ロサンゼルスにとてもスケールの大きい、J・ポール・ゲッティ・ミュージアム (J. Paul Getty Museum) という絶景美術館があります。ロサンゼルスのサンタモニカ山脈 (Santa Monica Mountains) の丘の一つがまるまるミュージアムになった、広大な敷地にいくつものテーマのミュージアムの建物がある、とても見応えがある美術館となっています。古典ヨーロッパアートを中心に様々な時代やタイプのアートが展示されている美術館ですが、それだけではなく美しい庭園と、屋外に点在する様々な彫刻作品、ロサンゼルスの景観など色々な楽しみ方ができるゲッティセンターはロサンゼルスのおすすめ美術館です。
ザ・ゲッティ (The Getty) は、J. Paul Getty さんによりロサンゼルスに設立されたアート教育機関で、以前紹介したイタリアのヴィラ風建物のゲッティヴィラ (The Getty Villa) とモダン建築のミュージアム、ゲッティセンター (The Getty Center) の二つの異なった雰囲気の美術館で構成されています。ゲッティセンターは、ゲッティヴィラより利便性の高いロケーションに、より多くの人がコレクションを鑑賞できるようにと、1997年にオープンした美術館です。ゲッティヴィラは、古代ギリシアやローマの彫刻作品が中心となっているのに対し、ゲッティミュージアムは、宗教アートの中世ヨーロッパからポスト印象派までの作品、ラテンアメリカをテーマとした展示などが中心となっています。共通しているのは、どちらの美術館も素晴らしい建物と庭園で構成され、美術を鑑賞するという楽しみ以外に、美しい庭園と景色が楽しめる素敵な環境でのんびりとくつろぎの時間を過ごすことができることです。どちらの美術館も無料で、ゲッティヴィラ (The Getty Villa) は、事前予約が必須ですが、ゲッティセンター (The Getty Center) の方は、予約は必要ありません。
ゲッティミュージアムは、ロサンゼルスのダウンタウンから車で30分程、ゲッティヴィラから20分程の場所の、ロサンゼルスの北側バーバンクへと続くI-405沿いにあります。
通常、美術館と言うと一つの大きな建物に入っていることが多いですが、ゲッティミュージアム (The Getty Museum) は、全体では、10近い建物から構成されています。主なギャラリーは、東西南北の名前がついた5つのパビリオンと特別展用の Exhibition Pavilion で、その他、リサーチセンターなど他の建物でも特別展が行われていたりします。一通り見て回るには半日程度、ゆっくり見ていると丸一日過ごせるミュージアムです。
ミュージアムのある丘の麓の駐車場に車を止め、トラムで丘の上へと向かいます。まるでディズニーランドにでも来たようなワクワク感すら感じられる始まりです。
ゲッティ美術館の入場料やトラムの利用は完全に無料ですが、駐車場代だけ $25 かかります。(3PM 以降は $15)月曜日と火曜日は、それぞれのミュージアムの休館日になるため、同日に両方を訪れることができないのですが、それ以外の日はゲッティミュージアムとゲッティヴィラを両方訪れる場合は、どちか一カ所で支払いをし、係員からクーポンをもらうともう一方は無料となります。詳細は こちら です。
トラムから降りるとそこは丘の上で、周囲に素晴らしい景色が広がっています。
そして、正面に現れる建物は、ゲッティセンターのエントランスホールです。
ジャコメッティの作品が出迎えてくれます。
エントランスホールからさらに奥に進むとギャラリーのパビリオンが立ち並び、彫刻作品も点在するギャラリーエリアとなります。ヨーロッパが中心となっていますが、世界の様々な地域の絵画、彫刻、写真など膨大なコレクションを誇り、その中から代表的な作品が展示されています。
West Pavilion
最も馴染みのある作品が集まっているのが西館で、セザンヌ、ゴッホ、モネ、マネ、ドガら印象派と、ポスト印象派の様々な作品が展示されています。
こちらは静物画で有名なセザンヌ。
ゴッホの Irises。
モネの『積みわら』シリーズ。
モネの海辺の日の出を描いた作品、Sunrise。
モネの The Portal of Rouen Cathedral in Morning Light
クールベの写実的な見事な花の作品、Bouquet of Flowers in a Vase。
1881年のマネの Jeanne (Spring)。
こちらはちょっと珍しい作品です。バレリーナや馬のモチーフで有名なアーティスト、ドガの自画像。
19世紀前半のイギリスのアーティスト、ターナーの作品もあります。ターナーらしい荒海の船をモチーフとした作品。
こちらもターナー。ローマを訪れ、描かれた作品です。例えば、こちらは、2010年にオークションで取得した作品だそうで、ゲッティセンターは、現在でも活発にコレクションを増やしています。
ゲッティミュージアムは、江戸時代の日本を含め、19世紀以降の世界中の様々なエリアの膨大な写真のコレクションも所有しています。アルゼンチンがテーマの写真展です。
美しいペロン大統領夫人、エビータの写真も飾られていました。
South & East Pavilion
南館、東館では、17、18世紀のヨーロッパの様々な国のアートが展示されています。特に、フランス、オランダ、フレミッシュなどの作品が多く見られました。
18世紀のフランスで活躍したフラゴナールの作品などがあります。
プリンセスを描いた19世紀のドイツの作品。
ベネチアのグランドカナル。
微笑みの天使。
天井を見上げると素敵なアートが見られます。17世紀のオランダの音楽隊の登場する楽しい天井画、Musical Group on a Balcony です。
豪華な衣装を身に纏い、まるで生きているかのような存在感のあるスペインの彫刻、Saint Ginés de la Jara。
近代ヨーロッパの美しい様々なスタイルのインテリアも見られます。
1階には、美しい彫刻も数多く並んでいて、どれもこれも美しい作品ばかり。
南館と東館の間には、美しい景色が眺められる開放感のある素敵なテラスがあり、印象的な彫刻が飾られています。ミュージアム自体は、全般的には、古典アートが多いですが、彫刻はわりとコンテンポラリーな作品もあります。美しいシルエットのこちらの作品は、CARDINALE SEDUTO。お隣には、マリノ・マリーニらしい馬をモチーフとした作品もありました。
南館の外の南側に突き出した部分には、サボテンの庭園もあります。丘の上から綺麗な景色をみたりアート以外の楽しみ方もできるのがとてもいいところです。
North Pavilion
北館では、イタリアルネサンスのアートを中心に17世紀以前の中世ヨーロッパアートが展示されています。
ミケランジェロの作品もありました。
ちなみに、ニューヨークのメトロポリタン美術館では、2018年2月12日までミケランジェロの特別展が開催されています。
イタリアルネサンス時代のアーティスト、Dosso Dossi の作品、Allegory of Fortune。
ルネサンス期、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロとほぼ同時代にベネチアで活躍したベリーニの特別展も開催されていました。
ベリーニらしい作品。ベリーニは、ベネチア絵画で同じく有名なティツィアーノ(Titian)の先生だった人です。
こちらでは、ライオンに説教しています。
当時のアートの中心となっていた宗教画や肖像画と一緒に工芸品も展示されています。
生き生きとしたドラマチックな彫刻作品。
イタリア、ルネサンス時代にフランスで製作されたブロンズ像。二つの顔が印象的で、Double Head と呼ばれる作品です。
イタリアルネサンス時代のCorreggio のキリストの肖像画。
マニュスクリプトのコレクションも展示されています。
Exhibition Pavilion
特別展専用の建物では、Golden Kingdoms と題されたアメリカ大陸に起こったインカ、マヤなど様々な文化における金をテーマとした特別展が行われていました。
キラキラピカピカの黄金作品がいっぱいで、なかなか見応えのある展示でした。こちらの展示は、ゲッティミュージアムでは、2018年1月で終了となりましたが、2018年2月28日からニューヨークのメトロポリタン美術館にやって来ます。詳細は、こちらです。
ミュージアムの正面には、印象に残る不思議なカエルを持った少年像があります。
ミュージアムがある場所はロサンゼルスですが、作品を鑑賞しているとすっかりヨーロッパにやって来ているような気分になるくらいヨーロッパの歴史的なアートが充実しています。J. Paul Getty さんがいかにヨーロッパ、世界各地、そして歴史が好きだったかが伝わって来る美術館です。また、スペインの影響が強く感じられるカリフォルニア州らしく、ラテンアメリカ系アートの特別展が開催されていることが多いです。
こちらの映像で紹介されていますが、J. Paul Getty さんは、勢いのある人気のミュージアムを創設し、現在もそれらミュージアムのコレクションをどんどん増やし続けていますが、かつては石油ビジネスで大成功を収め、世界一の大金持ちと言われたこともある人です。
ゲッティセンター The Getty Center
1200 Getty Center Dr, Los Angeles, CA 90049 地図
ロサンゼルスから海岸沿いをマリブ方面に向かった場所にある姉妹美術館のゲッティヴィラもとても素敵なミュージアムです。
ゲッティヴィラ LAの素敵なお屋敷ミュージアム 映画 “All the Money in the world” もうすぐ公開!
ロサンゼルスは楽しいおすすめの見どころがいっぱいです。