ジューイッシュミュージアム ニューヨーク お馴染み著名現代アーティストの作品がずらりと並ぶ豪華特別展 New York: 1962-1964

ニューヨークのジューイッシュミュージアム(Jewish Museum) では、現在、ニューヨークのアートやカルチャーの大きな転換点となった1962年から1964年にかけてのアートとその時代背景という面白いテーマの特別展、New York: 1962 – 1964 が開催されています。当時の新進気鋭のアーティストらにより、1962年から1964年頃にかけて制作された150点以上もの作品が、2フロアに渡り展示され、60年代にタイムスリップしたような体験ができる、見応えのある展示となっています。アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、草間彌生をはじめ、現在、有名美術館で見かける著名コンテンポラリーアーティストの作品が大集合しています。

ジューイッシュミュージアムは、ニューヨークのアッパーイーストサイド、セントラルパークに隣接した五番街の 92ストリート にある美術館です。ジューイッシュミュージアムが入っているのは、Felix M. Warburg House と呼ばれる20世紀初頭に建てられた豪華なボザール様式のお屋敷で、周囲で一際目立つ建物です。

ジューイッシュミュージアムで、先月はじまったばかりの新特別展が、New York: 1962 – 1964 で、1階と2階の2フロアに渡り、展示が行われています。
西洋アートと言えば、ヨーロッパが中心でしたが、第二次世界大戦後、1950年代前後に、ニューヨークを中心に巻き起こった新ムーブメントが、ジャクソン・ポロックらをはじめとした、抽象表現主義(Abstract Expressionism) で、ニューヨークは、世界のアートの中心地として多くの新アーティストを惹きつけるようになりました。1962年から1964年頃は、キューバ危機、キング牧師の演説で知られる公民権運動のワシントン大行進、ケネディ大統領の暗殺などアメリカ史上に残る大事件が起こりましたが、そんな歴史的な背景と共に、抽象表現主義の次を狙う、そんな新アーティストたちによる、ポップアート、ミニマリズムなど多様なアートムーブメントが登場して来ていた時期です。当時のジューイッシュミュージアムのディレクター、Alan Solomon さんは、影響力のある人物で、新時代のアーティストたちをフィーチャーした特別展を行ったりしましたが、今回の特別展では、そんな背景から企画され、1962年から1964年にかけて制作された著名現代アーティストの150点以上もの作品が展示されています。

今回の展示の入口は、通常の入口ではなく、60年代のニューヨークの様子が再現された、特別感のある演出がされていて、ワクワク感が高まります。

ギャラリーに入ると、まず目を引くのが、巨大な目の絵画とその前の巨大な彫刻です。巨大な目の作品は、Harold Stevenson さんの The Eye of Lightning Billy と言う作品です。彫刻は、ニューヨークのパブリックアートやストームキングアートセンターなどでお馴染みの Mark di Suvero さんの作品です。

絵画や彫刻だけでなく、ファッションなど様々なジャンルの作品が飾られています。アンディ・ウォーホルのマリリンモンローの作品と共に、モノキニ(Monokini) などかなり斬新なファッションが展示されていて、当時の雰囲気がうかがえます。

60年代のニューヨークの空気感が伝わって来る写真の数々も展示されています。

ジャンクアートで知られる、Richard Stankiewicz さんの作品。金属のスクラップを繋ぎ合わせただけですが、まるで命を宿ったかのような感じです。抽象アートは、淡い色合いの作品は、Miriam Schapiro さんの Dialogue、ジャマイカ色の作品は、Kenneth Noland さんの Spread です。1階には、この他にも、Lee Bontecou、Marisol、Louise Nevelson ら様々な現代アーティストの面白い作品が展示されています。

2階では、キング牧師の演説などで有名な公民権運動の大規模集会、ワシントン大行進の映像が放映されています。

左は、フェイス・リンゴールドさんの1963年の作品、Civil Right Triangles。右は、南北戦争をモチーフとした、Larry Rivers さんの作品です。ニューミュージアムでは、今春、フェイス・リンゴールドの回顧展が開催されました。

公民権運動が盛り上がった1963年頃には、アフリカ系アメリカ人の苦難を象徴する作品も数多く登場しています。中央下の鉄の手枷、足枷を彷彿とさせる作品群は、Melvin Edwards さんの作品です。Melvin Edwards さんの作品は、今春、シティホール前の公園にパブリックアートとして飾られていました。

展示の合間には、インテリア、雑誌、テレビ、当時の雰囲気を味わいながら、一息つけるスポットが用意されています。こちらは、明るい壁紙が印象的な60年代風のインテリアのキッチンです。1階には、60年代風のリビングルームが再現されているセクションがあり、イームズチェアなどが置かれています。

1960年代初頭のアメリカの顔と言えば、ジョン・F・ケネディ大統領です。1960年に大統領に選出され、1961年に就任します。1962年のキューバ危機などを経て、1964年にテキサス州ダラスで暗殺されてしまいます。

1964年には、そんな社会的な事件をモチーフとした作品が登場しました。こちらは、JFK夫人のジャクリーヌさんを描いた、アンディ・ウォーホルの作品、Jackie Frieze。

こちらは、ウォーホル同様、ポップアートを代表するアーティストの一人、ロイ・リキテンスタインの1963年の作品、Thinking of him。近くに並べられていると、何だか、未来を予想しているようです。

リキテンスタインの作品の周りには、同じく初期のポップアーティストとして活躍した、Majorie Strider さんの Girl With Radish、Rosalyn Drexler さんの自画像など楽しい雰囲気のポップな作品が展示されています。

ギャラリーの中心に飾られ、存在感のあるこちらの作品は、どことなく和が感じられる、イサムノグチの作品。表は、珍しいピンクと赤の暖色系、裏は、白に黄金の曲線の作品、裏と表で、とても雰囲気が異なる1962年の個性的な作品のレプリカです。

ディアビーコン風なミニマリズムアート的な空間が広がっています。ウォーホルのエンパイアステートビルの白黒映像、Judd や Robert Morris の立体感のある作品が並んでいます。

現在、世界で最も著名な現代アーティストの一人となっている、草間彌生さんの作品も展示されています。草間彌生さんは、昨年、ニューヨーク植物園で特別展が開催された他、過去のギャラリーでの展示も大人気となっています。
椅子の上には、絵画に日常の何気ないものを組み合わせる作風で知られる、Jim Dine さんの作品が飾られています。

こちらは、Donald Judd の初期の頃の作品。Judd の回顧展が、数年前にMoMAで開催されていました。

Jasper Johns さんの作品群と一緒に、憂鬱な雰囲気の白い像で知られる、George Segal さんの作品が飾られています。ストーンウォールイン国立記念碑のクリストファーパークのパブリックアートも、George Segal さんの作品です。

当時、ジューイッシュミュージアムのディレクターだった Alan Solomon さんは、アメリカ政府の依頼を受け、1964年のヴェネチアヴィエンナーレのアメリカパビリオンの計画を任され、その時に出展することになったアーティスト達の作品も展示されています。ヴェネチアヴィエンナーレは、1895年から開催されている世界的に著名な現代美術の国際展覧会で、現在も続いているアート界の権威あるイベントです。
中央の独特の金属の塊の作品は、John Chamberlain の Madam Moon。正面のカラフルな作品は、Kenneth Norland の Tropical Zone。左手には、Robert Rauschenberg さんの2作品。右手には、絵画にシャワーという面白い組み合わせの Jim Dine さんの作品、The Four Rooms。この他、Frank Stella、Claes OldenburgJasper Johns、Morris Louise ら8人のアーティストが選ばれました。

1964年のヴェネチアヴィエンナーレで、アメリカ人として、Robert Rauschenberg さんが、初めての金獅子賞を受賞し、ヨーロッパからニューヨークへのアート界のパワーシフトが認識されることになりました。
左は、Third Time Painting、右は、Gilder と題された、Robert Rauschenberg さんの作品です。

先月、2022年7月22日からスタートした、New York: 1962 – 1964 は、来年2023年1月8日まで開催されています。ニューヨーク好き、現代アート好き、歴史好きの人に、おすすめです。

この他、3階では、常設のコレクション展が行われています。定期的に色々な作品が入れ替わっているので、以前訪れたことがある人でも、久しぶりな場合は覗いてみるといいと思います。現在は、入館は時間指定予約制になっています。毎週土曜日は、無料で訪れることができますが、こちらも予約が必須となっています。

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当時のアメリカンアートは、白人男性が中心で、女性、アフリカ、ヒスパニック系アーティストは、ガラス天井のような状態だったと思われますが、そんな中、それぞれ道を切り拓き、活躍しているアーティストも何人も存在します。
Raphael Montanez Ortizel さんも、ちょうど60年代前後から活躍しているヒスパニック系アーティストで、自身が設立した美術館、エルムセオデルバリオで、現在、回顧展が開催されているので、アート好きの人は、一緒に訪れてみるのもいいと思います。

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ニューヨークには、他にもたくさんの素晴らしいミュージアムなどたくさんの見どころがあります。

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ジューイッシュミュージアム ニューヨーク お馴染み著名現代アーティストの作品がずらりと並ぶ豪華特別展 New York: 1962-1964 was last modified: 8月 20th, 2022 by mikissh