ニューヨークをはじめアメリカ北部では、春真っ盛りの5月を迎えると、普段、あまり目にしない彩り豊かな野鳥を多く見かけるようになります。冬の間は、温暖な中南米やアメリカ南部で過ごしていた渡り鳥たちが、繁殖地である、カナダやアメリカ北部の森を目指して大移動してくるのです。セントラルパークをはじめ木々が多い、ニューヨーク周辺の公園などでよく見かけるようになります。そんな渡り鳥の中でも、特に人気があるのが、とても小さくてすばしっこい鳥、アメリカムシクイ (Warbler) と モズモドキ (Vireo) で、バードウォッチャーたちが夢中で見入っています。美しい鳴き声で、真っ黄色な鳥などカラフルな色合いの鳥が多く、ツグミ (Thrush) のような鳥もいたりと、多種多様な珍しい鳥たちが季節限定で見られます。
ニューヨークのおすすめバードウォッチングシーズン
ニューヨークのバードウォッチャーたちに人気の季節は、春真っ盛りの5月です。冬の間、姿を見せなかった多くの渡り鳥が戻って来て、ニューヨークにたくさんの鳥たちが出現します。ニューヨークの春のこの季節になると、バードウォッチングツアーに参加したり、個人でも双眼鏡やカメラを片手に野鳥探しをしている人を多く見かけるようになります。
アメリカムシクイとは
ニューヨークのバードウォッチャーたちが、春のバードウォッチングで楽しみにしている、探し求めている鳥は、アメリカムシクイという種類の野鳥です。アメリカムシクイは、英語で、ワブラー (Warbler)と呼ばれています。アメリカムシクイの中でも、アメリカ大陸ならではの種、アメリカムシクイ類 (New World warbler) という多種多様な鳥たちが 100種類以上も存在します。
アメリカムシクイは、冬は、中南米で過ごし、春になると、大西洋沿岸のアトランティックフライウェイ (Atlantic Flyway)(空の鳥の高速道路?!)を通って、カナダやアメリカ北部の森に夏の繁殖シーズンのために帰って来ます。アメリカムシクイは、とても小さな鳥なので、そんなに長距離を飛んで移動してくるなんてびっくりしてしまいます。
アメリカムシクイは、その名の通り、主に虫を食べます。ぴょんぴょんと木の枝を動き回りながら虫を探し回っていることが多いので、なかなか探しにくく、バードウォッチングの人たちも写真撮影するのが難しい鳥たちです。ニューヨークでは、5月を中心にピークを迎え、6月になるとだいぶ少なくなります。以下、アメリカムシクイの渡り鳥たちを中心に、ニューヨークで春に見つけた色鮮やかな可愛い鳥たちを紹介します。
キイロアメリカムシクイ Yellow Warbler
100種以上存在する、アメリカムシクイ類の中でも、ニューヨークで最も目にすることが多いのが、全身黄色の美しい鳥、キイロアメリカムシクイ (Yellow Warbler) です。繁殖期は、ニューヨークを含め北米北部の広い範囲に生息しますが、冬は、温暖な中南米やカリブ海の島々で過ごします。多くのアメリカムシクイは、6月には、さらに北を目指し移動してしまいますが、キイロアメリカムシクイは今でも見かけます。
オウゴンアメリカムシクイ Prothonotary Warbler
アメリカムシクイは、黄色い鳥が多いですが、中でもまるでレモンのようなとても美しい黄色をしているのが、オウゴンアメリカムシクイ(Prothonotary Warbler) です。背中の羽は、青みがかったグレイをしています。アメリカムシクイは、高い木の枝をすばしこく動き回るものが多いですが、オウゴンアメリカムシクイは、水辺近くに生息し、比較的ゆっくりしているので、観察しやすいです。繁殖期は、NYC周辺を最北端に、アメリカ東部から南部にかけて、冬は、メキシコ湾岸、カリブ海、中南米などで過ごします。
ハゴロモムシクイ American Redstart
キイロアメリカムシクイ同様、比較的よく見かけるアメリカムシクイが、ハゴロモムシクイ (American Redstart) です。全体的に黒、両脇がオレンジで、羽の一部が赤い黒い鳥のハゴロモガラス (Red-winged Blackbird) と雰囲気が少し似ています。こちらも冬は、中南米やカリブ海で過ごし、夏は、アメリカやカナダで繁殖する鳥です。
シロクロアメリカムシクイ Black-and-white Warbler
シロクロアメリカムシクイ (Black-and-white Warbler) は、白黒の縞々模様をしている鳥です。アメリカムシクイは、緑の葉が生い茂る青々とした木々を好みますが、シロクロアメリカムシクイは、珍しく、ヌサッチ (nuthatches) のように、木の枝や幹に潜んでいる虫を探し回っている鳥です。逆さまになったり、体をストレッチさせたり、よくアクロバティックな恰好をしていて、とても可愛らしい鳥です。
シロオビアメリカムシクイ Magnolia Warbler
シロオビアメリカムシクイ(Magnolia Warbler) は、腹部を中心に全体的に黄色で、黒い縞模様があり、背中は黒と白と灰色、目元周りは黒色の鳥です。冬は、中米やカリブ海で過ごし、夏は、主にカナダやカナダに近いアメリカ最北部で過ごして繁殖します。
ウィルソンアメリカムシクイ Wilson’s Warbler
全身が黄色で、頭に黒い帽子をかぶっているようで、羽が緑がかった茶色の鳥が、ウィルソンアメリカムシクイ (Wilson’s Warbler) です。冬は、中米やカリブ海で過ごし、夏は、カナダで過ごすため、ニューヨークでは、6月には見かけなくなります。
クロズキンアメリカムシクイ Hooded Warbler
クロズキンアメリカムシクイ(Hooded Warbler) も、ウィルソンアメリカムシクイに似ていて、全身が黄色ですが、こちらは、顔全体に黒頭巾を被っている感じの面白い顔をしています。羽は、オリーブグリーン色をしています。冬は、中米やカリブ海で過ごし、夏は、南から北までアメリカ東部の広範囲で過ごします。
ヤシアメリカムシクイ Palm Warbler
ヤシアメリカムシクイ(Palm Warbler) は、茶色やオリーブ色がかった黄色をしています。頭部は、茶色の他、、胴体にも部分部分に茶色の斑点があります。冬は、アメリカ南部沿岸、中米やカリブ海で過ごし、夏は、カナダで過ごします。ニューヨークで見られるのは、春と秋の移動の時期のみです。
ズアカアメリカムシクイ Nashville Warbler
ズアカアメリカムシクイ(Nashville Warbler) は、胴体は、美しい黄色、頭部は、灰色、背中は、緑がかった灰色をしています。冬は、メキシコやカリブ海で過ごし、夏は、NYC以北からカナダにかけての広いエリアで過ごし、NYC周辺で見られるのは、春と秋の移動の時期のみです。
アサギアメリカムシクイ Northern Parula
アサギアメリカムシクイ (Northern Parula) は、青みがかったグレー色をベースに、腹部は白色、喉元は黄色の小さな鳥です。冬は、カリブ海周辺で過ごし、夏は、アメリカ東部の広範囲に現れるようになります。
ノドグロルリアメリカムシクイ Black-throated Blue Warbler
ノドグロルリアメリカムシクイ (Black-throated Blue Warbler) は、頭部から背中にかけてが青、喉が黒いのが特徴のアメリカムシクイです。冬は、カリブ海周辺で過ごし、夏は、アメリカ北東部またはその周辺のカナダで繁殖します。
キヅタアメリカムシクイ Yellow-rumped Warbler
白、黒、グレーをベースに、両脇と尾羽の付け根に黄色い斑点があるのが、キヅタアメリカムシクイ (Yellow-rumped Warbler) です。冬は、アメリカ南部から中米にかけての広い範囲に生息し、夏は、アメリカ北部からカナダにかけての広範囲で繁殖します。ほとんどのアメリカムシクイは、虫だけを食べて、種やベリーなど植物は食べないのですが、キヅタアメリカムシクイは、虫の少ない季節には、植物性の食べ物にスイッチすることができるので、移動せずにアメリカにとどまるものも多い種です。
カマドムシクイ Ovenbird
アメリカムシクイにしては、大きな目をしていて、ツグミのような姿をしている、愛嬌のあるこちらの鳥は、カマドムシクイ (Ovenbird) です。冬は、中米またはカリブ海で過ごし、夏は、カナダやアメリカ北部で繁殖します。
キタミズツグミ Northern Waterthrush
こちらもアメリカムシクイとは思えない、ツグミ (Thrush) のような姿をしている鳥ですが、アメリカムシクイの一種、キタミズツグミ (Northern Waterthrush) です。冬は、中南米やカリブ海で過ごし、夏は、カナダまたはアメリカ最北部で繁殖します。
キタミズツグミに似たアメリカムシクイに、ルイジアナツグミ (Louisiana waterthrush) という鳥もいます、キタミズツグミとルイジアナツグミの違いは、冬と夏の移動先の距離です。ルイジアナツグミは、冬は、中米またはカリブ海で過ごし、夏は、アメリカ中部から東部へ移動します。キタミズツグミの方が南から北まで長い距離を移動します。
フタスヂモヅモドキ Blue-headed Vireo
大きさや食性などアメリカムシクイ (Warbler) ととても似ているのが、全体的に緑がかっていて、くちばしに少し違いがある、モヅモドキ (Vireo) です。アメリカムシクイとは、別種に区分されています。アメリカムシクイは、100種以上ありますが、モヅモドキは、15種ほどと相対的に種類は少ないです。
フタスヂモヅモドキ (Blue-headed Vireo) は、青みがかったグレーの頭と白い腹部、両脇のオリーブ色が特徴の鳥です。冬は、アメリカ南部または中米で過ごし、夏は、カナダやアメリカ北部へ繁殖のため移動します。
アメリカムシクイ (Warbler) と モヅモドキ (Vireo) の種類は、この他にも多数あり、こちら で詳しく紹介されています。
ニューヨークの春には、アメリカムシクイやモヅモドキ以外にも美しい渡り鳥が、色々とやって来ます。
ボルチモアムクドリモドキ Baltimore Oriole
腹部が目の覚めるようなオレンジ、頭部と羽が黒の鳥が、メジャーリーグのチームの名前にもなっている、ボルチモアムクドリモドキ (Baltimore Oriole) のオスです。アメリカムシクイより一回り大きい鳥で、フルーツを好んで食べます。冬は、中米やカリブ海で過ごし、夏は、アメリカ中部から東部にかけての広い範囲に出現し繁殖します。
オウサマタイランチョウ Eastern Kingbird
アメリカムシクイより大型で、空中で虫を捕獲する、タイランチョウ (Flycather) の一種であるこちらの美しい鳥は、オウサマタイランチョウ (Eastern Kingbird) です。池など虫の多い場所で、一ヵ所を拠点にし、行ったり、来たりしながら虫を捕まえています。冬は、中南米で過ごし、夏は、アメリカまたはカナダで過ごします。
先日、オウサマタイランチョウは、緑が豊かなセントラルパークのプール周辺で遊んでいるかのような感じで、虫を捕まえていました。
ヒメレンジャク Cedar Waxwing
ヒメレンジャク (Cedar Waxwing) は、とても美しい渡り鳥です。全体的にグレー色で、目の周辺は黒、背羽の一部に赤、尾羽の一部に黄色と、まるでお化粧をしているような感じの華やかな鳥です。単独で行動する鳥も多いのですが、このヒメレンジャク (Cedar Waxwing) は、集団で行動することが多く社会性の高い鳥です。冬は、アメリカ南部から中米、カリブ海にかけて過ごし、夏は、アメリカ北部やカナダで過ごします。遅めにやって来る渡り鳥で、現在よく見かけます。
ニューヨークでカラフルな鳥と言えば、一年中見られる、赤いショウジョウコウカンチョウ(Northern Cardinal) と青いアオカケス(Blue Jay) がいますが、初春頃からフィンチ類も見かけるようになります。フィンチ類もカラフルなので、遠くから見ていると、アメリカムシクイと見間違えてしまうこともあると思いますが、アメリカムシクイより大型で、主に種やベリーなど植物性のものを食べ、カップルなど集団で行動していることが多い鳥です。
メキシコマシコ House Finch
顔から上半身にかけて赤く、下半身が茶色の鳥が、メキシコマシコ(House Finch) のオスです。メスは、赤みがなく全体的に茶色です。似たフィンチに、少し紫がかったムラサキマシカ(Purple Finch) がいます。もともとは、アメリカ西部の鳥でしたが、現在では、アメリカ全土で見られ、アメリカ北部のメキシコマシコは、冬は、温かい南部で過ごし、春に戻って来ます。
オウゴンヒワ American Goldfinch
前身が黄色で、東部と両羽が黒い、大き目の鳥が、オウゴンヒワ (American Goldfinch) です。オウゴンヒワも、冬は南方に移動し、ニューヨークには、初春頃から姿を見せはじめます。
ニューヨーク周辺でのバードウォッチングの定番と言えば、セントラルパークです!
セントラルパークは、バードウォッチングを楽しんでいる人が多いので、野鳥がどこにいるか、とても見つけやすいと思います。
その他、プロスペクトパーク や グリーンウッドセメタリー、インウッドヒルパーク、ガバナーズアイランド、ランドールズ島、ジャージーシティの リバティステートパーク、ジャマイカベイ野生動物保護区などもおすすめです。
4月下旬から5月末頃にピークを迎えた渡り鳥たちの春の大移動はそろそろ終盤を迎えつつありますが、今度は、9月から10月頃、暖かい南に向かっての大移動の際、再び珍しい可愛い鳥たちに出会えます。メキシコ湾を越え、中米やカリブ海、南米まで飛んでいく、アメリカムシクイをはじめとした北米の渡り鳥に関しては、こちら のドキュメンタリー映像で詳しく紹介されています。
ニューヨークで人気のバードウォッチング、機会があれば楽しんでみてください。