ロンドンの人気国立ミュージアムの一つが、ハイドパークの南側、サウスケンジントンにある、自然史博物館 (Natural History Museum London) です。自然や生物などの自然史好きはもちろんですが、博物館があるのは、テラコッタが美しい19世紀ヴィクトリア様式の巨大な教会のような圧倒される建物で、建築好きにもおすすめです。中に入ると、美しい巨大な空間が広がっていて、シロナガスクジラが出迎えてくれます。イギリスで自然史と言えば、進化論のダーウィンが一際有名ですが、ロンドンの自然史博物館には、そんなダーウィンにちなんだ展示も色々あります。また、恐竜や大型哺乳類、宝石と鉱物、地球と人類の進化、火山と地震など、様々な展示が行われており、見どころいっぱいのロンドンで見逃せない博物館です。
ロンドン自然史博物館とは
ロンドンの自然史博物館は、大英博物館の分館として、1881年に誕生した生物学と地学に特化したミュージアムです。分館、独立後も大英博物館と呼ばれていたそうですが、1996年に自然史博物館と正式に名称が変更されました。博物館があるのは、1851年にロンドンで開催された万博、The Great Exhibition が開催されたサウスケンジントンで、Exhibition Road 沿いには、自然史博物館の他、ヴィクトリア&アルバート博物館 (Victoria and Albert Museum) や、科学博物館 (Science Museum) もあります。これらは全てイギリスの国立のミュージアムのため、入場料は全て無料で入館することができます。ただし、特別展だけは別料金となっており、例えば、自然史博物館で現在開催されている Wildlife Photographer of the Year などは有料の特別展となります。
17世紀後半以降、啓蒙思想の盛んだったイギリスは、ニュートンをはじめ数多くの著名な科学者や発明家を輩出しています。生物学で最も有名な学者の一人が、進化論を発表した、イギリスの生物学者ダーウィンです。博物館の入口を入って、すぐにある大きなホールの奥には、イギリスの誇る生物学者、ダーウィンの彫刻が飾られています。また館内には、ダーウィンがビーグル号の旅で持ち帰ったとされる様々な標本や、1859年に出版された有名なダーウィンの『種の起源』の初版なども保管されています。
ロンドンの自然史博物館は、下図のように、オレンジ、ブルー、グリーン、レッドの4つのゾーンに分かれています。主な見どころは、入口すぐの博物館の貴重な標本と歴史が紹介されている緑のエリア、恐竜や巨大哺乳類の展示されている青のエリア、そして地学の赤のエリアです。時間があれば、オレンジ色のダーウィンセンターまで足を運んでみるのもいいと思います。
外観からは、かなり広い博物館に見えますが、展示エリアはそこまで広くはなく、駆け足で2時間程、ゆっくり見て回ると半日程かかります。
(Natural History Museum Floor Map – PDF)
Hintze Hall
世界の様々な地域から集められた多種多様な標本が保管される、19世紀のイギリスの雰囲気が感じられる、ロンドン自然史博物館の中心となるのが、巨大なエントランスホール Hintze Hall です。
自然史博物館 Hintze Hall 最上階からは、ホールの全体が見渡せます。2017年から、巨大なシラナガスクジラの全身骨格の展示がされています。それ以前は、1905年からディッピーと呼ばれる、ディプロドクス (Diplodocus) という恐竜の全身骨格モデルの展示がされていましたが、現在このディプロドクスは、イギリス国内各地のミュージアムで巡回展示されています。最上階に向かう途中には、巨大なセコイアの木も見られます。
ダーウィンによる自然淘汰による生物の進化論は、今でも信じることができない人もいるぐらい、当時はとても革新的な説でした。否定や批判の声も大きかったようですが、そんな時にダーウィンの説を擁護したのが、当時の著名生物学者、トマス・ヘンリー・ハクスリー (Thomas Henry Huxley) でした。
ハクスリーや オーウェン の像が最上階に飾られています。
Treasures (Cadogan Gallery)
自然史博物館の入口から入り、正面ホールの奥にあるダーウィン像の両脇の階段を上って裏手へ行くと、そこには自然史博物館の貴重な標本を集めた小部屋、Cadogan Gallery があり、Treasures と題された展示が行われています。
Cadogan Gallery には、初代館長となった生物学者、古生物学者である、リチャード・オーウェン (Richard Owen) の肖像画が飾られており、自然史博物館の誇る22点の貴重な標本が展示されています。リチャード・オーウェンは、生物学や地学の標本を大英博物館から分離し、独立したミュージアムにするように主張した人物で、1841年に、現在、恐竜として知られる種の生き物を、Dinosaur と命名したことでも知られています。
大英博物館や自然史博物館のコレクションの大元は、ハンス・スローン準男爵 (Sir Hans Sloane) の収集品コレクションの遺品によるものでした。そんなコレクションの中のひとつがこちら、美しい彫刻が施された巨大なオウムガイです。収集した膨大なコレクションの中でも、ハンス・スローン準男爵が特に気に入っていたものだそうです。この他、ロンドン塔で飼われていたライオンの頭蓋骨など大変珍しい標本の数々が集まっています。
Treasures のギャラリーがあるフロアには、正面右手には鉱物、左手には鳥類の展示があります。
ロンドンの自然史博物館のミュージアムの建築は、まるでゴシック大聖堂のような荘厳な19世紀ヴィクトリア様式の建物で、教会が科学のミュージアムに置き換わったかのような雰囲気です。大聖堂の側廊にあるような小さなスペースには、キリンやマンモスの化石など自然科学の標本が展示されています。
The Vault
正面右手奥には、The Vault と呼ばれる珍しい宝石や鉱物が展示されているギャラリーがあります。
Ostro stone と呼ばれる世界最大のブルートパーズも展示されています。何とその重さは、2kg もあるそうです。
恐竜
ロンドンの自然史博物館で見逃せない人気コーナーが、恐竜のギャラリーです。恐竜ギャラリーがあるのは、ブルーゾーンで、正面左手の廊下を奥へ進んで行った場所にあります。巨大なティラノサウルスとトリケラトプスの頭部の化石が出迎えてくれます。
さらに進んで行くと、迫力ある動く T-Rex (ティラノサウルス)の人気の写真撮影スポットがあります。
ニューヨークの アメリカ自然史博物館の特別展、T-Rex でもお馴染みの、羽毛の生えた恐竜も展示されています。恐竜と言うとトカゲのような皮膚をイメージしてしまいますが、近年、羽毛が生えていたと考えられる化石が発掘されています。
フロアいっぱいの高さの巨大な化石も展示されています。
哺乳類
巨大な恐竜ギャラリーと並んで壮観なのが、シロナガスクジラ、ゾウ、サイなどの巨大な哺乳類の模型が集まっているホールです。バルコニーに上って見学することもできます。
ヒューマンバイオロジー
人体の不思議や神秘について紹介するヒューマンバイオロジー(Human Biology) のコーナーもあります。
以前、ニューヨークで期間限定で開催されていた月のミュージアムの展示が、ロンドンの自然史博物館でも、2019年5月17日から2020年1月1日まで、ブルーゾーンの Jerwood Gallery で展示されています。迫力ある巨大な月はとても美しく神秘的でした。
古代海洋生物
正面右手に進んで行くと、古代海洋生物の化石が飾られています。廊下の一番奥のギャラリーでは、”Wildlife Photographer of the Year” が、2019年6月30日まで開催されています。長野の 地獄谷野猿公苑 を一躍世界的に有名にしたサルが温泉に浸かっている作品が登場したのが、この展示会です。
はい回る小動物
廊下沿いには、昆虫、ムカデ、クモ、カニなどの小動物を紹介するギャラリー、Creepy Crawlies があります。
鳥類
現在は、絶滅してしまっていますが、かつてモーリシャス島に存在したとされる飛べない鳥、ドードー鳥をはじめ、様々な鳥の模型や剥製、絵画などが展示されています。ニューオーリンズのオーデュボン公園 (Audubon Park) などにもその名を残すアメリカ人の自然研究家で、The Birds of America で知られる John James Audubon の絵画なども展示されています。
アースホール
東側、正面右手奥にあるのが、地学を中心とするレッドゾーンです。アースホール (Earth Hall) と呼ばれる広々としたグラウンドフロアでは、人類の進化の展示や2003年にアメリカのワイオミング州で全身骨格がほぼ揃った形で発見された、ステゴサウルスの化石が飾られています。グラウンドフロアの中央には、最上階まで続く、幻想的なエスカレーターがあります。
火山と地震
エスカレーターの終着点の最上階には、火山や地震のコーナーがあります。火山のコーナーには、西暦79年に起こったベスビオス火山の噴火により埋もれたポンペイ遺跡に残されていた人と犬のキャストなどが展示されています。
地震コーナーでは、日本のスーパーを舞台に、地震を体験してみることができるようになっています。
最上階には、この他、風雨、氷結、雷など地表での様々な自然現象とその結果残された過去の生物の足跡などが紹介された展示、Relentless Surface もあります。
From the Beginning
一つ下のフロアでは、宇宙誕生から地球における生物の進化までの長い期間に渡る歴史を紹介する展示、From the Beginning が行われています。
気の遠くなるような遥か昔の生物の化石なども展示されています。
Earth’s Treasure
From the Beginning と同じフロアにある、Earth’s Treasure と題された展示では、宝石や、貴金属、鉱物などの展示が行われています。
The Valut 同様、こちらも多種多様で様々な色の鉱物の数々がとても美しく展示されています。
Darwin Center
ロンドンの自然史博物館で最も新しいエリアが、正面左手奥のオレンジ色のダーウィンセンターです。ここには、膨大な数の標本が保管され、その一部が展示されています。
ダーウィンセンターには、巨大なさなぎのような面白い形をした8階建ての展示スペースがあります。エレベーターで最上階まで行き、そこから順に降りてくる間に、植物や昆虫に関する様々な展示が行われています。
ロンドンの自然史博物館の見学の最後は、ミュージアムのギフトショップを覗いてみます。可愛いセンスのいい商品が色々揃っています。
自然史博物館 ロンドン Natural History Museum
Cromwell Rd, South Kensington, London SW7 5BD, UK 地図
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ロンドン旅行の様子は、こちら。