世界的に有名なアメリカの天才発明家、トーマス・エジソン (Thomas A. Edison) は、実は、ニューヨークのお隣、ニュージャージー州で活躍していました。エジソンが住んでいた豪邸と働いていた研究施設が、トーマス・エジソン・ナショナル・ヒストリカル・パーク (Thomas Edison National Historical Park) として、ニュージャージー州に残されており、そんなエジソンの家や、エジソンの博物館から、19世紀後半から20世紀前半にかけてのエジソンの活躍を偲ぶことができます。トーマス・エジソンは、日本でも大変有名な偉人ですが、実はエジソンは、昔から日本とも親交があり、このトーマス・エジソン国立歴史公園では、そんなエジソンの日本との関係も垣間見ることができたりし、なかなか面白い発見のある、ニューヨーク周辺で楽しめる日帰り観光スポットとなっています。
トーマスエジソン国立歴史公園 (Thomas Edison National Historical Park) があるのは、ニューヨークから車で西に30分程行った、ニュージャージー州のウエストオレンジ (West Orange) という町です。ニューヨークのペンステーションから NJ Transit の電車を利用して訪れることも出来ます。公園の研究施設 (Laboratory Complex) の道を挟んだところに、駐車場もあるので車で訪れるのも便利です。
まずは、トーマスエジソン国立歴史公園の研究施設にあるビジターセンターに向かいます。国立公園を管理しているナショナルパークサービス (NPS) が管轄するアメリカの国立施設の一つで、入場料は16歳以上で1人$15かかりますが、国立公園パスがあればそのまま入場することができます。
主な見どころは、エジソンの研究施設と、グレンモント (Glenmont) と呼ばれるエジソン邸です。エジソンの家、グレンモントの見学は、週末のみ行われていて、時間指定のチケット制になります。人気のため、できるだけ朝10時のオープン時間を目指して、早目にビジターセンターで、チケットを入手するのがおすすめです。
入場後、ビジターセンターの奥では、エジソンに関するいくつかの映像作品が上映されています。エジソン邸を紹介した映像作品もあります。
エジソンの家 グレンモント
エジソン邸、グレンモントは、ビジターセンターのある研究施設から車で数分、歩いて10分程の少し離れた場所にあります。朝10時にやってきたので、11時からのお屋敷見学ツアーのチケットを入手することができました。入場後はエジソンにまつわる映像を見たりして少し時間をつぶし、エジソンの家へと向かいます。エジソン邸、グレンモントがあるのは、1857年にニューヨークの郊外として誕生したアメリカ初のゲートコミュニティ (Gated Community) である Llewellyn Park というところです。ビジターセンターで渡される入場パスを見せて、通過します。
途中、趣のあるランプがあったりと、自然豊かな閑静な住宅街です。エジソン邸以外にも、とても大きなお屋敷が点在しています。
そんな豪邸の中でも、一際目立っているのが、エジソンが亡くなるまで住んでいたという赤いクイーンアン様式のお屋敷、グレンモントです。
このお屋敷、グレンモントは、先妻に先立たれたエジソンが、1886年に、再婚相手の Mina さんへのギフトとして購入したものだそうです。このお屋敷が建てられたのは、1880から1882年にかけてだそうですが、なんとオーナーは会社の資金を使い込み建設したそうで、それが発覚し、売りに出されていた所に、エジソンが見て気に入り購入することになりました。グレンモントは、調度品のセンスもよく、完璧な内装のお屋敷で、エジソン夫妻は、もともとかかった費用の半額、$125,000 で掘り出し物としてこのお屋敷を入手することができたそうです。グレンモントは、エジソン夫妻が子供を育て、生涯を過ごす家となります。エジソンは、1931年に84歳で、この家の一室で亡くなりました。
見学ツアーは、所要時間30分程で、一回につき、15人程が参加していました。色々なお屋敷を見学していますが、エジソン邸もなかなか素晴らしいお屋敷でした。特に、ステンドグラスや、肖像画、エジソンの功績を讃えて世界中の様々な人から贈られた贈り物などが印象的でした。日本の発明団体から贈られたという歴史ある矢も飾られていました。
お屋敷内は、写真撮影禁止となっていますが、こちらの映像で詳しく紹介されています。
美しい緑が広がる、グレンモントのお屋敷の裏庭の方もお散歩してみました。
この裏庭には、エジソン夫妻のお墓があります。そして、そのお墓を守るように、なんと灯篭が建てられていました。この灯篭も1930年代に日本の発明団体から贈られたものだそうです。
電球の中の光が付く糸状になった部分のフィラメント材質として、竹が大活躍したそうです。耐久性にも優れていて、電球の実用化に貢献したそうです。エジソンの研究施設では、日本人も働いていたり、またエジソンは日本を実際に訪問したこともあったりして色々と日本との関係が深い人物だったようです。
エジソンが使用していたガレージもあり、様々な歴史的な車が展示されています。車のエネルギーは、現在では、すっかりガソリンが優勢となっていますが、当時は、ガソリンと電気が競っていたようで、どちらのタイプの車も置かれていました。車用の電気チャージャーもガレージに置いてありましたが、最近、再びその電気自動車が復活し始めてきたんですね。車用の電気チャージャーは新しく登場してきているものなのかと思っていたら、実はこんな昔からあったと知り驚きました。エジソンはフォード社のヘンリー・フォードと友人で、エジソンに贈られたフォードの車も並んでいました。
エジソン研究施設コンプレックス
トーマス・エジソンは、1847年にオハイオ州で誕生し、学校へはほとんど通うことなく、ホームスクールで育てられました。若い頃は、新聞売りや新聞の発行、電信技手などをしていましたが、次第に発明に傾倒し、最初に取得した特許は、電報技術に関するもので、1869年のことでした。ニュージャージー州を拠点としていたエジソンですが、州内で何度か移動していて、最初は、ニューアークにいて、続いて、メンローパーク、そして、1887年から亡くなる1931年までは、最も長期に渡って研究開発 (R&D) の拠点となっていた、ウエストオレンジに、研究施設を構えていました。
コンプレックスの中で、最も大きな建物が、Building 5 です。3フロアに渡り、エジソンにまつわる遺品と様々な分野の研究室、製造設備、開発された製品などが展示され、見どころいっぱいの建物です。
Building 5 の中で、最も豪華な部屋が入ってすぐにある図書館です。
エジソンの研究所の図書館には、エジソンが使っていた、レトロで趣のある机も置かれています。
エジソンと言えば、最も有名なのが電球の実用化ですが、そんな電球を掲げた印象的な天使像です。
1階は、重機エリア(heavy machine shop) となっていて、金属加工のための重機がずらりと並んでいます。
2階に上がると、化学や写真など様々な分野の研究室があります。
また、より小さな金属の加工を行うエリア (precision machine shop) があります。
建物の中央の通路から見学することができます。
電球に関する展示もあります。電球の実用化初期の頃、電球を長く持たせるために、様々なフィラメントの素材を試してみた結果、エジソンが見出したのが、炭化した竹でした。その後、京都府八幡市から竹を輸入し、耐久性の高い電球を製造することが可能となったそうです。
3階には、音楽室があります。録音装置 (Phonograph) を発明し、現在の音楽産業のもとを築いたのもエジソンでした。
エジソンは、様々な分野で、数多くの会社やプロジェクトを行っていて、そんな中から生まれた数多くの製品が展示されています。
タイプライターも印象的なデザインです。エジソンは、実はただの発明家ではなく、発明以外にも、製品デザインやロゴまでかなりデザイン面での工夫にも凝っていて、驚きました。
エジソンはレントゲン(X線)のプロジェクトも行っていました。残念ながら犠牲者が出てしまい失敗に終わってしまったようです。
こんなものまでエジソンの発明なのかと驚いたのは、このおしゃべり人形です。面白そうなものは、何でもトライしてみる姿勢が伺えます。
Building 5 から外に出て、それ以外のいくつかの建物も見学することができます。Building 2 は、化学の実験室です。バッテリー、そしてエジソンが亡くなる直前は、良質のアメリカ産ゴムを目指した研究に打ち込んでいたそうです。
Building 3 は、化学用品の倉庫と木製部品の製造エリア (pattern shop) でした。
Building 11 は、その時の必要性に応じて様々なプロジェクトで使用される建物でした。以前は、ミシガン州にある ヘンリーフォードミュージアム に移設されていたそうですが、再びこちらに戻って来ています。録音、再生機、レコードなど色々な音楽再生装置が展示されていました。
電球を誇らしげに持っているエジソン像です。像の左奥には、ユニークな形状をしたアメリカで最初の映画スタジオ Black Maria があります。映画産業を生み出したのも、実は、エジソンだったようです。エジソンが特許を取得していたため、使用料を払わなくてすむようにと、多くのスタジオが、アメリカの中でも法律が厳しく適用されない西部の方に移動し、それで誕生したのが現在のハリウッドなのだそうです。
ビジターセンターは、Building 1 と呼ばれ、かつては電気に関する実験設備があった建物でした。お土産屋さんもあり、エジソンの色々なグッズがあります。
電球、バッテリー、録音、動画などたくさんの分野を切り拓き、GE や Con Edison など現在でもエジソンの影響を残した企業がありますが、そんなエジソンのバイオはこちらで紹介されています。
長編ですが、こちらのドキュメンターもよくできています。
トーマスエジソン国立歴史公園の見学は、所要時間は大体半日程度で、ゆっくり見ていると一日過ごせるようになっています。可能であれば、エジソン邸が見学できる週末がおすすめです。国立公園パスを持っていれば、お得に楽しめます。
トーマスエジソン国立歴史公園
Thomas Edison National Historical Park
211 Main St, West Orange, NJ 07052 地図
エディソンが最初に大ヒットさせた発明が、録音機 (Phonograph) です。録音された人間の声が聞こえることは、当時、センセーショナルなことで、当時の研究施設のあったメンローパークから “Wizard of Menlo Park” と呼ばれていました。実用的な電球を開発したのもメンローパークでした。現在、そのメンローパークには、トーマス・エジソン・センター (Thomas Edison Center) があり、見学することができます。
お土産屋さんには、エジソン人形と並んで、テスラの人形も置かれていました。エジソンと言えば、改良、実用、製品化を得意とした発明家であると同時に素晴らしいビジネスマンで世界中に大きな影響を与えた有名人ですが、二コラ・テスラも同時代にニューヨーク周辺で活躍した偉大な発明家です。