ロストレオナルド トライベッカ映画祭プレミア上映会!史上最高額 サルバトールムンディは本当にダヴィンチ作?

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ニューヨークでは、今年6月中旬に、トライベッカ映画祭が開催され、市内各所で、連日、様々な新作映画のプレミア上映会が行われました。マンハッタン最南端の公園、ザ・バッテリー (The Battery) にて、今夏公開予定のドキュメンタリー映画、『ロスト・レオナルド』 (The Lost Leonard) が上映されました。
ロスト・レオナルドは、モナリザなどで知られる、西洋美術の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる、2017年に史上最高額で落札され話題となった名画、サルバトールムンディ (Salvator Mundi) をテーマにしたドキュメンタリー映画です。2005年に、1175ドルで買い付けた絵が、驚くべき軌跡とドラマを経て、なんと500億円以上の価値の作品へと変貌を遂げます。サウジアラビアの王子が所有しているとされている『サルバトールムンディ』 (Salvator Mundi) の作品を通じて、世界のビジネスや政治の裏側が垣間見られる、面白い映画でした。

Leonardo Da Vinci (2)

ザ・バッテリー (The Battery) は、マンハッタンの最南端、自由の女神行きフェリーの発着所がある、ニューヨークハーバーの絶景が見渡せる公園です。以前は、バッテリーパークとして知られていましたが、2015年以来、かつての歴史的な名称である、ザ・バッテリーの名で呼ばれるようになりました。ザ・バッテリーは、ハドソンヤード、ブルックスフィールドプレイス、ピア76などと共に、6月9日から20日にかけて、市内各所で開催された、トライベッカ映画祭の会場の一つとなっていました。

Tribeca Film Festival (4)

トライベッカ映画祭は、パンデミック以降、北米初のインパーソンイベントとなり、6月9日、ニューヨークを舞台としたミュージカルをもとにした新作、イン・ザ・ハイツ のプレミア同時上映でスタートしました。
インパーソンイベントではありますが、まだパンデミック中のため、会場は、グループ毎にソーシャルディスタンスを確保することができるポッド制を採用していて、事前予約が必須です。インパーソンイベントの他、オンラインで作品を見ることもできます。
会場は、30分程前からオープンし、早くやって来た人から順番に好きなポッドに座ることができます。ザ・バッテリーでは、Bowling Green の地下鉄駅近くの公園北東部が会場の入口となっています。

Tribeca Film Festival (3)

この日の映画は、ルネサンス期に活躍した巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされ、世界で注目を集めた作品、サルバトールムンディ (Salvator Mundi) をテーマとした、ロスト・レオナルド (The Lost Leonard) です。アメリカで、Sony Pictures Classics により、今夏、8月13日の公開が予定されている新ドキュメンタリー作品です。

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会場には、売店がある他、ポップコーンが配られ、本当に映画館にいるように楽しめました。

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普通にイベントが開催される平穏な日常が戻って来た感じです。

Popcorn

ロスト・レオナルド (The Lost Leonard) は、ルネサンス期に活躍した西洋美術の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチの失われていた作品が発見されたとして世界中の注目を集め、2017年、ニューヨークのクリスティーズのオークションで、史上最高額となる $450.3 million で落札 され、話題となった絵画作品「サルバトールムンディ」をテーマとしたドキュメンタリー作品です。

ダ・ヴィンチは、世界で最も有名な絵画作品「モナリザ」の作者で、ダヴィンチ作とされている絵画作品は、世界中で 20点前後しかなく、その全てが世界の代表的な美術館所蔵となっています。そんな中、突如、ダヴィンチを真似たものだと思われていた作品が、なんと本物のダヴィンチ作の作品だったということになり、大変遷を遂げたのが、こちらの「サルバトールムンディ」です。

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2005年のオークションハウスのカタログによると、粗雑な修復のせいもあり、当時の評価は、$1200-1800 とされていたようです。実際は、2005年に1175ドルで買い付けられましたが、2017年には、約510億円 ($450.3 million) に大変身を遂げます。コンテンポラリーアートとは違って、通常、古典西洋美術の絵画作品はあまり価格変動がないものですが、驚きの大変貌となりました。

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2005年、宝探しのように、倉庫に眠っていた絵を買い付けてきましたが、その絵をクリーンアップして綺麗にした状態がこちらです。これはもしかして本当に本物のダ・ヴィンチの作品ではないかという可能性を感じはじめるのですが、ここから、史上最も成功することになる修復プロジェクトが行われることとなります。

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ロスト・レオナルドには、2005年に購入したオーナーグループ、修復プロジェクトの中心となった人々、アカデミックや美術館などの専門家グループ、オークションハウスのクリスティーズなどが登場する他、急激な価格上昇を支えることになった、スイス人アートディーラー兼シッピング&ストレージビジネスオーナー、Yves Bouvier と、ロシア人の大富豪ビジネスマン、Dmitry Rybolovlev、そして、サウジ王子の Mohammed bin Salman など様々な人物が登場します。

先日、アメリカでは、ビリオネアたちの過去のタックスリターンがリークされ、ほとんどタックスを払っていないお金持ちたちが世の中にはたくさんいることが明るみにでてしまいました。ProPublica の記事で公表され、どんな節税方法 (要約の映像) をとっているかが明らかになりましたが、その中心となっているのが、プライベートエクイティと同様の手法となる、株式などアセットを担保としたローンでした。実はこの映画でもそんな節税関係のお話もあり、合法的に節税する方法として、不動産や株式だけでなくアート作品を担保としたローンも人気となっているようです。税金のかからない特別区であるフリーポートとなっている Geneva Freeport などと合わせた節税、脱税方法や、マネーロンダリングに関する様々なスキームも存在し、映画では、そんな側面も描かれていました。

サルバトールムンディは、2017年、ニューヨークのクリスティーズのオークションで、$450 million 超で落札されましたが、当初、落札者が誰かは分かりませんでした。以前、サルバトールムンディの記事 で紹介したことがありますが、その後、落札者、現オーナーとして浮上したのが、サウジアラビアの王子、Mohammed bin Salman でした。

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パリのルーヴル美術館 で、2019年秋に開催された、ダヴィンチ没後500周年記念の史上最大のダヴィンチ特別展のことが映画に出てきますが、実は私もそのとき行っていました。今回の映画にまさにその時のシーンがでてきていて懐かしく思いながら見ていましたが、当時、ダヴィンチ特別展に、サルバトールムンディも飾られるのではないか?と期待されていたのですが、結局、特別展には姿を見せませんでした。2017年のオークション以降、一度も一般公開されていません。ところが、映画の中で、当時、特別展の前にあの作品がやはりルーヴル美術館にきていたことがわかりました。来ていたのに、特別展で公開されることはなかったのです。フランス政府、ルーヴル美術館、サウジアラビアの王子で現オーナーの Mohammed bin Salman との間の興味深い駆け引きの一部が映画で描かれています。

ルーヴル美術館 レオナルド・ダ・ヴィンチ特別展の見どころ 史上最大ダヴィンチ有名作品大集結 没後500年目の大回顧展

「サルバトールムンディ」は、最初、たったの 1175ドルで買い付けられた、ビックリするくらい汚れて傷んだ作品でした。2005年から2017年にかけて修復を手掛けた Dianne Modestini さんの功績は非常に大きく、彼女の作品とも言えるかもしれないくらいです。

2011年にダヴィンチの特別展を開催し、サルバトールムンディを展示する企画を立ち上げた ロンドンのナショナルギャラリー は、「サルバトールムンディは、ダヴィンチの作品である」という、その後の専門家たちのコンセンサスを誘導するのに大きな役割を果たすきっかけとなりました。

「サルバトールムンディ」は、本当にダヴィンチの作品なのか?
ダヴィンチ作かもしれないけど、そうでないかもしれない、どちらの可能性も十分にあり、誰もが断言することができない中、筋書き通り上手く事が運んで、大成功を収めることになったサクセスストーリーである一方、ある意味、社会や業界のある種の傾向と脆弱性を明るみにした作品でもあると思います。アクション映画などのようなテンポのいい映画ではなく、淡々と語られるドキュメンタリー映画ですが、ダヴィンチ好きはもちろん、アートや、アートと政治、ビジネスの世界の関係に興味がある人には面白く、ミステリーの世界に引き込まれてしまう作品です。

Tribeca Film Festival (2)

この日は、初の上映会ということで、『ロスト・レオナルド』 (The Lost Leonard) の監督、デンマーク人の Andreas Koefoed さんや、プロデューサー、キャストなども鑑賞にやって来ていました。上映前の挨拶や、終了後の Q&Aセッションもありました。
「サルバトールムンディ」を魔法のように美しく修復した Dianne Modestini さん本人も観客に紛れて鑑賞していて驚きました。

The Lost Leonardo (2)

8月の一般公開を前に、予告編が公開されています。

『ロスト・レオナルド』 (The Lost Leonard) は、ニューヨークも舞台のひとつとなっていた作品でしたが、もうひとつ、ニューヨークを描いた、ワシントンハイツを舞台とした歌と踊りの作品、『イン・ザ・ハイツ』もその世界に引き込まれる楽しい作品です。

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マンハッタン最南端のザ・バッテリーは、ニューヨークハーバーの絶景が見渡せる美しい公園です。

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ロストレオナルド トライベッカ映画祭プレミア上映会!史上最高額 サルバトールムンディは本当にダヴィンチ作? was last modified: 7月 9th, 2021 by mikissh