ニューヨークでは、まだホリデーシーズンの楽しい雰囲気が続いていますが、2021年ももう残すところわずかになってきました。
パンデミック2年目となった今年2021年は、ニューヨークでは昨年の分も取り戻すべく、街中に活気が戻ってきました。昨年のパンデミックのはじまりの頃、ニューヨークでは、ステイホーム令が出るほどの危機的状況で、病院がパンク寸前にまで達し、街はゴーストタウンのような信じられないくらい閑散となりました。
今再び感染力の高い新変異型の登場により感染が広がっていますが、昨年と比べると大きな変化が見られます。ほとんどの人が、既にワクチン接種を済ませているということもあり、パニックになることもなく、それぞれホリデーシーズンを楽しんでいたりと余裕が見られるようになっています。
パンデミック一色となってしまった昨年から復活し、明るいニュースも増えて来た、今年2021年、ニューヨークで印象に残った、最新スポットや、トレンド、イベント、ニュースなどを振り返って紹介したいと思います。
パンデミックの行方は?
ニューヨーク州では、昨年2020年3月以来、ニューヨークシティで感染者や重症者が激増し、パンデミックのはじまりとなり、ずっと非常事態宣言が続いていました。ワクチン接種の進捗により、ようやく今年2021年6月中旬に非常事態宣言が解除されました。
その後、順調に回復し、かなり通常に近い形で生活できるようになって来ていました。
もう、もと通りの生活に完全に戻れそう!そう信じていたところ、ちょうどホリデーシーズンを迎えたタイミングで、また新たな試練がやってきたのです。
感染力が極めて高い新変異型のオミクロンが登場し、再び感染が急拡大しています。
救いは、多くの人が、ワクチン接種をすでに終えていることもあり、重症者はそれ程増えていないことです。
感染者数の急増により、濃厚接触者も含めて隔離でお休みしなければいけないため、公共交通機関やお店など、人員不足で様々なサービスに影響が出てきています。
ただし、昨年とは異なり、全体的にはパニックになることもなく落ち着いている印象です。
100年前のスペイン風邪 のように、パンデミックの最後の局面では、ウイルスの感染力は高まるものの弱毒化し、結果的に、多くの人が感染し、さらに免疫を持つこととなり、最終的には、終息の方向に向かう、という希望的観測を持っていますが、インフルエンザのように季節性の風邪的存在となる可能性も高いと思われます。
ワクチン接種とブースターはもちろん、マスク着用など、感染しないための対策がもうしばらくは続きそうです。
ニューヨークの名物イベント 観客参加で復活!
ニューヨークでは、一年を通じ様々なイベントが行われますが、昨年は、ほぼ全てのイベントがキャンセル、バーチャルでの開催となってしまいました。今年、2021年は、夏頃から正常化し、多くの人気イベントが開催され、観客も参加して楽しめるようになりました。
2年振りに盛大に行われた、メイシーズの独立記念日花火大会です!
ニューヨーク メイシーズ独立記念日花火大会 2021!マンハッタンの夜空を彩る7月4日の人気イベント大盛り上がりで完全復活
ニューヨークの盛大なハロウィンパレードも今年はみんな見に行くことができました。
ニューヨーク ハロウィンパレード 2021 楽しい仮装パレード New York’s Village Halloween Parade LET’S PLAY!!!
ニューヨークの全米一のサンクスギビングパレードも開催され、たくさんの観客が参加しました。
コンサート パフォーミングアート再開
ニューヨークでは、昨年から一年以上、コンサートやトレードショーなどの大規模イベントが行われていなかったのですが、今年は夏頃から色々再開しました。
ブロードウェイミュージカルは、9月頃から再開しています。そんな再開を祝し、定番の ブロードウェイ・イン・ブライアントパーク に加え、タイムズスクエアで盛大な特別コンサートが開催されました。
NYタイムズスクエアでブロードウェイミュージカル特別コンサート!祝NYブロードウェイ再開 Curtain Up: This Is Broadway!
今夏は、NYC 主催で、大規模のコンサートイベントが盛大に開催されました。無料コンサートをはじめ、様々なイベントが行われ、ニューヨークの夏は大賑わいになっていました。私自身もこんなに多くのコンサートを訪れた夏ははじめてでした。
セントラルパークでの We Love NYC コンサート。途中で、雷雨により中止となってしまいましたが、楽しい思い出です。
セントラルパーク豪華コンサートへ行ってきました!ニューヨーク復活 We Love NYC Concert 途中で急遽中止に😢
セントラルパークの夏の恒例音楽イベント、サマーステージには、パンクロックの女王、Patti Smith、モダンゴスペルの Erica Campbell & The Walls Group もやって来ていました。
ブライアントパークでも、夏の間、数多くのコンサートが開催され、ニューヨークフィル や Spanish Harlem Orchestra などのイベントに行って来ました。
Wu-Tang Clan の Raekwon、Ghostface Killah らが登場したスタテンアイランドのヒップホップコンサートも大盛り上がりでした。
ニューヨークで大盛り上がりヒップホップコンサート!スタテンアイランド 伝説のラップグループ Wu-Tang Clan のメンバーら登場
ブルックリンでは、Big Daddy Kane らが登場した ブルックリンヒップホップコンサート、プロスペクトパークの夏のコンサートでは、ニューオーリンズ出身、Trombone Shorty など がやって来ていました。
雑貨・インテリアの New York Now を皮切りに、Javits Center でのトレードショーも再開しています。
2年振りの賑やかなホリデーシーズン
ニューヨークのホリデーシーズンには、2年振りにたくさんの人が訪れ、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーや、デパートのホリデーウィンドウ、ダイカーハイツのクリスマスイルミネーションなどキラキラ輝く街並みを楽しんでいます。ニューヨークのクリスマスデコレーションは、1月1週目頃まで続くので、もう少し楽しめます。
ニューヨークのクリスマスの様子は、こちらで詳しく紹介しています。
パンデミックを経て、新しいイベントも始まりました。ニューヨーク植物園 や ブルックリン植物園 などでは、美しいクリスマスイルミネーションが楽しめる、新たな屋外イベントがはじまり、人気となっています。
花と緑 色鮮やかなアウトドアスペースが流行
パンデミックですっかりお馴染みになったのが、花や緑がいっぱいの様々な趣向を凝らした美しいアウトドアダイニングをはじめとした、カラフルでアートな屋外スペースです。気分が高揚するビビッドでカラフルな色合いが人気となっています。アウトドア人気は、もうしばらく継続しそうなので、来年もまた活躍しそうです。
2021年ニューヨークの最新スポット
2021年にニューヨークに誕生した最新スポットと言えば、ダウンタウンのハドソン川沿いに誕生した公園、リトルアイランドです。
花と緑溢れる景色が美しい公園で、イベントも開催されたりし、いつも人々が集まる憩いの人気スポットとなっています。建築的にも面白い公園です。まだ行かれたことがない人は是非訪れて見て下さい。
リトルアイランド ニューヨークの憩いの最新スポット オープン!ハドソンリバーパークに誕生した絶景の小さな島公園 Little Island
ニューヨーク、ミッドタウンのペンステーションの駅の一部が、今年から美しく大変身を遂げています。Amtrak の利用者は、新ターミナル、モイニハントレインホールが起点となり利用できます。アートの見どころもあり、モダンな美しい駅になりました。
ニューヨークで印象的だったアート展
ニューヨークでは、今年も、様々なアート展が開催されました。
日本出身で、かつてニューヨークで活動していた時代もある、著名女性現代アーティスト、草間彌生さんの特別展も今年大人気のイベントでした。
現在、開催されている、ブルックリン美術館のクリスチャン・ディオール展も素晴らしい特別展です。
クリスチャン・ディオール特別展 NYCブルックリン美術館 見どころ徹底紹介!Christian Dior: Designer of Dreams
ホイットニー美術館では、人気のジャスパージョーンズの特別展が開催されています。
ホイットニー美術館 ジャスパージョーンズ特別展 有名作品アメリカ国旗やターゲットも登場の大回顧展 Jasper Johns: Mind/Mirror
セントラルパークの可愛いフクロウと悲報
パンデミック中に、セントラルパークにやって来て、一躍人気者となったのが、とても可愛いアメリカフクロウ (Barred owl) のバリーでした。セントラルパークには、時々フクロウがやって来ることがありますが、バリーは珍しく特別セントラルパークを気に入り公園を住処として暮らしていました。そんな可愛らしいフクロウ、バリーは、パンデミック中、ニューヨーカーにとって癒しの存在となっていました。セントラルパークでのフクロウの歴代最長滞在記録を更新し、このままずっとセントラルパークに住み続けるのかと思っていた矢先、初夏頃、残念なことに、交通事故で亡くなってしまいました。ちょうどニューヨークのイベントが色々復活し、人々の活動が活発になった頃でした。今シーズンは、セントラルパークにはフクロウはやって来ていません。やはりパンデミックで人が少なかった、静かなセントラルパークは特別だったのかもしれません。
フクロウは、最近見かけませんが、同じく猛禽類のタカは、よく見かけます。ニューヨークでは、パンデミックの影響もあり、ラットがさらに増殖していて、猛禽類にとっていい環境で、天然のネズミ退治を行ってくれています。その一方、毒性の高い殺鼠剤が使用されることもあり、猛禽類への影響が心配されています。検死によると、バリーの体からも殺鼠剤の成分が検出されていました。
NYCセントラルパーク ロッホで美しい鷹に遭遇!びっくりアカオノスリが目の前でネズミをキャッチ Red-tailed Hawk
パンデミック中、ニューヨーカーの間でバードウォッチングがとても流行り、セントラルパークが人気のスポットとなっていました。そこでバリーと出会い、他の鳥たちも見るようになり、すっかりニューヨーク周辺の野鳥に詳しくなってしまいました。ニューヨーク周辺の野鳥の様子は、こちら のプレイリストにまとめてあります。
気候の変化 集中豪雨 温暖化?
今年はよく雷を見ました。
ニューヨークは、今年は、激しい雷雨が多かったり、秋のかなり遅い時期まで暖かかったりと例年とは少し違う気候になりました。
夏には、様々な屋外イベントが開催されますが、セントラルパークの We Love NYC コンサートをはじめ雷雨で中止になることも多かったです。
ニューヨークは、今夏、集中豪雨の記録を2度も更新しました。
リトルアイランドでは、イベントの途中に、雷雨がやって来て、避難することになり、代わりに、神秘的な雷ショーを見学することになりました。
温暖化による影響があるのか、気候の変動を感じさせられた一年でした。
ニューヨークの家賃 急降下からの急上昇
最近、需給の変化の激しさに応じ、あらゆるものの値段の変動が激しくなっている気がしますが、ニューヨークのレントもローラーコースターのように変動した一年でした。非常事態宣言下のニューヨークでは、なんとレントが10年近く前の水準にまで落ち込みましたが、その半年後の11月には、2019年に近い水準、ラグジュアリー系アパートのレントに関しては、2019年レベルを超え、史上最高を更新しました。Douglas Elliman & Miller Samuel のレポートによると、マンハッタンでは、11月は、昨年と比べ、16.7%レントが上昇、ドアマン付きのアパートに至っては、30% 近い上昇となっています。
ニューヨークの犯罪増加
ニューヨークは、ここしばらく年々安全になって来ていましたが、2019年頃から少しづつ殺人など凶悪犯罪が増えています。パンデミックを経て、銃撃事件、精神を病んでいると思われる人による通り魔的な事件も増えています。NYPDの統計データ によると、パンデミックの真っ只中で、人が少なかった昨年と比較し、全体的に犯罪は若干増加傾向にあります。基本的には、銃撃事件など凶悪犯罪は、旅行者が訪れることが少ない離れた場所で起こることが多いので、それ程心配する必要はないと思います。ただ、パンデミックを経て、精神を病んでいる人が増えているのは確かです。駅からプラットフォームにつき落とされるなどの事件も起こっているので、人通りの少ない地下鉄の駅や道など遅い時間帯は、周囲におかしな人がいないか目を光らせておくことが重要です。
観光地があるような繁華街は問題ないので、旅行者がおびえることはないのですが、Airbnb などで離れたなじみのないエリアに滞在したりするときは用心した方がいいと思います。時間帯に応じて、危険そうな場所には近づかないなど安全面での注意をしましょう。
こちらの記事も参考にして下さい。
“Everything Bubble” アセットバブルとインフレ
パンデミックが株式市場にとってプラスになるとは、想像していませんでしたが、アメリカをはじめ各国政府の金融緩和、大規模経済刺激策により、株式市場は絶好調となっています。S&P は、今年、何度史上最高値を更新したか分かりませんが、現在も至上最高値付近を推移し、30% 弱の上昇となっています。金利が、実質上ゼロ、さらに政府から大量の資金が流入したこともあり、あらゆるアセットが、上昇していますが、その代表が株式です。SPAC(特別買収目的会社)など最近人気の新手法を用いて、多くの企業が新たに上場を果たしています。クラシックカーからラグジュアリーブランドの商品、様々な収集品など希少性があり、需給と値段をコントロールしやすいアセットも人気となっています。そんなアセットバブルの中、パンデミックによるスタッフ不足、商品不足などによるコストの上昇もあり、必需品を含む日常の商品も値段が上がり、インフレ基調で、11月のCPI(消費者物価指数)は、6.8% となっています。インフレ率に連動した貯蓄用アメリカ国債、I-Saving Bond の利率は、7.12% と史上最高水準に達しています。
チャイルドクレジットを含む経済刺激策のほとんどが今年いっぱいで取り敢えず終了となり、来年は、利上げも予測されており、どんな状況になっていくのか興味深い所です。
未来は Metaverse? NFT? Web3?
パンデミックでさらに勢いづいているアセットバブルの代表格と言えば、仮想通貨です。
元祖仮想通貨のビットコインは、中央銀行の無尽蔵の金融政策のアンチテーゼとして誕生した背景もありますが、パンデミックにより、さらに勢いが増しました。
まさに世界中の中央銀行による金融緩和が起こり、さらに経済刺激・救済策での不正、詐欺をはじめ犯罪によって得た資金の絶好の行先となっている感があるのが、仮想通貨です。
パンデミックの影響がなく、むしろ好調となっているのが、テクノロジー全般です。
パンデミックにより、バーチャルの大切さを実感した人も多いと思います。テクノロジーの世界で注目を集めているのが、次世代のウェブ、Web3 と呼ばれる、特定の企業やグループに依存せず、ブロックチェーンなど中立的な基本プロトコルをベースに、コミュニティや個人が所有する形で構築される仮装世界、メタバース (Metaverse) です。メタバース関連は、今年、フェースブック (Facebook) が、メタ (Meta) に社名を変更したり、NFT が著名アートオークションハウスで取り扱われたりと大きな注目を集めることになりました。実質的には、特定の企業が所有していますが、メタバースを連想させる仮想空間での不動産の売買が賑わっていたり、次世代の勝ち馬にかけようとベンチャーキャピタルをはじめ投資家からの資金も流入し、すっかり勢いづいている感じです。
イメージ的には、特定の政府や企業から独立した、一定のルールに立脚した中立的な仮想空間上の世界(ゲーム)に、多くの人が集まり、そこで実生活を越える楽しい体験が出来る、または仕事があるといった感じでしょうか。未来のオフィスは、仮想空間内となるかもしれません。みんながVRの装置のようなものを付けて、実世界と離れて、仮想空間に入り浸っている様子を想像するとまさにディストピア的な世界を連想してしまう人も多いと思います。中立的なテクノロジーにより、理想的な思想が実現されるかどうかは別として、仮に、人気ゲームや TikTok のように多くの人がはまってしまい、そこで様々な活動が可能となる仮想空間を作り上げることができたとしたら、巨大な影響力を持つことになるのは、間違いないと思います。メタバースは、例えば、こちら の映像で、分かりやすくピッチされています。
先日、メトロポリタン美術館で、20世紀前半の大きな社会的なムーブメントとなったシュルレアリスムの特別展 を見て来ましたが、仮想通貨、NFT、メタバースなどテクノロジー至上主義かつ無政府的な思想を背景とする一連のムーブメントは、文化的には、21世紀のシュルレアリスムとなり得る存在かもしれません。未来の人々のアート鑑賞は、バーチャル世界の美術館に飾られた、NFT のポケモンを眺めているという可能性もあるかもしれません。
何が生まれてくるかは分かりませんが、現在、注目の流れとなっています。