Noguchi Museum (9)

イサム・ノグチ美術館 ニューヨークでゆったりくつろぎの空間

Noguchi Museum (9)

ニューヨークのクイーンズには、世界的にも有名な日系アメリカ人アーティスト、イサム・ノグチが自ら構想し、作品の配置まで行ったという貴重な美術館、ノグチミュージアム(The Noguchi Museum)があります。元々はイサム・ノグチのアトリエのあった場所なのですが、そこにつくりあげられた独特の癒しの空間は、彼の思いを今でも大切に引き継いでいることが感じられ、ここを訪れただけでもイサム・ノグチという人物に少し触れた気になります。今となっては珍しくありませんが、おそらく当時は極めて稀であったであろう、日本人の父と、アメリカ人の母を持つ環境に生まれたため、色々な体験をしてきたようです。両国の文化、感性を合わせ持ったアーティストが作り出した作品群、その全体の空間と個々の配置は、他では味わうことのできないとても個性的な美術館となっています。
美術館に入ると、そこは外からの光が直接射し込む明るく開放感のある印象的な空間が広がっています。ここは雨の日は雨が入り込み、雪の日は雪の入る込むまさに自然と一体となった作品と言ってもいいかもしれません。

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写真をもとに、イサム・ノグチが昔行った展示会を再現したエリアもあります。

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ここはマーブルの部屋。大理石を使った丸みをおびた優しい色合いの作品がたくさん並んでいます。イサム・ノグチは、一時期、大理石で有名なイタリア、カラーラ周辺にも拠点があったそうです。

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広島の平和記念公園内の原爆死没者慰霊碑のデザインです。この仕事の依頼が来た際に、イサム・ノグチはとてもはりきったそうです。この巨大なアーチが地下にまでつながり、祈りの場所を地下の空間に作るという、イサム・ノグチらしいデザインは一旦は採用されました。ところが、彼がアメリカ人であるということを理由に難色を示す意見がでてきてその案は却下されることになってしまったそうです。ちなみに平和大橋の方には彼のデザインが採用されました。

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日本人の父親とアメリカ人の母親の間に生まれたイサム・ノグチですが、家族関係では父親に認知されず、また戦争があったこともあり、日本からはアメリカ人として認識され日本人としては受け入れてもらえず、逆にアメリカでは、日本人として認識され、アメリカ人として受け入れてもらえず、仕事も断られることもあったようで、疎外感、そして自分のアイデンティティがどこに属すのか、それは、イサム・ノグチをずっと苦しめてきた問題だったようで、彼の作品にも大きな影響を与えています。またアメリカ、日本だけでなく、パリで彫刻家のブランクーシの助手をしたりと、ヨーロッパ、アジアなど世界中を渡り歩いたそうです。日本では、ある時期には、鎌倉の魯山人の敷地内の家で山口淑子(李香蘭)と新婚生活を送っていたとも言われています。移動や転機が多い人生を送っているように思いますが、安定を望まない人だったようです。

それにしても、この慰霊碑、地下にもぐっていって静かにお祈りをすることができるデザインはよく考えられているように思いました。

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作品に刻まれているイサム・ノグチのサインです。全ての作品につけられているわけではないようです。

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ひとつの大きな石から生み出されるイサム・ノグチの晩年の作品は、年月と共に変化していきます。石と自然の共存を大切にしていて、インドアとアウトドアにつながりをもたせ、自然光を取り入れたデザインの空間。イサム・ノグチは石と対話しながら作品を製作したと言われていますが、作品を見る人にも同じように、ひとつひとつの作品から感じとって欲しいという思いを抱いていたようで、作品の横に作品の名前や説明は書かれていません。

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2階にあるこちらの展示スペースも、イサム・ノグチが配置を決めたそうで、天井からは自然光が差し込み、明るい室内になっています。

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家具や照明などのデザインもされていて、そのデザインは現在でも愛され続けています。

イサム・ノグチのフリーフォームソファ (Isam Noguchi Freeform Sofa) という名前のソファで現在でもインテリアショップで販売されいる商品です。

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2歳から13歳までの子供時代を日本で過ごし、その後も日本と関わることの多かったイサム・ノグチの作品は本当に和の要素がふんだんに使われています。

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インテリアデザインのひとつとして AKARI というシリーズの照明も手がけていました。こちらも末永く人気の商品で今でも売れています。

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館内にはモダンな雰囲気のカフェルームもあります。

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本や小物などちょっとしたおみやげも買えるようになっていて、くつろぎスペースになっています。

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ミュージアムには、美しい庭園もあり、のんびりと過ごすことができます。

クイーンズの不思議と癒されるくつろぎの空間ミュージアム イサムノグチ庭園美術館

イサム・ノグチはどんな人生を歩んできたのか、そして、イサム・ノグチ美術館はどんな美術館なのか?がわかるビデオです。

ノグチ美術館への行き方
地下鉄 N線・Q線 ブロードウェイ駅下車 徒歩15分
ノグチ美術館 The Noguchi Museum
9-01 33rd Rd, Queens, NY 11106 MAP

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彼は日本の香川県牟礼町にもスタジオを構えていたそうで、そちらも 美術館 となっているそうです。また札幌には、彼が最後にデザインしたと思われる2005年に完成した モエレ沼公園 があります。

ニューヨークでイサム・ノグチの作品があるのはクイーンズのミュージアムだけではありません。マンハッタンにもおなじみの作品がいくつかあります。
例えば、こちらは1938年から1940年にかけて製作されたロックフェラープラザにあるビル (50 Rockefeller Plaza) の入り口部分にある “News” という作品。

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こちらはロウアーマンハッタン、140 Broadwayにあるレッドキューブ。

Socrates Sculpture Park (4)

イサムノグチ美術館のすぐそばにある、アウトドアのスカルプチャーミュージアム、ソクラテス・スカルプチャー・パーク (Socrates Sculpture Park) にも立ち寄ってみました。こんなユニークなアートがありました。

Socrates Sculpture Park (3)

Socrates Sculpture Park (4)

Socrates Sculpture Park (1)

Socrates Sculpture Park
32-01 Vernon Blvd, Long Island City, NY 11106 MAP

Socrates Sculpture Park (2)

イサム・ノグチの伝記です。

イサム・ノグチ美術館 ニューヨークでゆったりくつろぎの空間 was last modified: 9月 10th, 2017 by mikissh