ニューオーリンズというと、街歩き、ケイジャン料理、ジャズなど楽しみが尽きませんが、実は、素晴らしいアートも溢れる街です。先日のニューオーリンズ旅行では、ニューオーリンズの人気アートスポット巡りもしてみましたが、ニューオーリンズならではの素敵なセンスが光るアートから、芸術的なアートまで色々なアートを楽しむことができました。そんなアートいっぱいのニューオーリンズで、おすすめしたいミュージアムのひとつが、ニューオーリンズ美術館 (New Orleans Museum of Art) です。ニューオーリンズ美術館には、印象派の代表的アーティストの一人である、あのドガ (Edgar Degas) が、ニューオーリンズ滞在中に描いた珍しい作品が展示されています。
ニューオーリンズ美術館
ニューオーリンズ美術館 (New Orleans Museum of Art) があるのは、ニューオーリンズの中心部であるフレンチクオーターから北西に車で15分程の距離にある、シティパーク (City Park) です。シティパークは、1854年に誕生した、ニューヨークのセントラルパークの倍程の大きさの巨大な公園で、ニューオーリンズ美術館の他、彫刻庭園 (Sydney and Walda Besthoff Sculpture Garden)、ニューオーリンズ植物園 (New Orleans Botanical Garden)、遊園地 (Carousel Gardens Amusement Park) などの観光スポットもあります。少し中心部から離れていますが、公共バスやストリートカーで手軽に訪れることができるおすすめスポットです。
美術館の中に入った瞬間、目の前に広がる、真っ白で美しい空間に引き込まれてしまいます。
この広々とした美しい建築の、ニューオーリンズ美術館は、1911年に設立された歴史あるミュージアムです。ニューオーリンズにゆかりのあるドガの作品の他、イタリアのルネサンス絵画からアカデミックアート、印象派・ポスト印象派、近代アート、そしてコンテンポラリーアートまで幅広い名作のコレクションを楽しむことができます。
フランス・イギリスの19世紀アート 2階 ドガ
ルイジアナ州は、かつてフランスの植民地だったこともあり、ルイジアナ州の代表的都市であるニューオーリンズは、フランスと関係が深い街です。フランスの有名な印象派アーティスト、ドガの母親は、ニューオーリンズ出身で、ドガは、親戚を尋ねてニューオーリンズへやってきていたこともありました。19世紀アートのギャラリーでは、そんなドガの作品も見どころとなっています。ドガがニューオーリンズの滞在先で描いた親戚の肖像画をはじめ、カイユボット、メアリー・カサットら印象派の作品、そして当時主流だったイギリスやフランスのアカデミックアートの作品が展示されています。
ドガが、ニューオーリンズに滞在したのは、1872年から1873年にかけてで、こちらが、その時に描いた親戚の Estelle Musson Degas の肖像画です。
ドガがニューオーリンズで滞在した母親の実家でもある親戚の家は、フランス系の人々が多く住んでいた歴史ある美しい通り、Esplanade Avenue 沿いにあり、見学することもできます。
こちらは、ニューオーリンズ出身で、19世紀中頃パリで活躍した Léopold Burthe の1852年の作品、Angelique です。トスカーナ地方の詩のワンシーンを描いたアカデミックアートらしい作品です。
メトロポリタン美術館で展示されている Pierre-Auguste Cot のカップルが登場する春と嵐という題名の2作品に似ています。こちらは、Cot の先生でもあった19世紀後半のアカデミックアートが主流だったフランスのトップアーティスト、William-Adolphe Bouguereau の1889年の作品、Whisperings of Love です。
オランダ出身で、19世紀後半のイギリスで活躍したアカデミックアートの著名アーティスト、Sir Lawrence Alma-Tadema の1889年の作品、Shrine of Venus。神話的なモチーフだと思われますが、オリエンタリズム的な雰囲気を感じさせます。詳細にまでこだわった写実的な作風です。
Sir Lawrence Alma-Tadema に強い影響を受けた19世紀後半から20世紀前半にかけてのアカデミックアーティスト、 John William Godward の1892年の作品、Far Away Thoughts。当時主流で、次第に印象派、ポスト印象派に取って代わられていったアカデミックアートの作品がなかなか見応えがありました。
アメリカにも何度も訪れ、数多くの肖像画を描いた有名なイギリス人アーティスト、サージェント (John Singer Sargent) の1898年の肖像画、Portrait of Mrs. Asher B. Wertheimer。
オリエンタリズム (Orientalism)の代表的なアーティスト、Jean-Léon Gérôme の作品も展示されています。さらに、欧米国家がアジアなど世界各地に進出した19世紀に流行したオリエンタリズムをテーマとしたギャラリーもあります。日本の開国により、フランスをはじめ欧米諸国が、着物や浮世絵など日本の文化に、初めて触れたのもこの時代です。着物姿の女性の作品なども飾られています。
20世紀近代アート 2階
近代アートのギャラリーでは、お馴染みのアーティストの作品が並んでいます。こちらは、モディリアーニの1918年の作品。
人物画を得意とするピカソの珍しいロウソクを描いた静物画もありました。1927年の作品です。
ニューヨークの MoMA でもお馴染みの Umberto Boccioni の彫刻。こちらの作品は、金色です。奥に見えるのは、ジャコメッティやピカソの作品。
ニューヨーク派とも言われる抽象表現主義の代表的アーティスト、ポロック (Jackson Pollock) の1948年の作品、Composition。
ミロ、カルダー、サム・フランシス、フランク・ステラ、ウォーホルなど20世紀の著名アーティストの作品も展示されています。
例えば、コラージュなど様々な素材、メディアを組み合わせた作品で有名な Robert Rauschenberg さんの1979年の作品、Melic Meeting などもあります。
現代アート 2階
色々なコンテンポラリーアート作品も展示されています。中でも、存在感があったのが、こちらの黄金のログハウス。
中に入ってみると、幻想的な世界が作り出されています。こちらは、Will Ryman の2013年の作品、アメリカです。迫力があり感動させてくれます。
フランス18世紀アート 2階
2階には、フランス絶対王政時代のギャラリーもあり、ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの肖像画画家だった Élisabeth Louise Vigée Le Brun により、フランス革命直前の1788年頃に描かれた巨大な作品が一際目立っています。マリー・アントワネットは、フランス革命により、1792年に処刑されました。
イタリア ルネサンス期アート 1階
1階正面左手のギャラリーでは、14世紀から17世紀にかけてのイタリアルネサンス期の宗教的なモチーフの作品が展示されています。イタリア人アーティストの作品の数々と共に、ギリシア出身で、スペインで活躍したエル・グレコの作品も一点あります。
フィレンツェで14世紀後半に活躍した Giovanni del Biondo やシエナ派の15世紀前半に活躍した Taddeo di Bartolo ら初期ルネサンスの作品が展示されています。
こちらは、ベネチア派の Bellini, Giovanni、Vincenzo Catena の16世紀前半の作品とされる「ヨハネとパウロと共に描かれた聖母子像」(Madonna and Child with Saint John the Baptist and Saint Peter) です。
シエナ派の Domenico Beccafumi の「ヴィーナスとキューピッド」 (Venus and Cupid)。こちらも16世紀前半の作品です。
17世紀後半、後期バロック時代に活躍した Luca Giordano や18世紀に活躍した Tiepolo らの作品も展示されています。中央は、ジョルダーノの1684年頃描いたキリストの洗礼 (The baptism of Christ) です。
アメリカのインテリアデザイン 2階
2階には、家具やティファニーグラスのランプ、ガラス食器などが展示されている、アメリカのインテリアデザインギャラリーもあります。
写真展 2階
2階では、You Are Here: A Brief History of Photography and Place と題された写真展も開催されています。
世界各地の歴史アート 3階
3階では、世界各地の歴史的な遺品が展示されています。こちらは、アフリカのギャラリーにあった手の込んだデザインの王宮の支柱です。カメルーンの20世紀のものだそうです。
オセアニアのギャラリーは、巨大な木造彫刻が色々あり、見応えがあるコレクションでした。
南、東南アジアのギャラリーでは、ヒンズー教や仏教などの像が綺麗に展示されています。
日本美術のギャラリーもあります。本阿弥光悦と俵谷宗達による繊細な書の作品や鈴木其一の色彩豊かな作品などがありました。他にも一目見て色彩の美しさに惹かれる作品が色々と展示されているギャラリーでした。
特別展ギャラリー 1階
1階奥は、特別展のギャラリーとなっています。現在は、終了しましたが、先日訪れた時に開催されていたのは、ルイジアナ州出身 Keith Sonnier さんの特別展です。ライトと彫刻を組み合わせた個性的な作品がずらりと並んでいました。
ニューオーリンズらしいなと思ったのが、こちらの作品。思わずベニエの粉砂糖が思い浮かんでしまう細かい蛍光塗料粉末が使われた面白い作品です。
1階奥の特別展ギャラリーの手前には、雰囲気のいいカフェやミュージアムショップがあります。
ニューオーリンズ美術館 New Orleans Museum of Art
1 Collins Diboll Cir, New Orleans, LA 70124 地図
休館日:月曜日
開館時間:火-金 10:00-18:00 土 10:00-17:00 日 11:00-17:00
美術館に隣接し、スカルプチャーガーデン もあり、気持ちのいい広々とした園内には、数多くの有名彫刻家の作品が点在しています。合わせて訪れてみるのもおすすめです。スカルプチャーガーデンは、入場無料となっています。
ニューオーリンズの色々な見どころは、こちらでも紹介しています。
先日のニューオーリンズ旅行の様子はこちらです。