メトロポリタン美術館 イギリス テューダー朝の特別展 The Tudors 開催中!エリザベス女王らの豪華肖像画が登場

メトロポリタン美術館では、イギリスならではの文化やアートの起源となった、テューダー朝をテーマとした特別展、ザ・テューダーズ (The Tudors) が開催されています。テューダー朝は、薔薇戦争終了後の15世紀末から17世紀初頭にかけてイギリス王室を担いました。ヘンリー8世時代には、カトリックと対立、イギリス国教会を設立し、首長となるなど色々ありましたが、その後のイギリス独自文化誕生のきっかけともなった時代です。その後、テューダー朝最後のエリザベス女王時代には、当時、ヨーロッパで覇権を握っていたスペインの無敵艦隊に勝利するなどその後、世界の覇権を握った大英帝国設立の礎となりました。
今回のメトロポリタン美術館の特別展では、チューダー朝時代の王室をはじめとした肖像画や、タペストリー、絨毯、鎧、コイン、家具、ステンドグラス、ファッションなど様々な工芸品の幅広いアーティファクトが展示されています。

ニューヨークを代表する巨大ミュージアム、メトロポリタン美術館では、イギリスのテューダー朝をテーマとした特別展、ザ・テューダーズ (The Tudors) が10月からはじまりました。会場となっているのは、2階の特別展用ギャラリー (Gallery 899) で、イギリスのナショナルポートレートギャラリーへやって来たような雰囲気となっており、歴史や古典美術、アンティーク好きの人が多くやって来ています。

チューダー朝といえば、2007年から Showtime で放送されたドラマ、The Tudors や、最近では、ヘンリー8世の6人の妻を主役としたミュージカル、The Six など、今でもよく題材となるイギリス独自の文化が栄えたドラマチックな時代で、後に、世界の覇権を握った大英帝国の礎を築いた時代と言えます。今年は、エリザベス女王(エリザベス2世)が亡くなり、大ニュースとなりましたが、初代エリザベス女王は、チューダー朝の最後の君主で、スペインの無敵艦隊を破るなどイギリスの存在感を高めると共に、航海士たちが世界に進出し、シェイクスピアらによる演劇などイギリスらしい文化も盛んになり、黄金期と呼ばれていました。チューダー朝の5人の君主が登場する今回の特別展の中でも、エリザベス女王を描いた作品が最も多く展示されています。

イギリスでは、フランスとの百年戦争の後、薔薇戦争が起こりましたが、その際、1485年に、当時の王室ヨーク家のリチャード3世を倒し、テューダー朝を開いたのが、ランカスター家の血を引く、ヘンリー7世です。テューダー朝の時代を経て、後の大英帝国へと通じる絶対君主制が確立されていきます。

テューダー朝でその後のイギリスに最も大きな影響を与えた王が、1509年に、ヘンリー7世から王位を継承した、ヘンリー8世です。6度も結婚し、離婚を禁止しているカトリックと対立し、破門されたことから宗教改革を行い、イギリス国教会を設立し、首長となるなど剛腕の王でしたが、一方で、学問や芸術、スポーツを奨励し、イギリスにおけるルネサンスを代表する存在でもあり、ヨーロッパ中から多くのアーティストや文化人が集まり文化的に栄えていきました。

ドイツ出身、北方ルネサンスの代表的アーティストの一人、ハンス・ホルバインは、ヘンリー8世のお抱えアーティストで、肖像画をはじめ多くの作品を制作しています。こちらの全身像も、ハンス・ホルバインの作品で、ヘンリー8世を描いたポートレートを代表する作品です。

こちらもハンス・ホルバインの作品で、エドワード6世の赤ちゃん姿を描いています。

ヘンリー8世崩御後の1547年、王位を継承したのは、唯一存命だった9歳の息子、エドワード6世です。1553年に、若干15歳にして亡くなってしまいます。少し ツタンカーメン の人生を彷彿とさせます。

エドワード6世没後、継承争いが起こりますが、最終的に王位を継いだのは、ヘンリー8世の長女である、メアリー1世です。メアリー1世は、1554年、スペイン王フェリペ2世と結婚しました。敬虔なカトリックだったメアリー1世は、プロテスタントを迫害していたため、ブラッディ・メアリーのニックネームでも知られています。1558年に崩御し、短命の女王となりました。
こちらは、フランダースのアーティスト、Hans Eworth による1554年の作品です。

そして、1558年、テューダー朝最後の君主となったのが、ヘンリー8世の次女のエリザベス1世です。生涯結婚せず、子供もいなかったため、崩御後の1603年からは、スコットランド王のジェームズ1世が、イングランドの王位を継承し、ステュアート朝へと移行します。
こちらは、フランダース出身アーティスト、Quentin Metsys the Younger により、1583年頃に描かれた、”The Sieve Portrait” と呼ばれる肖像画です。

テューダー朝の君主の肖像画の他には、フランダース地方のタペストリーなど当時の様々な工芸品が展示されています。

こちらは “Sea Dog” が描かれた立派なフランス風木製テーブル。

カーテンに隠れている作品もあります。こちらは、ヘンリー8世の狩猟場の近くに建てられた宮殿、Nonsuch Palace が描かれた繊細な水彩画です。

美しい色合いのステンドグラス。フランダース地方で活躍したステンドグラス職人、Dirck Vellert の作品です。

オランダやフランダース地方などで作られたタペストリーやテーブル用カーペットも展示されています。

こちらは、煌びやかなヘンリー7世のコープ。

当時の聖職者や文化人などの彫刻、肖像画なども展示されています。フリックコレクション所蔵のトーマス・モアの肖像画も展示されています。

トーマス・モアの肖像画は、モルガンライブラリーで開催されていた、ハンス・ホルバイン (Hans Holbein the Younger) の特別展にも登場していました。ホルバインは、ドイツ出身の北方ルネサンスの巨匠で、イギリスで活躍し、ヘンリー8世にも重用されたアーティストです。

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テューダー朝の成熟期と言える、エリザベス1世の時代には、数多くの女王のポートレートが描かれました。今回の展示でも様々な豪華なファッションの作品が登場しています。こちらは、黄金のドレスを身にまとっています。1575年頃の作品で、”The Darnley Portrait” と呼ばれています。

こちらは、まるで天使のような出で立ちです。こちらは、1592年頃の Marcus Gheeraerts the Younger の作品で、”The Ditchley Portrait” として知られています。

こちらも、Marcus Gheeraerts the Younger 作、1602年頃に描かれた “The Rainbow Portrait” です。美しいファッションと共に豪華な宝石が印象的です。

Marcus Gheeraerts the Younger は、フランダース地方出身で、幼少期からイギリスに移り、16世紀末に、人気となったアーティストです。こちらも、Marcus Gheeraerts the Younger の作品で、美しいファッションを身にまとった女性が、鹿と一緒に幻想的に描かれています。

こちらも、ドレスに様々な細やかな絵が描かれていて、まるでファッションショーの中の世界のようです。

The Tudors は、イギリスの歴史や古典アート、アンティークに興味がある人に、おすすめの特別展です。
イギリスの歴史や古典美術に興味がある人は、ロンドンを訪れたら、ナショナルポートレートギャラリーに立ち寄ってみるのもおすすめです。

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メトロポリタン美術館は、世界各国のアート、歴史、文化などが展示され、見どころいっぱいのミュージアムです。

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日本ギャラリーでは、江戸から昭和初期にかけての着物の特別展が開催されています。

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メトロポリタン美術館 イギリス テューダー朝の特別展 The Tudors 開催中!エリザベス女王らの豪華肖像画が登場 was last modified: 11月 29th, 2022 by mikissh