オープンハウスニューヨークでは、現在、建設中の建物や、使用されずに廃墟になっているような場所などへのツアーも行われています。そのうちのひとつがニューヨークステートパビリオン (New York State Pavilion)。中へ入るのに、ヘルメットの着用が義務付けられるツアーで、ハードハットツアー (Hard hat tour) と呼ばれていて、そのようなサイトの参加もあり、なかなかおもしろいです。
ニューヨークステートパビリオン (New York State Pavilion)は、クイーンズのフラッシングメドウパーク (Flushing Meadows Park) にあり、普段は閉じられている場所です。とても印象的で不思議な雰囲気を感じる場所だったので、オープンハウスに参加しているということで訪れてみました。1964年から65年にかけてニューヨークシティで行われたワールドフェアの博覧会で、ニューヨーク州のパビリオンだった場所がこのニューヨークステートパビリオン (New York State Pavilion)です。
入り口のところで、ヘルメットをもらい全員かぶって敷地内、”Tent of Tomorrow” へと入っていきます。まるで工事現場の気分。
当時はエレベーターで昇れたという展望台、”Observation Towers” も残されています。
当時のエスカレーターなどが廃れた感じでそのまま残っています。
ニューヨークステートパビリオンは、Men in Black や Iron Man 2 など映画の撮影などでも利用されてきました。ローラースケートリンクだった時代もあったようで、当時の面影を伝える展示がされています。
このニューヨークステートパビリオンのユニークなデザインは、あの有名なモダニズム建築家、フィリップジョンソンさんによるものです。ニューヨークから1時間ほど離れた場所にある360度ガラス張りの家「グラスハウス」の建築家です。
今ではその面影はかなり失われてしまっていますが、当時は天井のガラスがとても美しい画期的な建築だったようです。
“Architecture is the art of how to waste the space.” と言う声が聞こえてきそうですが、こちらもフィリップさんらしい遊び心のあるデザインとなっています。
こちらの映像でその当時の様子を垣間見ることができます。
ニューヨークのワールドフェアが開催される2年前、1962年に行われた、シアトルにもワールドフェア開催の際に建てられた歴史的建築があります。シアトルの景色を一望できる展望台として現在でも人気のスペースニードルです。ニューヨークステートパビリオンも、スペースニードルもどちらも見たとき感じましたが、その当時は本当に宇宙開発が熱かったようで、そんな当時の人々が描く近未来の形が建築にも大きく反映されていてとても面白いと思いました。
ちなみにこちらのグラフはNASAの連邦予算に占める割合の変化を示しています。たしかに、60年代当時、NASAへの予算配分がぐっと盛り上がり、熱気が伝わってきますね。
時代背景としては、1961年の旧ソ連のYuri Gagarinさんによる初の人類による宇宙への有人飛行の達成により、アメリカは、目の色を変えて宇宙開発に取り組み、その後、1969年、人類初の月面着陸を成し遂げることとなりました。
今夏、歴史的に貴重なサイトの保存を推進する NPO、National Trust for Historic Preservationにより、将来のニューヨークステートパビリオンをデザインするコンペティションが行われました。コンペで選ばれたのは、なんだかシンガポール風な印象を受けるデザインでした。現在の流行は自然との調和、融合と言えるかもしれませんね。
このデザインを実現するためには、ファンディングが必要となるので、今実際にプロジェクトが進行していくわけではないようですが、夢がある未来を描くのは楽しいことです。ニューヨークステートパビリオンの廃墟が、みんなが楽しめる形で再利用されていくといいですね。
ニューヨークステートパビリオンのメイン部分の隣には Theaterama という場所があり、パビリオンの景観に合わせ、デザイン、リノベーションされたクイーンズシアターがあります。こちらは実際に使用されているシアターです。
ニューヨークステートパビリオン New York State Pavilion
Corona, NY 11368 MAP
