季節毎に様々な特別展が開催されている、ニューヨークの人気現代アート美術館、ニューミュージアムでは、現在、2022年夏の特別展の数々がはじまっています。ニューミュージアムと言えば、アメリカだけでなく、世界各国のコンテンポラリーアーティストもよくフィーチャーされている、インターナショナルな雰囲気の美術館です。新特別展も、人種問題などを風刺的に描いた、20世紀に活躍したアフリカ系アメリカ人アーティスト、Robert Colescottの特別展の他、ブラジル、メキシコ、フランスをはじめ世界各国で活躍するアーティストの個性的な作品の数々も展示されています。
ニューミュージアムは、ニューヨークのロウアーイーストサイド(Lower East Side) にある現代美術館で、世界各国のアーティストがフィーチャーされる期間限定の様々な特別展が開催されています。
年に数回、特別展が入れ替わり、2022年夏の新特別展の数々は、6月末からはじまりました。
ロバート・コレスコット Robert Colescott
2階のギャラリーでは、Art and Race Matters: The Career of Robert Colescott と題された、アフリカ系アメリカ人アーティスト、ロバート・コレスコット (Robert Colescott) の回顧展が開催されています。Robert Colescott さんは、1925年生まれで、20世紀の後半に活躍したアーティストで、作品は、アメリカの様々な著名美術館にも所蔵されています。
風刺画で知られるアーティストで、こちらの作品も、メトロポリタン美術館 所蔵のアメリカの有名な作品「デラウェア川を渡るジョージ・ワシントン」をモチーフとし、登場人物が黒人に入れ替わっている面白い作品です。
ロバート・コレスコット (Robert Colescott) は、1925年に、西部開拓時代に、ニューオーリンズからカリフォルニア州に移住したミュージシャンの両親の下、オークランドで生まれました。1919 と題された、こちらの1980年の作品は、そんな両親を当時の時代背景の中で描いています。
高校卒業後に、すぐに第二次世界大戦中のヨーロッパで従軍し、終戦後、大学に進学し、フランスで、著名近代アーティスト、フェルナン・レジェ (Fernand Léger) の下で学んだ時期があります。例えば、右側のものなどその頃の作品で、フランスアートの影響が感じられる作品もあります。大学院卒業後は、学校の先生を経て、オレゴン州のポートランド州立大学で先生をしていました。
1964年には、エジプトのカイロにあるアメリカン・リサーチ・センターの最初の artist-in-residence として採用され、その頃から、人種問題など黒人が直面している問題を描くようになっています。
エジプト時代に描かれた作品、Nubian Queen などでは、人物が主役ですが、抽象的に描かれています。
アメリカ帰国後に、アート作品や映画などよく知られたモチーフを、白人と黒人を入れ替えたりと風刺的にコミック風に描くスタイルを確立していきます。
1935年の映画作品『小連隊長』(The Little Colonel) は、白人女性の Shirley Temple と黒人男性の Bill Robinson がダンスをする場面があるのですが、この作品は、初めて黒人と白人が映像上でダンスをした作品として知られています。ロバート・コレスコット (Robert Colescott) の作品では、白人男性と黒人女性に入れ替わり描かれています。右側の作品は、Colored TV と題された作品で、テレビには白人女性、部屋には、黒人女性が、くつろぎながら窓の外を眺めていて、こちらも皮肉が込められています。どんな風刺が込められているのかな?と探しながら見て行くと面白いです。
1980年代には、たくさんの人々が登場する迫力ある作品の数々を描いています。
絵画の他、スケッチ作品も展示されています。
多くの人が登場する人物画を得意とするアーティストですが、パーキンソン病を患った晩年には、抽象表現主義的な作品も残しています。こちらは、Sleeping Beauty? と題された2002年の作品です。Robert Colescott さんの特別展は、オハイオ州シンシナティ、ポートランド州オレゴン、イリノイ州シカゴ、フロリダ州サラソタを巡り、ニューヨークのニューミュージアムが最後となります。パンデミックの真最中に開催となってしまった、ポートランド美術館では、オンライン で詳しく紹介してくれています。
Doreen Lynette Garner
1階奥には、赤いライトが不気味にギャラリーを照らす不思議な展示が行われています。こちらは、REVOLTED と題された、フィラデルフィア出身のアフリカ系アメリカ人女性アーティスト、Doreen Lynette Garner の特別展です。グロテスクな不気味な作品が並んでいますが、奴隷貿易が行われ、黒人や先住民が酷い扱いを受けていた、かつての植民地時代をテーマとした展示で、題名は「奴隷船」です。ニューブリタニアで起こった反乱 (Revolted) から名付けられています。中央の作品は、Damien Hirst の真っ二つにされた牛の作品が思い浮かびます。
Bárbara Wagner & Benjamin de Burca
3階では、Five Times Brazil と題された、ブラジル人アーティスト、Bárbara Wagner とドイツ人アーティスト、Benjamin de Burca のコンビによる映像作品が上映されています。
パンデミックの影響もあり、すっかり動画の人気が高まっていますが、こちらの作品では、演技ではないリアルな何気ないブラジルの人々の日常に欠かせないダンスの様子を撮影しています。同じシーンを異なった角度やフォーカスで同時に撮影し、ギャラリーの左右で同時に上映するなど面白い試みをしていました。美術館に展示されている映像は、なかなか理解が難しい作品が多いですが、こちらの作品は、ダンスと音楽と言う世界共通の身近な題材で、たくさんの人が引き込まれて見ていました。
この他にも、リアルなブラジルの人々を題材とした作品がいくつか上映されています。
Kapwani Kiwanga
4階では、Off-Grid と題された、カナダ出身、パリで活動す黒人アーティスト、Kapwani Kiwanga の巨大なインストレーションアートの特別展が行われています。こちらも、奴隷制があった植民地時代の歴史がテーマとなっています。
中央には、もこもこの毛に覆われた、存在感のある巨大な小屋が配置されています。
自然光を取り入れたインストレーションアートにより、光を表現しています。
屋上からは、ニューヨークの絶景も楽しめます。特に、ワールドトレードセンターなどがあるダウンタウン方面の景色がよく見渡せます。
北側は、視界は狭いですが、エンパイアステートビルや、One Vanderbilt、クライスラービルなどが見えます。
ニューミュージアムの前回2022年冬の特別展は、フェイス・リンゴールド (Faith Ringold) の特別展でした。
ニューミュージアム フェイス・リングゴールド特別展開催中!ストーリーキルトで有名なNYCの黒人女性アーティスト Faith Ringgold
ニューミュージアムの基本情報は、こちらをどうぞ。
ニューヨークにはまだまだ色々ミュージアムがあります。