The Photography Show (9)

ニューヨークフォトグラフィーショー 世界中から写真アートが大集合!

世界有数の写真アートのトレードショー、ニューヨークのフォトグラフィーショー(The Photography Show) が今年もスタートしました。国際写真アートディーラー協会 (The Association of International Photography Art Dealers (AIPAD)) 主催の、今年で第37回目となる歴史あるイベントで、世界中からフォトアートに特化したトップギャラリーが参加しています。早速、その様子を見てきましたが、個性的なフォト作品が数多く集まり、トレンドなどを見ることができる、とても楽しいショーでした。

会場は、今年から世界的なアートショーであるアーモリーショーでお馴染みの会場の一部、ミッドタウンのハドソン川沿いにある Pier94 となっています。アーモリーショーと比べると規模は小さいですが、それでもすごい数のギャラリーと作品数です。今まで世界中の様々なミュージアムを訪れていますが、最も数多くの写真アート作品を見ることができた一日となりました。ユニークなアートの世界を創り上げている作品群が目白押しのとても見応えのあるイベントです。

19世紀のアンティークな作品から、社会的メッセージ性の高いメディア的なもの、デザイン性の高いユニークなアイデアのものなどなど素晴らしい作品がいっぱいありましたが、その中から特に印象に残っている作品を紹介します。

写真展ではありますが、ただ美しいだけの写真というのは実は数が少なく、面白いアイデアを生かした対象づくりとテクニカルな編集などの様々な工夫を凝らした、どちらかというと写真技術を利用したアート作品ともいうべき作品が多く、フォトアートの世界の奥深さに感動すると共に学ぶ所が色々ありました。

ふわふわと風船に持ち上げられる少女。この独特な世界観がおもしろく、特に女性客の注目を集めています。

ファッションフォトはやはり美しい世界です。ファッションの写真を専門にしている Staley-Wise Gallery で見かけた作品です。

ギャラリーだけではなく、いくつか特別展もありました。こちらは、”Structures of Identity” と題された The Walther Collection による作品群です。
デスクでかしこまる紳士。そこへハットがひゅんひゅんと飛び交っていく、そんな不思議なシーンを表現したおもしろい写真です。

同じ種類の写真を綺麗に整列させて展示することで作品となっているものもあり、数ある作品の中でも、人の写真を並べたものが特におもしろい、そう実感させてくれました。

このレトロな写真は特に最高でした。

フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』を連想させる、光の質感を取り入れた写真。

写真はリアル感を表現できるアートであることを最大に表現している写真ともいえるのは、この燃えるウェディングドレス。なんとも臨場感ある作品で、背筋がぞくっとします。

可愛らしいこちらの作品は、思わずインスタグラムにも載せたくなります。

フォトフレームを並べた作品も粋です。

イベント恒例のご挨拶。期間中は、専門家による様々なトークショーも開催されています。

レシートに囲まれた生活。斬新なアイデア作品で思わず釘づけ。

テーマを持って撮影した作品を並べてひとつの作品にする、そんな作品が多く、どれもおもしろかったです。

物語の中のようなメルヘンな世界を表現した作品。

象徴的な場所と人を合成して作られた作品もあります。

こちらは美術館の名画のような雰囲気を漂わせています。

セクシーなマリリンモンロー。フォトグラファーはなんとあのアンディウォーホールです。

意外に思うかもしれませんが、セピアなクラシック写真の人気が高いように感じました。ニューヨークならではの景色を背景に、こんなおしゃれな美しい女性たちのレトロなショットも印象的でした。

かっこよ過ぎて思わず振り返ってしまいます。

白黒写真でもカラー写真でも、美しい女性たちの華やかさが見事に伝わってきます。

どの作品もそれぞれフォトグラファーたちの個性が感じられるものでしたが、特に個人的に印象的だったフォトグラファーは、Lisa Holden さんです。イギリスの出身で、現在アムステルダムで活躍しているアーティストさんです。

写真に息吹が吹き込まれているというか、彼女が創り出したい空気がそこに映し出されている、そんな独特の世界が感じられました。

素晴らしい作品の並ぶ数々のギャラリーの中に、ぽつんと真っ白なギャラリースペースがありました。小さな張り紙を見てみると、こちらにやってくる予定だったイランのギャラリーは、なんとトランプ大統領命による特定の国のアメリカへの入国禁止政策とその後の混乱で、今回の展示会へ来ることができなかったというのです。このような様子を実際に目のあたりにすると、政治の及ぼす影響の大きさをあらためて実感します。こちらで紹介されていますが、このギャラリーのスペースが残されているのも、このような現実を多くの人に知ってもらいたいという意図があるようです。

フォトグラフィーショーには、ギャラリーによる作品展示だけでなく、写真集やアートに関する本の販売コーナーもあります。こちらに神奈川県からやってきたという本屋さんを見かけました。この他、東京からのギャラリーもあり、また海外のギャラリーの中にも日本出身と思われるアーティストの作品を展示しているところや、海外のアーティストによる日本をテーマにした作品もいくつか見かけました。

最近は、優秀なスマホやデジタルカメラの普及により、誰もがフォトグラファーという時代です。綺麗な写真を日常的に撮る人は増えたけれども、人の心に響く作品、となってくるとやはり別世界なのだということをフォトグラフィーショーで感じ取ることができます。その人ならではの独自の世界を築けるか、作品を通して何かを語れるか、というのが、「ただの写真」と「人々を感動させることができる写真」の違いだというのがよくわかります。
フォトグラフィーショーは今週末の日曜日、4月2日まで開催されているので、フォトグラファーや写真好きはもちろん、アート全般に興味がある人は訪れてみると楽しいと思います。

The Photography Show
Pier 94
711 12th Ave, New York, NY 10019 MAP

ニューヨークフォトグラフィーショー 世界中から写真アートが大集合! was last modified: 4月 5th, 2018 by mikissh