パリには、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した世界的に有名な彫刻家、オーギュスト・ロダン (Auguste Rodin) のミュージアムであるロダン美術館 (Musée Rodin) があります。軍事博物館やナポレオンのお墓のある Les Invalides の近くにある、かつてロダンのアトリエがあった豪邸がミュージアムとなっており、館内、そして庭園で、素晴らしいロダンの彫刻のコレクションを見ることができます。パリの中心にありながら、郊外のお屋敷のように広いフランス風庭園も楽しめるなど見どころも多く、ロダン好きにおすすめの美術館です。
ロダン美術館となっているのは、セーヌ川左岸パリ7区に、1723年から1732年にかけて、建設された Hôtel Biron です。完成後、所有者が次々と変わり、途中、学校として使用されていた時期もあるようですが、20世紀初頭には、アーティスト達のアトリエとなっていたそうです。マティス、ジャン・コクトーらのアトリエがあり、1908年からロダンもここにアトリエがありました。後に、フランス政府所有となり、ロダンが、この建物が自身の作品の美術館となることを条件に、数多くの作品を寄贈したことにより、1919年にロダン美術館がオープンしました。
美術館に入場すると、まず出迎えてくれるのが、ロダンの最も有名な作品、考える人 (The Thinker) です。
この他、上野の国立西洋美術館の外にも飾られているロダンが生涯をかけて製作した作品、ダンテの神曲の一場面を描いた地獄の門 (The Gates of Hell)。
イギリスとフランスが戦った100年戦争時の様子を描いたカレーの市民 (The Burghers of Calais) など有名な作品の数々が飾られています。
そして、いざお屋敷の中へと入ります。
館内は、2フロアから構成されており、1階、2階共に、ロダンの彫刻が中心に展示されています。合わせて、ロダン自身がコレクションし所有していた、ゴッホやモネ、ルノアールなどの絵画作品も展示されています。
ロダンの有名なモチーフの作品群に加え、ロダンのパーソナルな作品も色々と垣間見ることができる美術館です。
オーギュスト・ロダン (Auguste Rodin) は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、フランスで活躍した彫刻家で、近代彫刻の父とも言われています。「考える人」など著名なモチーフは、世界の様々な美術館や大学で飾られており、世界で最も知られる彫刻家です。19世紀、フランスのアーティストにとって登竜門だった国立美術学校 (École des Beaux-Arts) に入学できず挫折も経験しますが、その後、著名な彫刻家の下でキャリアをスタートさせます。
こちらは、長年連れ添い、ロダンの死の直前に妻となった Rose Beuret をモデルにした、ロダンの初期の頃の作品です。1865年、ロダンが25歳の頃の作品です。
その後、ミケランジェロなどイタリア・ルネサンス期の彫刻などに影響を受けながら、長い年月をかけ、独自のスタイルを確立していきます。
こちらは、古代ローマの戦争の神、ベローナを描いた1879年の作品。
ロダンに転機が訪れたのが、1880年。当時、建設予定だった国立美術館のための製作依頼を受けたことにより、それ以降、経済的にも安定し、美術館のための地獄の門の製作に励む一方、自由な創作活動に集中することができるようになりました。ロダンのよく知られる作品のほとんどは、40歳以降に製作されたものです。
こちらの有名な The Kiss は、1882年の作品です。
こちらも有名な The Three Shades。1886年の作品です。この作品は、館内の他、庭園にもあります。
ロダンが生涯に渡り製作を続けた地獄の門に登場するキャラクターとして1904年に完成した「考える人」も庭園の他、館内にも展示されています。
こちらも、地獄の門に登場する、THE PRODIGAL SON。1905年の作品です。
ロダンの彫刻と一緒に、18世紀に建てられたお屋敷、Hôtel Biron の素敵な雰囲気も楽しめます。
ロダンと言えば、画家という印象はありませんが、実は、彫刻の他に絵画も描いていたようです。ロダンの風景画も色々と飾られています。
Crouching Woman(1880–1882)。
有名なロダンのバルザック像 Balzac(1892-1897)。
ロダン美術館には、実はロダン以外の作品も展示されています。そんな中で、最も印象的なのが、、Camille Claudel のドラマチックな作品、Age of Maturity。Camille Claudel は、ロダンのスタジオで働いていた女性彫刻家です。ロダンの愛人でもあったようですが、1898年に決別してしまいます。この作品には、そんな二人の関係が、映し出されているのかもしれません。こちらの作品は、オルセー美術館 にもあります。
ロダンの収集した歴史的な彫刻も展示されています。中でも、目を惹くのが頭部や手足、胴体など数多く並ぶ体のパーツです。作品で人体の各部分を表現するために、ロダンが詳細に研究していた様子が伺えます。
ロダンは一つの作品を完成させるために、何度もその部分部分を製作していた様子もうかがえます。
2階からは、美しいフランス庭園の様子が一望できます。
銅以外にも様々な材質で作られた彫刻があります。こちらは、テラコッタやワックスなど変わった材質を組み合わせ作られた1894年の作品、Sleep。
こちらは、よじれ具合が絶妙な1896年の石膏の作品、Meditation or The Inner Voice。
こちらも1896年、女性の頭にパルテノン神殿が乗っている面白い大理石の作品、Pallas with the Parthenon。
2本の右手が組み合わさった The Cathedral。石を削って作られた1908年の作品です。
2階には、ロダンが所有していたゴッホ、モネ、ルノアールなどの作品も飾られています。有名になる前のゴッホの作品にも目をつけていたようです。
あの「叫び」で有名なムンクが描いた、ロダンの「考える人」です。
こちらの映像は、ロダンの亡くなる1917年の数年前、1915年に、当時のスタジオだったこの建物で撮影された貴重なものです。
館内を見終わったら、広々とした美しい庭園を散策してみるのもおすすめです。
庭園にも、ロダンの作品が点在していて、庭園からは美しいお屋敷の景色も楽しめます。庭園のカフェで一休みすることもできます。
帰る前には、ミュージアムショップにもちょっと立ち寄ってみます。
ロダン美術館の見学所要時間は、大体2時間程かかります。
ロダンの彫刻は、もちろんですが、お屋敷と庭園も素晴らしく合わせて楽しめます。
ロダン美術館 Musée Rodin
77 Rue de Varenne, 75007 Paris, France 地図
開館時間:10:00-17:45
休館日:月曜日
パリ郊外、Meudon にあるロダンの家だった場所も美術館 (THE MUSÉE RODIN IN MEUDON) となっています。パリでは、オルセー美術館 にもロダンの作品がまとまって展示されています。
日本の国立西洋美術館の周りにもロダンの作品が飾られていますが、アメリカの美術館や大学でも、ファインアートの象徴としてロダンの作品が飾られていることが多いです。また、フィラデルフィアには、世界有数のロダン美術館があります。
ニューヨークの メトロポリタン美術館 やサンフランシスコの リージョンオブオナー美術館 などでも、ロダンの作品が数多く展示されていますので、訪れる機会があれば是非おすすめです。
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