ニューヨークがこんなにマスクに本気になるなんて We ♡ New York

We Love New York

ニューヨークでは、アメリカがコロナで非常事態宣言を出すことになった、3月中旬まで、マスクをつけている人をほとんど見かけませんでした。それが今ではみんなが当たり前のようにマスクをするようになっていますが、そうなるまでのスピードの速さには驚かされました。
ニューヨーカーは世界中から人々が集まってきた人種のるつぼの街です。多様な価値観や考え方の人がいて、正直、マスクがここまで急速に定着するとは思っていませんでした。ニューヨーカーたちの変わり身の速さには感動させられましたが、今、ニューヨーク州では、さらにマスクを徹底させるべく、マスク着用を推奨するための新ルールが登場している他、さらに普及させるための様々なPRキャンペーンも行われています。

ニューヨーク州のマスクのルール

ニューヨーク州では、マスク・フェイスカバーに関するオリジナルのルールを制定しています。
スーパーマーケットや交通機関など、ソーシャルディスタンスが確保できない場所でのマスク着用が必須となっています。これから経済活動が再開してくると、さらに多くの様々なお店屋さんがオープンしていく事になりますが、そんなあらゆるお店屋さんも、それぞれのお店屋さんの判断で、マスクを着用していないお客さんの入店を断ることができるという新ルールが新たに制定されることが発表されました。

ニューヨーク州では、今、スーパーマーケットへ行くにも、マスクやフェイスカバーがないとお店に入れなくなっています。スーパーの入り口には、必ず、マスクとソーシャルディスタンスをチェックするスタッフが立っています。

マスクなしではスーパーに入れない!ニューヨークでマスク着用必須に

新ルールの登場と共に、ニューヨーク市内各地では、マスクの無料配布も行われました。経済再開に向けて準備を進めるお店などにも、マスクを無料配布していくことが発表されています。

ニューヨークのマスク 無料配布!今週末からセントラルパークなど市内各地の公園にて

マスクは、結果的には自分も守ることになりますが、アメリカでは、どちらかというと、マスク着用の意義は、周囲の人に感染させないことを大切にしています。そのため、口と鼻をカバーできるフェイスカバーであれば、典型的なマスクである必要はなく、スカーフやハンカチなど布製でも構いません。携帯しておいて、必要な時だけ使用するというのもOKです。パンデミックの真っ只中、恐怖心を持って外出している人も多いので、近くに人がいる場合は、常にマスクをしていると、それだけで周囲の人を精神的に安心させることができる効果もあります。そのため、結構多くの人が外出中は常時マスク着用を実践しています。
今後は、ファッション的にもお洒落でクールなマスクやフェースカバーがどんどん登場してくると思います。

ニューヨーク州のマスク・コロナ対策PR

ニューヨークでは、州知事令のルールだけでなく、PR にも色々と力を注いでいます。州知事のクオモさんの他、クリエイティブな分野で活躍する、Rosie Perez、Chris Rock さんらも会見に登場し、様々な人々にリーチするための努力もしています。背景にあった、♡ がマスクをしている、ニューヨーク州のコロナ対策公衆衛生キャンペーンの I ♡ NY のロゴもクールです。マスク着用の他にも、ソーシャルディスタンシングの推奨と、症状があったり感染者と接触した可能性がある場合、または人と接触することが多い仕事の人は、積極的に検査を受けることを推奨しています。

ニューヨークでは、マスク着用を推進するキャンペーン動画「Wear a Mask」(#WearAMaskNY) を一般公募で募集しました。すると、クリエイターの多い、ニューヨーク。なんと600作品以上もの応募があり、最終選考に残った 5作品で投票を行い、優勝作品が決定しました。

コロナ危機が始まってから、一日も休まず毎日ブリーフィングをしているクオモ知事。コロナ禍のニューヨークで、かなり多くの人が見ている、人気番組のようになっていますが、ここでマスク動画のキャンペーンを告知し、ホームページで投票が行われましたが、なんと18万人以上もの人から投票があり、しかも、ニューヨークだけでなく、世界中から投票があったというその結果もニューヨークらしいものでした。

そして、みんなの投票で選ばれた、人気ナンバーワンの動画は、
「We ❤ NY」by Bunny Lake Films です!

先日、We Love New York のカッコいいストリートアートが街に登場したお話をしましたが、コロナ禍を機に、”I” の代わりに “We” の意識が生まれています。

ニューヨークの最新ウォールアート トリスタンイートンの新作 & We ♡ New York by クイーン・アンドレア

優勝作品、「We ❤ NY」by Bunny Lake Films の動画はこちらです。色々なニューヨーカーが登場する、ニューヨークらしい作品で、動画をみてもらうとわかるけれど、現実にこんな感じで、みんなそれぞれ自分らしいマスクをしています。布マスクや、バンダナだったり、みんなバラバラだけど、それぞれなんだか似合っていて、クールな感じです。

準優勝作品が こちら、「You Can Still Smile」by Natalia Bougadellis でした。1位との票数差はわずか500票ほどだけで、どちらも人気だったようです。2位の映像作品も州の広告として採用されることになりました。

ニューヨークのマスク着用に関する変化

今は、このような州を挙げてのマスクのキャンペーンが行われていますが、わずか二か月前、3月中旬頃はまだマスクをしている人はほとんど見かけませんでした。アメリカが 非常事態宣言 を出した直後でも、みんなマスクなしで外出が当たり前でした。

ニューヨーカーは今どうしてる?非常事態宣言後のニューヨークの週末の街の様子

転換点となったのが、4月初旬の CDC による、マスク着用に関するポリシーの変更で、いよいよニューヨーカーたちもマスクをする人が増えていきます。症状が出ていない感染者からの感染 を防ぐために、マスクが広く受け入れられるようになりました。マスクだけでなく、手袋まで着用している人も結構見かけるようになっています。

アメリカもついにマスク着用推奨!無症状の新型コロナウイルス感染者からの感染リスク

マスクの歴史 スペイン風邪後なぜマスクが消えたの?

世界保健機構 (WHO) では、現在でも、医療関係者以外の一般の人々のマスク着用は、自身が病気である時、または、病気の人を看病する時以外は推奨していません。アメリカのCDC も、4月初旬まで同様の立場で、つい最近まで、ニューヨークでは、医療機関の人以外では、ほとんどマスクをしている人を見かけることはありませんでした。

一方、今から100年程前、1918年にパンデミックとなったスペイン風邪の時には、政府の職員らは、マスク着用が必須であり、そんな当時の写真も残されています。アメリカ西海岸のサンフランシスコやシアトルなどでは、一般市民もマスクが必須だったそうです。

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(National Archive)

気になるのが、その後、マスクが、どんな変遷を辿ったかという点です。
スペイン風邪の時代にマスクが広まったにも関わらず、今回、コロナのパンデミック到来時には、アメリカでは一般の人はほとんどマスクをしておらず、それどころか推奨されていませんでした。

マスクの装着は、今でもそんなに心地のいいものではありませんが、スペイン風邪中も、やはりマスクは、かなり不評だったようで、強制的なマスク着用ルールには、反対の人もかなり多かったようです。そんな背景もあり、流行が収まり、スペイン風邪中のマスクの効果を評価する研究結果や、後に、ウイルスは、とても小さく、マスクで完全にブロックできるわけではないこともわかったことから、それ程、マスクの有効性は認められない、という結論に達し、一般の人々へのマスクは推奨されなくなったようです。

医学・ウイルス学は、確率統計的なもので、研究には時間がかかり、確実な結論を出すことが難しい分野です。そんな科学分野である医学・ウイルス学に加え、社会を一定方向にコントロールする使命を持った、公衆衛生 (Public Health) となると、例えば、一般のマスク不要論には、優先的に医療関係者へ配分する目的もあったり、マスクを着用するだけで実際以上の安心感を与えてしまうの防ぎたい、という目的があったりと、純粋な科学的事実だけでなく、社会政策的な意図も多かれ少なかれ加わっています。

現在のマスクの起源となる、目に見えない病原菌によって病気 (Germ theory of disease) が引き起こされるという事が分かって来たのは、19世紀後半のことです。それ以前も、経験から、触れることなく、病気が感染するということが知られており、匂いからうつる、と思われていた時代もあり、今とはかなり違ったマスクが使用されていたようです。

現在の形に近いマスクが登場したのは、19世紀末頃で、最初は手術時などに医者により使用されていました。一般に普及したのは、1910-1911年に起こった南満州ペストの時で、その後、1918年のスペイン風邪の時も広く使用されました。その後は、医療機関や産業用としてのマスクの使用が中心となっていました。SARS や豚インフルエンザなど、近年起こった危険な感染症は、アジアが多かったこともあり、アジアでは、一般的にマスクの使用が日常になっていますが、欧米では、今回の新型コロナウイルスの到来まで、一般的にはほとんどマスクは使用されていませんでした。
こちらの映像では、そんなマスクの歴史が紹介されています。

マスクは、使い捨てマスクと、再利用できる布マスクとありますが、どちらかというと、使い捨てマスクの方が一般的だと思います。
こちら のレポートで紹介されていますが、現在では、マスクは使い捨てが主流ですが、これは、利便性とマーケティングに拠るところが大きいようです。少なくとも、飛沫量の減少を目的とする一般の人々が利用するものに関しては、再利用のもので十分だと思います。

今まで、あまり気にかけたことがなかった「社会衛生」という分野ですが、今回新型コロナウイルスの対応で見られたように、その時の情勢や新事実に応じて、方針は途中で簡単に方向転換されます。経済など他の社会政策の分野同様、著名機関がそう言っているからというだけでなく、その理由と背景まで、考えを巡らし対応していく必要がありそうです。

ニューヨークがこんなにマスクに本気になるなんて We ♡ New York was last modified: 5月 29th, 2020 by mikissh