アメリカの中央銀行である連銀、Federal Reserve Bank は、3月に発表されていた、社債購入プログラムをいよいよスタートしました。新型コロナウイルスにより大打撃を受けている、アメリカ経済の企業救済・金融政策の一つとして、連銀フェドが、750億ドルの資金を拠出し、レバレッジ10倍の条件で、投資会社のブラックロックによる運用が開始され、社債 ETF の購入がはじまりました。
金融危機といえば、2007年から2008年にかけて起こった世界金融危機がありましたが、こういう危機の時の金融政策で柱とされているのが、「公定歩合の変更」と「金融市場への介入・量的緩和 (QE)」です。
現在、コロナ危機で、経済にも大きな打撃を与えていますが、世界各国で、様々な経済対策と合わせて、金融政策も取られています。アメリカも大打撃をうけており、アメリカ史上最大といわれる、大きな経済対策が行われています。
金融危機の時の金融政策の柱は「公定歩合の変更」と「金融市場への介入 (QE)」ですが、今回は、既にゼロ金利、または、その付近でもともと低金利であったため、金利の変更が及ぶ範囲が限定的で効果が期待できないため、二つ目の「金融市場への介入」が中心の政策となっています。
「金融市場への介入」は、金融市場に一度介入をはじめるとそこから脱出するのがなかなか困難になります。前回の金融危機から10年以上が経ちますが、例えば、よく知られているように、日本銀行は、莫大な日本株 ETF を購入していたり、EU の中央銀行である ECB や、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は、自国企業の社債を購入しています。こちらの記事にあるように、スイス国立銀行に至っては、国立ヘッジファンドの様相で、自国だけでなく、アメリカをはじめ、他国の株式市場を買い支えてくれています。
そんな中、ここ数年間、比較的、金融市場の介入を自制していたアメリカですが、今回は、国債やモーゲージ債の他、750億ドルの拠出で、レバレッジ10倍の 7500億ドル規模の、連銀としてはとても稀な社債の購入プログラムがスタートします。金融政策の一方、大企業の経済支援策の一つでもあります。Fed の発表 によると、投資適格を中心に、ジャンク債も含めた幅広い社債市場をサポートするため、ETF の購入をスタートし、今後、プライマリーマーケットでも、直接、特定企業の社債も購入していくようです。
ファンド運用開始後、難しいのがその解消の時期ですが、運用を、安定期 (stabilization)、モニター期 (ongoing monitoring)、解消期 (reduction in support) に分け、ファンドのエグジットを見据えた設定となっています。
アメリカの中央銀行で、金融政策の中心となっているのが、連邦銀行 (Federal Reserve) です。フェドについては、こちらで紹介しています。
アメリカでは、金融危機時の緊急金融政策は、長く続きましたが、2016年12月にゼロ金利を脱し、2017年10月から金融資産を減少させてきました。
しかし、今回の新型コロナウイルス危機で、3月12日には、再びゼロ金利となり、下図の金融資産のグラフにあるように、量的緩和が急激に進められています。ちなみに、日銀の金融資産は、フェドの次で、常に増え続けており、日本のETF市場の大部分を握り、日本の株式市場の5-6%程を占めているとされています。
EU の中央銀行である ECB も大規模な社債購入プログラムを発表していますが、
Extraordinary times require extraordinary action. There are no limits to our commitment to the euro. We are determined to use the full potential of our tools, within our mandate. https://t.co/RhxuVYPeVR
— Christine Lagarde (@Lagarde) March 18, 2020
ドイツの憲法裁判所では、違憲との判決が出ており、ヨーロッパ内では、緩和派と規律派の対立も目立って来ています。
Press release: ECB takes note of German Federal Constitutional Court ruling and remains fully committed to its mandate https://t.co/n5vi0Wg911
— European Central Bank (@ecb) May 5, 2020
このまま行くと、世界中で、毎月一定額が全国民に支給される、ベーシックインカムや、マイナス金利の世界がやって来るかもしれません。
中央銀行による量的緩和策が続くと、金(ゴールド)やビットコインと言った代替アセットにも注目が集まりますが、様々な人の思惑の渦巻く市場で、最終的に、何が相対的に信じられるか?というのは難しい問題だと思います。
ニューヨークには、金融の歴史が紹介されている金融博物館があります。意外と知られていないミュージアムですが、ニューヨークの金融の中心地、ウォール街にあります。