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マイナス金利の影響って?!行き着く先はベーシックインカム?世の中が大きく変わっていく?!

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先週、誰もが予想しなかった日本の金利政策を日銀が発表し、世界を驚かせました。それは、マイナス金利の導入です。発表が行われた金曜日は、世界的に通貨や株価などが大きく変動し慌ただしい一日になりました。どうやら日銀総裁は各国の中央銀行仲間の集まるダボス会議に出席し強く影響を受けてきたようで、ユーロ、スイス、デンマーク、スウェーデンに続き、日本もとうとうマイナス金利国の仲間入りを果たしました。ところで、マイナス金利ってどういうことでしょう?!日本の定期預金の利率がたったの0.1%?!って嘆いた時もあったかもしれませんが、それが、プラス0.1%どころかマイナスになるってこと?!このマイナス金利の政策は、一般の人々にとってどんな影響があるのでしょうか?

マイナス金利の影響とは?

実は今回の政策変更では、影響があるのは、金融機関だけです。金融機関による日銀への新規の当座預金のみマイナス0.1%の金利になるだけなので、今のところ、通常の預金者には実質的な影響はほぼないと思われます。理想的には、銀行などが日銀に資金を預けておくより、ローンなど投資に回すことにより経済活性の効果が期待されます。

今回のマイナス金利の発表は、日銀が世界をあっといわせるほどのインパクトがありました。国債や社債、株式ETFやJ-REITなど日本の金融資産を日銀自身が買いまくるだけでなく、金利においても制約なく、インフレ率を2%までアップさせるという目標のためには、なんでもやるというその姿勢を強烈に印象づけることになったかもしれません。

ちなみにこちらのグラフは、近年の金融緩和政策を経た日銀の日本における資産の増加の具合を示しています。

BOJ-asset
(St Louis Fed)

日銀のそんな強固な姿勢と、今までの日銀による金融政策の実体経済への影響の成果から考えると、近い将来予想されることは、このマイナス金利がさらにマイナスにふれていくこと、そして、最終的には、マイナス金利に耐え切れなくなった金融機関が、マイナス金利分を通常の預金者に転嫁しはじめる可能性があるということです。

このような金融政策は、現在のトレンドを反転させ、円安や、株高に誘導するなどその時点での金融資産の価値や投機的な活動に影響を与えることはできますが、みんなの行動の総和である実体経済にどのくらい有効な影響を与えることができるか、というとなかなか難しいことかもしれません。

日本だけではありませんが、世界的に膨らみ続ける借金や、先進国での人口減、時代が大きく変わりつつある中、昔の時代背景に合わせて決められた制度がそのまま残っている国の制度や大きな組織の制度の疲弊、それらを温存しようとする前向きでない政策など、懸念が山積みの世の中です。そういったものが邪魔をして、全体としては大きな右肩上がりの成長性のストーリーを描くことができないのが現状だと思います。

北風と太陽の話にもありますが、日銀がマネーの流通量を高め、資産の価値を上げようと、強力な風を吹かせているのが今の現状です。強い風が吹けば吹くほど、国民は、日本の経済や政府、金融機関への不信感から、タンス預金や、他の通貨への資産逃避(キャピタルフライト)などが加速しかねません。そうすると、日本の経済はネガティブな方向へとさらに進んでいってしまう可能性すらあるのです。そんな力技だけでなんとかしようとするのではなく、もっと明るい未来が見えるような、日本は大丈夫だって信じることができるような太陽のような役割を果たす政策が必要なのかもしれませんね。例えば、人口問題への取り組みや、組織や制度の無駄を省く効率化への投資を促進するなど、根本的にある問題の解決につながる可能性のある前向きな政策が同時に必要になると思います。

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ところで、経済学は数学を多用し、疑問の余地のない科学のように振る舞ってはいますが、正解をひとつだけ導きだせるような学問ではありません。経済学のもともとの目的は、限られた資源をどんなルールの下、どのように分配するとより多くの人にベネフィットを与えることができるか、幸福な社会を築けるかという問題を解決するためのもので、数字というよりは、もともとは哲学や社会思想の学問です。
例えば、こちらのビデオでは、現在の主流、マネタリスト派のおおもと、ケインジアン派のケインズ(John Maynard Keynes)と、オーストリア派のハイエク(F. A. Hayek)がコメディー的なラップバトルを通じて、その主張を対比させていますが、全然違った考え方をしていたりします。

“Top down”と”Bottom up”、”Steered Market”と”Free Market”などと対比されていますが、常にどちらが正しいという正解はなく、その時代背景、状況によって、より多くの人にとってベネフィットがあるように、流派や方法論を変え、時代に則した経済学と政策が求められているのかもしれませんね。ちなみにあまり知られていないオーストリア派の考え方に興味がある人はこちらのビデオでよくまとめられています。長期に渡って続き、あまりにも巨大になっている国などの大きな組織から、資本や人材を解放し、より効率的に多くの人にベネフィットが行き渡るような前向きな活動に力を注いでいくことが大切なのかもしれません。

ベーシックインカム制度へ?

そんな今の時代背景の中、社会保障制度の管理やコスト、インセンティブという実用的な問題を解決するために、フィンランドは、実験的ベーシックインカムを試してみることを決めたそうです。
ベーシックインカムとは、自由・資本主義の制度は維持した上で、複雑になり過ぎて将来どうなるかわからない様々な社会保障制度を廃止してしまい、その代わりに今生活に必要と思われる適正な現金を全ての国民に給付するという制度です。
スイスでも、社会保障を廃止し、無条件で全ての国民に一定額(1人毎月25万円相当?!)を支払うベーシックインカム制度についての国民投票が行われるというニュースも出ています。
ロボットやAIなどテクノロジーの進化により、次第にこれまでのように人間の労働力が必要とされなくなる中、GDPなど経済指標の意味や将来の労働とはどうなっていくのか、というような問題に直面していくと思います。

こちらのビデオでまとめられていますが、前述の日銀総裁も出席していたダボス会議でも、まさにこのロボットが進化していく未来の社会の有り方が、ホットトピックとなっていたようです。労働と収入を切り離して考えるというパネリストの発言に対する、司会者の困惑した反応が印象的です。

スタートアップの投資を専門とする少し異色なベンチャーキャピタル、Y Combinatorでは、今、そんなベーシックインカムのリサーチャーを募集しているそうです。ベーシックインカムを取り入れたら、人間働かなくなるんじゃないか?って思う人もいるかもしれませんが、逆にお金にならないけど、社会のため、人のためになることができるようになるいい環境になるかもしれないという期待があります。ベーシックインカムを取り入れることにより、全体として、よりクリエイティブで活気のある世の中になっていくのか、逆に人々のやる気を削ぎ停滞した世の中になってしまうのかは興味深い所です。なんだか本当に世の中がすごいスピードで変化していってますね。

マイナス金利の影響って?!行き着く先はベーシックインカム?世の中が大きく変わっていく?! was last modified: 9月 6th, 2016 by mikissh