タリアセン ウエスト フランクロイドライト 冬の別邸&建築スタジオ アリゾナ・スコッツデール Taliesin West

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アリゾナ州の州都、フェニックスのお隣、スコッツデールには、フランク・ロイド・ライトが冬の別邸兼建築スタジオとしていた、タリアセン・ウエスト (Taliesin West) があります。タリアセン・ウエストは、フランクロイドライトの世界遺産 建築のひとつです。
フランク・ロイド・ライト建築と言えば、例えば、代表作として知られているニューヨークのグッゲンハイム美術館、ピッツバーグ近郊の落水荘、そして、今年は、フランクロイドライト生誕150週年ということもあり、シカゴ周辺のライトの建築も色々と見てきましたが、ライトと言えば、その場所ならではの自然やカルチャーを取り入れた、オーガニックアーキテクチャー (Organic Architecture) が大きな特徴となっています。

タリアセン・ウエスト (Taliesin West) は、他の地域の建築とは大きく異なり、とても乾燥砂漠地帯で岩山の多いアリゾナらしい雰囲気となっていました。フランクロイドライトらしい低い天井と照明使い、必要最低限の家具だけが置かれた家の様相といい、今まで見てきたライト建築との共通点も多くみられますが、アリゾナらしい、明るい色使いや、美しい水と花の景色が素敵でした。

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タリアセンウエスト (Taliesin West) は、フランク・ロイド・ライトとその弟子たちにより、1937年に建てられ、その後、冬のライトの別邸となり、建築スタジオとなっていました。夏は、ウィスコンシン州のタリアセン (Taliesin) を拠点としていたため、毎年、弟子を引き連れ、車で大移動していたようです。

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フランク・ロイド・ライトの建築サイトは、ツアーに参加し、解説を聞きながら見て回ることが多いですが、ここタリアセン・ウエストもツアー形式による見学で、事前にいくつかのツアーの中から、90分間の Insights Tour を予約し参加しました。実は、ここ、アリゾナは夏は猛暑となるため、他の地域では、ピークシーズンのはずの夏休み中の8月はお休みをしていて、秋・冬・早春にかけてが繁忙期となります。
タリアセン・ウエストのツアーのガイドさんが非常に話し上手でユーモラスな方で、ライトの建築だけでなく、ライトの人生、タリアセンウエストとライトの徒弟制度(apprentice) についてなど、色々と興味深い話を聞くことができました。

ツアーの始まる前に、印象的なオブジェの写真を撮っていたところ、ガイドさんがフレンドリーに話しかけてくれて、フランクロイドライトが忘れていってしまったハンマーの話をしてくれました。言われてみれば、塔の上の方に確かにハンマーの形がくっきりと残っています。

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アリゾナでは、色々な場所で、遥か昔に先住民が描いたペトログリフ (Petroglyph) を見かけましたが、ここでは、そんなペトログリフもオブジェの一部となっています。

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こちらは、ライトが手に入れたという中国のオブジェ。お庭の一部となっていていくつか登場しました。

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晴れている日のアリゾナは秋でも真夏のような日差しです。建物の中へ入り、フランク・ロイド・ライトについてお話を伺います。

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ライトのキャリアの前半は、シカゴのオークパークを拠点に大成功を収めていましたが、実は、その後、スキャンダルからヨーロッパへ逃避行し、帰国後も、悲劇の事件に見舞われたりと、あまり仕事がない状態だったそうです。そんな中、数少ない仕事が、日本での帝国ホテルのデザインでしたが、大幅に予算オーバーし、プロジェクトを途中で離れることとなったそうです。
そんな不遇の時代、さらに大恐慌の中、1932年にフランクロイドライトが、ウィスコンシンの Taliesin でスタートさせたのが教育制度の一つ、Taliesin で、実際に、働きながら学ぶという徒弟制度の Taliesin Fellowship です。

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後に、ライトの自伝 (Frank Lloyd Wright: An Autobiography) によると、徒弟候補者に求めるものとして、こんな素養が挙げられています。

1. An honest ego in a healthy body.
2. An eye to see nature
3. A heart to feel nature
4. Courage to follow nature
5. The sense of proportion (humor)
6. Appreciation of work as idea and idea as work
7. Fertility of imagination
8. Capacity for faith and rebellion
9. Disregard for commonplace (inorganic) elegance
10. Instinctive cooperation

一方、ライトが、徒弟候補者に必ず聞いた質問が、$600 持っていますか?(現在の100万円くらい)だったそうです。教育も事業の一つだったのかもしれません。
ライトは、アリゾナへは何度かやって来ていたようですが、そんなフェローシップの弟子たちと、毎冬、グループでこの場所へやって来て、1937年に完成させたのが、この Taliesin West です。同時期に、名声を高めることとなる 落水荘(Fallingwater) も完成させ、再び上昇気流に乗り、世界的に有名な建築家となり、現在にも強い影響力を残すこととなっています。

ライトらしいとても天井の低いリビングルーム。天井の引く設計の建築をより素敵に見せるためには、まずみんな建物の中へ入ったら席に座らなければいけません。ライト自身も、自分の家を訪ねてきたお客さんを中へ入れたらまず座らせたそうです。

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日本や中国など東洋のデザインも愛したライトの趣味がうかがわれるインテリアです。

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ライトが実際に使用していた書斎です。大きな屏風が飾られていて華やかでした。

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バスルームです。あまりにモダンでびっくりしてしまいました。石造りの建物の中にモダンなシャワールーム。そのギャップもまたいいのかもしれません。

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憩いのプールは完全に日なたでなく、半分日陰になっています。

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左側の建物が設計事務所となっていて、現在も学生たちが設計をしたりしています。ライトの徒弟制度に参加して以来、いまでもここに住んでいる方もいるそうです。

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石造りのお部屋は暑い日でも涼しい空気が保たれています。中は薄暗い感じですが、ライトアップが美しいです。

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和のランプからの影響を感じさせる室内のライトアップ。

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アジアの文化の影響か、こんなゴングが入り口にありました。このゴングを鳴らしてから、ドアを開き中へ入っていきました。

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中に入るとこんな仏像がお出迎えしてくれます。

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アールデコと言うとギリシア神話が思い浮かびますが、インディアンや着物姿の女性と思われる像もありました。

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タリアセン・ウエストは、自分と弟子たちの生活、仕事の場であると共に、クライアントを招待する場所でもありました。本々は、谷を見下ろす感じにしたかったようですが、電線が作られたため、谷が目につくことのないよう山を見上げる形となるようにデザインされたそうです。
こちらの映像は、ライトによるタリアセン・ウエストの解説です。

タリアセン ウエスト(Taliesin West) は、ツアーで見学することができる他、School of Architecture at Taliesin の冬季キャンパスにもなっています。以前まで、The Frank Lloyd Wright School of Architecture という名称で、NPO の Frank Lloyd Wright Foundation の運営する教育機関でしたが、NPOの運営する学校は高等教育機関として認定されないとう法改正のため、キャンパスはこれまで通り共有しながら NPOと学校の運営を独立させたようです。

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フランクロイド・ライトがいた頃からずっと守られているのが、ここの学生たちは、家、食事付きで、広大なキャンパス内に住むことが義務づけられています。今現在でも、こんなワイルドライフを満喫することができるようです。アリゾナの荒野は、色々なことを実験的に試すことができる素晴らしい環境なのではないかと思います。ガイドさんによると、(ワイルドな)住居、食事が含まれていることを考慮すると、学費は、他大学と比べて、かなり安いそうです。
こんな様子だそうです。

フランクロイド・ライトは、1エーカー当たり$3.5と、広大な砂漠の荒野を安く購入し、タリアセンウエストを築きましたが、後にライトの下で、フェローシップをしていた Paolo Soleri さんも、独立後、Acrosanti というこちらも変わった実験的なコミュニティー建築プロジェクトをスタートさせています。

また、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツさんの出資する基金が、アリゾナ州フェニックス周辺の広大な土地を買収し、スマートシティを建設計画しているというニュースも出ています。そんな荒野を利用し、新しいコンセプトを試すのに適した場所と言えます。

タリアセン ウエスト(Taliesin West) のフランクロイド・ライトのギフトショップの品揃えも素晴らしかったです。美しいインテリアグッズや、おしゃれなステーショナリー、建築本などが揃う、割と大きなお土産屋さんでした。

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タリアセン・ウエスト Taliesin West
12621 N Frank Lloyd Wright Blvd, Scottsdale, AZ 85259 MAP

オークパークなどシカゴ周辺には、フランクロイドライトの初期の頃の建築が数多く残っています。

シカゴ フランクロイドライト邸と建築スタジオ 見学ツアーガイド

ニューヨーク州バッファローにも、フランクロイドライトの建築が残されています。

バッファロー ニューヨーク フランクロイドライト建築の数多く残る街 Frank Lloyd Wright’s Darwin Martin House

タリアセン ウエスト フランクロイドライト 冬の別邸&建築スタジオ アリゾナ・スコッツデール Taliesin West was last modified: 10月 31st, 2023 by mikissh