連日、国会では共和党優勢の大統領の下、オバマケアの代替法案が議論されてきましたが、最終的な結論は廃案、何もしないということになりました。つまり、今まで通り、オバマケアが存続していきます。事情はどうあれ、医療保険制度を、オバマケアからマイナーチェンジした別の保険システムに変更するかしないかという議論が失敗に終わったことにより、保険システム以前の、より本質的なアメリカの医療制度の問題に目が向いていくことを期待したい所です。
トランプ大統領からのツイートです。人々のための医療システムを作るよ、と言うのは簡単なことですが、実現するのは容易なことではありません。ここはあっさりとオバマケアを受け入れ、システムが立ちいかなくなったらまた考えるそうですが、政府をコントロールする大統領ということで、医療制度を改善していくためにできることはたくさんある気がします。。。
ObamaCare will explode and we will all get together and piece together a great healthcare plan for THE PEOPLE. Do not worry!
— President Trump (@POTUS) March 25, 2017
そもそもオバマケアのシステムがどうこういうよりも、アメリカの医療制度自体が効率的に機能していない点に異論がある人はいないと思います。
以前、ニューヨークへ旅行中に予期せず出産することになってしまった人が高額請求されているというニュースでその法外さを紹介したことがありますが、アメリカでは、保険があるからと安心していても、突然どんなことになるかわかりません。例えば、身近な全く緊急性のない医療サービス、年に一度の健康診断で保険でカバーされている病院へ行った所、ドクターの診察料は保険でカバーされたけれど、健康診断に当然含まれるべき血液検査が、同じ病院内で行われたにも関わらず、勝手に別の検査機関に送られ、保険会社のカバーするネットワーク外で検査されてしまい、保険会社に支払いを拒まれ、高額を請求された、などという話を聞いたりすることもあり、アメリカの医療費は普通の人が理解するには、複雑過ぎるシステムになっていることがあります。ひとつひとつ患者の側で確認して進めていかないと、知らないうちに患者のところに後日、驚き価格の請求書が送られてきてしまうことも。保険に入っているのに保険会社に支払いを拒否されるといったような、先進国とは思えない、信じられない事態も起こりうるので、気軽に病院に行く人も少なく、病院へ行ったあとは、保険会社から全額カバーしたよ、というレターを受け取るまでは油断ならない、と思っている人も多い状態です。
これまでの様々な法律、政府の数々の規制や行政指導などで作り上げられた、複雑で分かりにくく、上手く競争が働かないシステムの賜物だと思いますが、アメリカの医療制度の本質的な問題点は、価格や情報が不透明なことと、保険会社をはじめ実際の医療行為に貢献しない中間業者が多すぎることです。
保険会社とプランがあまりに沢山あり過ぎて、何がカバーされているのかが非常に煩雑でわかりにくく、しかもそれらが毎年更新され、さらにそれぞれのエンティティー、保険会社や、病院機関などが年中、合併や撤退を繰り返すというカオスの世界。医療を提供する側もおそらく全部を把握しているわけではなく、医療行為が終わった後、病院側と保険会社側が内容を突き合わせてはじめて実際のかかる費用が判明する、という感じなので、患者側はそこでようやくきちんとカバーされて安心する、または予想外の費用に驚くこととなります。
そんな感じなので、無駄に医療行為を行うインセンティブが働いている風潮もあり、結果的に、医療費用に苦しむ人が出てきたり、あらゆる社会的リソースの浪費につながっています。
例えば、ブルームバーグによるとヘルスケアの効率性についての国際比較はこちらのようになっています。アメリカの健康保険の効率性はなんと50位です。先進国としてなんとも悲しい結果です。
一方、日本は5位！そして、トップは香港、2位はシンガポールとなっています。
ちなみに、それぞれの国の健康指数についての比較、Bloomberg 2017 Healthiest Country Index もあり、それによると、アメリカは34位にランクされていて、やはり医療の効率性と健康指数は関連するようです。
ちなみに日本は健康指数も素晴らしく 世界で第7位にランクされています。こちらでトップに輝いたのはイタリアです。
今回のアメリカのヘルスケア問題のドタバタ劇を通じて、大統領のメンツを立てるための小手先の変更ではなく、アメリカの医療制度の本質的な問題解決や向上につながっていくような、真摯な議論を進めて行こうという気運が盛り上がっていくことが望まれます。法案とは別に、大統領は政府に関する大きな権限を持っているので、地味ではありますが、利用者に満足度の高いサービスを提供する効率の良い、フェアなメディカルサービスが報われるような仕組みづくりを進めて欲しいものです。
