ニューヨーク周辺には、旧ワールドトレードセンターのツインタワー跡の911メモリアルをはじめ、2001年に、ニューヨークで起こり世界を震撼させた911事件のメモリアルが数多くあります。アッパーニューヨークベイ (Upper New York Bay) に面し、スタテンアイランドにも近い、ニュージャージー州ベイヨン (Bayonne) の埠頭には、数あるメモリアルの中でも一風変わった雰囲気の巨大な「ティアドロップメモリアル」(Tear Drop Memorial) と呼ばれるモニュメントがあります。モニュメントの周辺からは、トリック写真のような自由の女神とエンパイアステートビルが隣り合わせの写真が撮影できたりと普段あまり見たことがないようなニューヨークの絶景が楽しめるスポットです。
ニュージャージー州ベイヨン (Bayonne)
ティアドロップメモリアル (Tear Drop Memorial) がある、ニュージャージー州ベイヨン (Bayonne) は、アッパーニューヨーク湾 (Upper New York Bay) に面した昔ながらの雰囲気のファミリータウンの小さな町です。北側にはジャージーシティ、南側にはスタテンアイランドが隣接しています。街の中心は、今回訪れた景色のいいアッパーニューヨークベイの埠頭からは一時間も離れた西側にあり、モニュメントは、埠頭にあります。ティアドロップメモリアルのモニュメントへ向かう道は、長閑な海沿いの道で、道の向こうには、まるで避暑地に来たような広いゴルフ場が見えます。
ティアドロップメモリアルへの行き方
ティアドロップメモリアル (Tear Drop Memorial) のある埠頭には、クルーズ船のターミナル、Cape Liberty Cruise Port があります。意外と巨大な埠頭で、埠頭の手前から先端まで結構距離があり遠いのですが、バスなどの公共交通機関は全然ありません。
ティアドロップメモリアル (Tear Drop Memorial) への行き方は、車がおすすめです。サイクリングでいくか、または、エクササイズやトレイルのつもりで歩いて行く場合は、最寄りのライトレイルの駅、34th Street (PDF) から徒歩50分程かかります。
ベイヨンの埠頭
ベイヨン (Bayonne) の埠頭は、かつて、Military Ocean Terminal at Bayonne として軍用地でした。第二次世界大戦中の1942年から、ブルックリンネイビーヤードを補助する形で、海軍の新拠点となり、主に船の修復などが行われていました。その後、1967年から1999年にかけては、陸軍の基地になっていました。現在でも、北側に、コーストガードの立入禁止エリアや、ポートオーソリティなどがあり、警備されている政府系の組織の存在感が大きい埠頭です。
最近では、内陸側に新アパートがどんどん建設されるようになり、道の途中に、美しく紅葉した木々の下で、カモたちが行進している和やかな光景も見られます。

埠頭には、クルーズのターミナルがあったり、コンテナ船が停泊していたり、なかなか見かけることのない船の修理場、Bayonne Dry-Dock まであります。埠頭の先端、メモリアルの近くには、ロイヤルカリビアンの出港地となっている Cape Liberty Cruise Port があります。
ティアドロップメモリアル
クルーズターミナルを越え、埠頭の先端まで行くと、ティアドロップメモリアルがあります。メモリアルの手前には、広い駐車場もあります。
アメリカ国旗の向こうには、お待ちかねのニューヨークの景色、ロウアーマンハッタンの摩天楼が見えてきました。
そして、とても巨大な迫力のモニュメントがこちら、壁の裂け目から涙が滴になって落ちて来そうなアート、ティアドロップメモリアル (Tear Drop Memorial) です。2001年の911事件及び1993年のワールドトレードセンター爆破の両テロ事件のメモリアルとして、2005年に完成したもので、正式名称は、To the Struggle Against World Terrorism と題された、巨大な彫刻作品で知られるロシアの著名アーティスト、Zurab Tsereteli さんによる作品です。
モニュメントは、太陽に照らされると銅でできている壁の部分が黄金色に美しく輝きます。
ぱっと見、パブリックアートのようにも見えますが、モニュメントの下には、911事件の犠牲者の名前が刻まれ、ベイヨン住人の犠牲者を悼む石碑があり、ワールドトレードセンターでのテロ事件のメモリアルとなっています。
メモリアルの敷地内には、旧ワールドトレードセンターのツインタワーの鉄骨の一部も飾られています。
周囲の銅の塔が約30m、中央の裂け目にある、ニッケルでコーティングされた涙部分が約12mのとても巨大な作品です。なかなかのコストがかかったものではないかと思われます。

実は、このティアドロップメモリアルのモニュメントは、あまり見かけない雰囲気のアートですが、ロシアから寄贈されたもので、そんな由来が説明された石碑もあります。作者の Zurab Tsereteli さんは、1997年からロシアの高等アート教育機関、Russian Academy of Arts の長を務める人物で、2005年の完成式典には、今でも現役を続けるプーチン大統領も出席したという、おそらくPR的な側面もある国家友好プロジェクトだったようです。米露間の政治的な関係もあり、メディアなどでは、あまり評判は芳しくありませんが、あまり見かけない雰囲気の作品で、迫力があり、とても存在感のあるメモリアルであることは間違いありません。
絶景ニューヨーク写真スポット
メモリアルの周辺は、アッパーニューヨーク湾に付き出した埠頭の先端という事で、ローカルたちに人気の釣りスポットにもなっています。ちょっと遠目ですが、ニューヨークの素晴らしい絶景も楽しめます。
望遠が必要ですが、遠近法で、自由の女神とエンパイアステートビルが隣同士のこんな写真も撮影できます。
ニューヨーク最高峰の ワンワールドトレードセンター と並ぶと、自由の女神とその後ろのエンパイアステートビルがこんなに小さく見えてしまいます。夜景も美しそうなので、ライトアップされる時間帯に訪れてみるのもいいと思います。
ベイヨン埠頭沿いウォーターフロント散策
ウォーターフロント沿いには、歩道もあるので、車を止めて散歩してみるのも気持ちがいいです。
お向かいには、ゴルフ場のベイヨンゴルフクラブがあり、その象徴となっているのが、巨大なアメリカ国旗が掲げられた美しい灯台のような形状のクラブハウスです。ここだけ見ていると、どこか遠くの自然豊かなリゾート地の近くにやって来た雰囲気がします。元インダストリアルエリアに造られたゴルフ場なので、公共のものかなと中を覗いてみたくなってしまいますが、プライベートで、なんと入会金 $75,000(約780万円)、年会費 $18,500(約190万円) の高級ゴルフ場です。ちなみに、リバティステートパークの近くにある、リバティナショナルゴルフクラブは、入会金 $450,000(約4700万円)、年会費 $25,000(約260万円) と世界でも有数の高級会員制ゴルフクラブです。さすがニューヨーク、マンハッタンから近いゴルフ場です。絶好の立地が占有されているのは、残念ですが、ゴルフ場のウォーターフロント側は、歩けるようになっていて、フォートリーからベイヨンにかけて、一般が利用できる散策コース、Hudson River Waterfront Walkway(地図) があります。
クラブハウスは、スタテンアイランドフェリーに乗った時にも見えるので、灯台かな?と思った人もいるかもしれません。
夕焼け時の埠頭の南側の遊歩道からは、水辺のゴルフ場の向こうに沈みゆく美しい太陽が見えます。
この日は、飛行機雲がいくつも出来ていて、幻想的な夕日が見えました。近くには、ニューアーク国際空港がある他、ニューヨークハーバー周辺には、大小様々な飛行機が飛び交っています。
埠頭横の運河は、ベイヨンの街の中心付近まで続き、周辺には、ライトレイルの駅の他、ショッピングモールやコストコなどもあります。天気がいい日のちょっとしたドライブやエクササイズにおすすめのあまり知られていない絶景スポットです。
合わせて、同じくハドソン川の西側、ジャージーシティにあるリバティステートパークを訪れてみるのもおすすめです。
911メモリアルの本家といえば、旧ワールドトレードセンターのツインタワー跡に築かれたたこちらです。