行われていますが、こちらは大規模ではなく、コンコースを広くしたり、構内を分かりやすく変更するのみになっていますが、かつての豪華な建物の再現を希望する声も多いようです。
ペンステーションの東側にはヘラルドスクエアやエンパイアステートビル、西側には、ニューヨーク最新の開発プロジェクト、ハドソンヤード があり、ペンステーション周辺を魅力あるエリアに変身させることが出来れば、さらに 34th St 周辺が発展していくのではないかと思います。
人通りの少なかった、2020年は、建設プロジェクトには、好都合だったようで、ペンステーションの他、同じく老朽化が進んでいた、ラガーディア空港も大規模リノベーション工事が進んでいて、2022年に完成予定になっています。そちらは、既にリノベーションを終えたターミナルBがオープンしています。地下鉄L線のイーストリバーのトンネル工事も完了しています。ニューヨーク州のインフラプロジェクトの計画は、こちら (PDF) で紹介されています。